今年読んだ本2009年12月09日 07時57分10秒

本年も平和に年末の季節を迎えることができました(祝)。

今年最後のブログは、本年読んだ楽しかった本をご紹介することにします。

1「ガリレオの指」 ピーター・アトキンス(早川書房)

ポピュラー・サイエンス(一般向け科学書)という出版のジャンルがある。科学の専門家ではないけど、科学が好きという一般素人向けの出版ジャンルである。私はろくに科学の知識もないのに、この分野の大ファンで、自分が読む本の約三分の一はこの分野の本である。長年読んでいると、知識はなくても、本のよしあし(質)はなんとなくわかるようになった感じがする。

数多く出版されているポピュラー・サイエンスの本の中でも、本書「ガリレオの指」は、間違いなくポピュラー・サイエンスの最高傑作の1冊であり、アトキンスの友人である、(「利己的遺伝子」で有名な生物学者)リチャード・ドーキンスは、「ノーベル文学賞を科学者に与えるとしたら、アトキンスこそ候補者だ」と本書を絶賛した。

本書で、アトキンスは、現代科学を動かしている10の重大科学理論を説明しながら、ガリレオから始まった近代科学の知の歴史を俯瞰してみせたが、そのアトキンスの語りの優雅なアート(技)は、比類ないものだ。

アトキンスほど博識な学者は他にもいるだろうし、説明が上手な学者も他にもいるだろう。が、博識で、かつ説明が上手で、かつここまで優雅に美しく(だから、ノーベル文学賞に値すると言われるのであろう)語れる(書ける)人は、ほとんどいないかもしれないと思う。科学とは、知が最後の輝きを放つ場であり、アトキンスはその知の頂にぎりぎり立って、純粋な知の喜びを本書によって読者と分かち合おうとしている。(ピーター・アトキンスの本としては、今年の初め、「エントロピーと秩序」の本も紹介した)

2「見て楽しむ量子物理学の世界」ジム・アル・カリーリ著(日経BP社)

訳者によれば、「世界でいちばん美しい量子物理学の本」ということで、本書の一番の売りは、その美しい写真やイラストである。物理学書は、活字だけだとなかなか素人には理解が困難だ。が、美しいイラストや写真があると、なんだかわかった気分になれる(笑)からありがたい。

3「欲望の植物誌」マイケル・ポーラン著 (八坂書房)

植物に対して、清純で無垢なイメージをもっている人たちは多い。が、動物と人間同様、植物もよりよく生き延びるために、他の種を巧妙に利用して、繁栄を勝ち取ってきたのだ。

本書は、私たちによく知られている植物――リンゴ、チューリップ、マリファナ、ジャガイモが、どのように人間をあやつってきたのかを、植物の観点から記述した大変にユニークな本である。植物とかガーデニング、家庭菜園が好きな人が、本書を読んだら、かなり植物を見る目が変わるかもしれない――本書を読んだら、「私がこの種を畑に植える」とは言えなくなるかも……

4「ミレニアム」1から3(各上下巻)スティーグ・ラーソン著(早川書房)

世界的大ベストセラーとなったスウェーデンのミステリーである。女にモテモテの(が、プレーボーイのイメージとは程遠い)社会派ジャーナリストと天才ハッカーにして高機能アスペルガー(自閉症の病気の一つ)らしい風変わりな若い女性の活躍を軸に、スウェーデン社会の暗部を描いたミステリー。

おそらく本書を読んだ世界中の人が意外に思ったことは、他の国々からは経済的に恵まれた理想的福祉国家のように思われているスウェーデンにも、たくさんの問題や犯罪があり、また、ゴリラ(女を虐待する男)もたくさん生息しているということだろう。

本書には、エンターテイメントとしての物語の裏に、そういったスウェーデン社会の中にある女性虐待を糾弾するトーンが一貫として流れている。

とはいえ、全然堅苦しくはないし、面白いので、もし1の上巻で、本書にはまれば、ノンストップで3の下巻まで一気に読み終えることができるだろう。

5「左足をとりもどすまで」オリバー・サックス (晶文社)

世界的に著名な脳神経科医にしてクリニカル・ライター(医学的なテーマに関して書く作家)である著者が、あるとき左足に大怪我を負い、そのせいで左足を心理的に失って、またそれを取り戻すまでの闘病記。

なんといっても面白かったのが、手術の結果、傷は癒えたが、左足を自分のものだと感じられないという場面だ。医者に、「さあ、左足を動かしてください」と言われても、著者は途方にくれるばかりである。それはまるで、著者にしてみると、「さあ、その物を念力で動かしてください」と言われているような感じで、左足を自分の足だとはまったく思えない。どうやってその「物」を動かすのか思案にくれていると、そのとき、ある種の神秘体験というか幻覚のようなこと(自分の中でビックバンが起こる瞬間を見る)が起きて、徐々に「外の物」だった左足に命が通い始める。

