借金への圧力2008年02月03日 15時04分33秒

昨年秋以降、テレビなどのマスコミ、インターネットのニュースで、アメリカの「サブプライムローン」(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題という言葉を聞くことが多い。そして、その「サブプライムローン」問題による、世界各国の金融機関の膨大な損失が、毎日のように報道されている。

経済問題というのは、何か複雑で一般の人にはわかりにくい感じがするが、実は、よーく考えてみると、本質は、案外シンプルだったりする。

現在の経済問題の多くは、誰かの金融資産=誰かの借金という構図がわかれば、理解はそれほど難しくはない。別の言葉で言い換えるなら、誰かの金融資産分、誰かが「借金をしなければならない」ということである。

当然、金融資産がある側は、利息を要求し、借金した側は利息を払わねばならない。

世界の金融資産(特に日本と中国の金融資産)=アメリカの借金
日本国民の金融資産=日本国家と地方自治体の借金
金持ちの金融資産=貧乏人の借金

金融資産というのは、誰のものであっても、いい子にして金融機関で眠っているわけではなく、世界中のあらゆるところへ出かけていき、借金してくれる人を探している。誰か借金してくれる人が出ないかぎり、金融資産は利息を稼ぐことができない。つまり、全世界の金融資産分だけ、「借金してくれ(!)=利息をくれ(!)」という膨大な借金圧力が世界中に吹き荒れているのである。

私やあなたが個人的には利息に無関心であっても、自分のお金を金融機関に預けたら最後、そのお金は、借金してくれる人を求めて、言い換えれば、利息を求めて、世界中を旅することになっている。

で、冒頭に書いたアメリカの「サブプライムローン」(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題というのは、
世界の金融資産が、借金させるターゲットにアメリカの低所得者を選んで、高金利の利子で儲けまくった後の問題ということである。

儲かるので、もっともっとと欲を追いすぎたら、アメリカの住宅バブルが崩壊し、ローンを借りた人たちが返済不可能になって、借金が焦げ付いたという話なのである。

もちろん借金には、健全な借金というものもある――普通の金利の住宅ローン、企業が投資のために借りるお金等々――健全かどうかの見極めは、自分(会社)の能力の範囲内の借金ということだが、その能力の見極めは、簡単ではないし、借金圧力が吹き荒れている現代では、簡単に自分の能力以上を借金することができる。そして借金への圧力に負け、能力以上のお金を借りてしまうと、借金地獄→→借金貧乏への道が始まる。

このように、借金には一般に悪いイメージがあるが、でも、逆の見方をすれば、貧乏になるほど借金する人たちのおかげで、資産家の人たちは、潤っている面もあるわけで、本当は、「金持ち父さん」たちは、サブプライムローンで泣いている「貧乏父さん」たちに心から感謝すべきなのである――「たくさん借金してくれて、ありがとう。あなたたちのおかげで、私は資産を増やすことができました」って。

さて、日本では、1990年代以後、たいした経済成長している実感がないまま、なぜか、個人の金融資産は増え続けている。つまり、その反対側で、国家や地方自治体の借金も含めて、借金が増え続けているというわけでもある。GDP(国内総生産)の3倍もの資産と借金、それがどういう意味なのか、考えてみるのは、なかなか興味深いことである。

お勧めの本
「日本を滅ぼす経済学の錯覚」堂免信義著 光文社
投資、貯金、借金の関係を新たな観点で説明し、その視点から、今の日本の経済の状況を読み解いた本。

「マネーを生み出す怪物」G.エドワード・グリフィン著 草思社
アメリカの連邦準備制度が、いかに無からマネーを生み出し、世界経済を支配するようになったのかを、歴史的に検証し、明らかにした本。