このあたりの描写のうまさは、神秘家でも、こう見事に神秘体験を言葉で表現はできないだろうと思うほどだ――というより、彼が神秘家ではなく、作家なので、ここまで巧みに書けるのかもしれない。

6「なぜ投資のプロはサルに負けるのか?」藤沢数希著 (ダイヤモンド社)

本書は、金融の世界で働いている人が、金融ギャンブル(投資や投機)の世界の仕組みを懇切丁寧に解説した本で、非常にわかりやすく、そしてかなり正直に書いてある。著者は、「確実に儲かる投資はない」こと、そして「投資や投機の成功」は、実力ではなく、「運」であることを具体的な例をあげてうまく説明している。「運」であるゆえに、「投資のプロがサルに負ける」ことが、しばしばあるのだそうだ。

7「お金崩壊」青木秀和著 (集英社)

本書は、市民研究者が現在の日本経済を分析した本で、なぜ日本経済が現在のような苦境に陥っているのか、多くの資料を使い、また過去の歴史から例証を挙げ、非常に的確に分析してある。

著者は、「経済成長は問題を何も解決しない。それどころか政府に無分別な成長優先政策を採用させれば、一時的にバブル的好景気があったとしても、結局は大きな災厄が襲来する。経済成長を当てにしても、私たちに未来はないのである」と書いているが、著者のその予言は、本書の出版後半年後に見事に的中している(昨年秋のリーマン・ショック)。

これからも、先進各国が「経済成長神話」を唱え続けるかぎり、災厄はあちこちで起り続けるだろと、私もそう思っている。

8「お金の達人―7つの教え」ジョージ・キンダー著 (徳間書店)

タイトルからだと、「お金の達人が、いかにたくさんお金を稼ぎ、それを上手に投資するかを教える」みたいな本のイメージとなるが、本書はそういう本ではない。本書は、お金にまつわる苦痛が人々の人生でどのように生じるかを分析・理解し、そして、それをどうやって癒し、お金と平和に付き合うかを教えてくれる本である。

著者(アメリカ人にしては、珍しく仏教徒)は、ファイナンシャル・プランナーの仕事として、money maturity(訳せば「お金に関して大人になる」くらい)のワークショップを主催し、本書は、ワークショップの内容を紙上に再現して、お金にまつわる苦しみから、平和への7段階のステップを解説している。

9「超スピリチャルな夢実現 /幸福獲得法」ヴァジム・ゼランド著 (徳間書店)

以前にもご紹介した「振り子の法則トランサーフィン」の第3冊目である。このシリーズの一番面白いところは、「振り子」の概念である。それを理解できたら、このシリーズを読んだ価値があるだろうと思う。

さて、さて、「振り子=エネルギー情報体」とは一体本当のところ何なのか? 単純に言ってしまえば、「振り子」とは、「観念をめぐる思考や感情の集合」もいうべきもので、その元は、あらゆる人の感情と思考である。それがたくさん集合して、「振り子=エネルギー情報体」となるわけで、あらゆる観念、あらゆる名前はすべて「振り子」となりうる可能性をもっている。当然「振り子」という観念そのものも、「振り子」である。(「振り子=エネルギー情報体」は、必ずしもネガティブのものばかりではない)。

「振り子」の唯一の関心は、「どうやって人々の関心(思考と感情)を集めるか?」というところにある。あらゆる振り子はそうやって「競争している」わけで、まあ、そういうことを理解したうえで、自分のお気に入りの「振り子」と戯れるなら、それも楽しいゲームであろう。

で、現在の日本(だけじゃないけど)は、「新型インフルエンザ振り子」に支配され、多くの人たちの関心が全部そこに集中して、「新型インフルエンザ振り子」は、一人勝ちで、笑いが止まらない……

[お礼]
一年間、当ブログ(=毎度バカバカしい観念を一席)にお付き合いいただいた皆様、またコメントを送ってくださった皆様、ありがとうございました。

本年は、今回で終了いたします。来年は1月中旬頃に再開します。それでは、皆様、「クリスマス振り子」、「正月振り子」といっしょに、楽しい年末年始をお過ごしください。



コメント

_ ao ― 2009年12月09日 18時13分11秒

ポピュラー・サイエンスは本によっては、そこらのスピリチュアル系よりずっとスピリチュアルな内容だったりしませんか??
前に「僕らは星のかけら」という本を読んでそう思いました。

私は植物が好きなのですが、人間をあやつっていたとは面白いし、なんだかほっとしました!面白そうですね〜。

1度だけお会いした一読者ですが、こちらこそブログをありがとうございました。
どうぞ楽しい年末年始をお過ごしください!来年も楽しみにしています。

_ るな ― 2009年12月09日 23時41分56秒

こちらこそ、今年も一年間読ませていただき、楽しい思いをさせてもらいました。どうもありがとうございました!お疲れさまでした~~☆

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