「ピーターの法則」―小沢さんと管さんの場合2010年09月11日 07時42分12秒

「ピーターの法則」(ローレンス・ピーター著 ダイヤモンド社)という今から40年ほど前に出版された本で、出版当事、世界中で非常に話題になった本がある。ご存知ない方のために、簡単にどんな内容の本かを説明すると、教育学者であった著者が、大企業、官僚組織のなかにはびこる「無能」について研究した本で、彼が発見した法則は一般に以下のような「ピーターの法則」として知られている。

(以下、ウィキペディア日本語版より)

1能力主義の階層社会に於いて、人間は能力の極限まで出世する。すると有能な平(ひら)構成員も無能な中間管理職になる。

2時が経つに連れて人間は悉く出世していく。無能な平構成員はそのまま平構成員の地位に落ち着き、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は無能な人間で埋め尽くされる。

3その組織の仕事は、まだ出世の余地のある、無能レベルに達していない人間によって遂行される。

(以上、ウィキペディア日本語版より)

例をあげて説明すると、たとえば、

ある大会社で、有能な営業部長がいるとしよう。営業のエキスパートでその会社の売上げに非常に貢献した人だ。有能であるゆえに、まわりからも会社からも出世を要請され、営業部長よりも上のポスト、重役のポストへ出世する。ところが営業部長としては有能であったのに、重役としてはまったく無能で役立たずであることが判明。万一、その人が重役としても有能であれば、さらに限界まで出世を余儀なくされ、たとえば、最高経営責任者まで出世して無能をさらけ出す。(一番目の法則)

他にも
スポーツ選手として優秀だった人の多くが、コーチや監督になると無能になる理由も、このピーターの法則に関連している。

さて、今なぜピーターの法則のことを思い出したかというと、民主党の小沢さんが、民主党代表選に立候補するというニュースを読んだからだ。いよいよ小沢さんもピーターの法則に従って、総理大臣になることを余儀なくされ、無能をさらけ出す時期が来たのかと……

ピーターの法則のどおり、政治家はトップ(総理大臣)になるとほとんど無能となる。野党のときは、有能な野党だった人も、与党になると無能な与党になり、大臣のときは有能だった人も、総理大臣になると無能になる。それは過去の日本の総理大臣のほとんどに当てはまることだ。

小沢さんは、幹事長としては有能だったゆえに、総理大臣としても有能になって手腕を発揮するだろうと、彼の支持者たちは期待するわけであるが、その期待の大きさゆえに、おそらくは総理大臣としては無能が際立つだろうと思う。彼は権力を取ろうと攻めているときは強くても、守りには弱いタイプである。

そもそも、小沢さんはパフォーマンスが好きな外向きの性格ではないし、裏でコソコソ権力をふるうのが好きな人であるので、総理大臣職という飾りみたいな仕事を楽しいと思えないだろう。総理大臣職とは、公務と会議に追われ、いつも笑顔で礼儀正しい言葉を使わねばならず、しかもマスコミに24時間監視され、女性やゼネコンとの密会もままならず……

では、菅さんはどうかといえば、野党のときには有能だった、それから与党になって、大臣になってもまだ有能だった。それでやはりピーターの法則に従って、総理大臣になった(させられた)。彼は、性格的に外向きでパフォーマンスが好きなので、総理大臣職は楽しそうではあるが、以前よりはるかに無能のように見える――小沢さんを立候補に追い込んだことは、彼の無能であろう。

どっちが勝っても、次の政権は短命が予想される。万一もし政権が長期に続くとすれば、最初に紹介した「ピーターの法則」の3番目が満たされるときで、つまり、自分は無能でも、まだ無能レベルに達していない有能な部下がたくさんいて、その人たちが仕事をすれば、組織はなんとか持ちこたえていく、ということである――さて、お二人には、それぞれ、まだ無能レベルに達していない有能な部下がたくさんいるのかどうか……

いやいや、政治家を見て笑ってばかりもいられない。「ピーターの法則」を、「出世(別の仕事)をすると、無能になる法則」と拡大応用すると、組織や大企業に所属していない人も、よくこの法則の罠に落ちるのだ。

シンプル堂の場合――本を読む人(読者)としてはまあまあ有能であったのに、本を作り、売る人に「出世」したら、無能をさらけ出してしまった――「無能を修行」するという意味ではよかったけれど。

「ピーターの法則」の本、皆様にお勧めします。

同じ著者の本
「こんなことがなぜ起こる」(ダイヤモンド社)
「ピーターのピラミッド法則」(ダイヤモンド社)




「ハインリッヒの法則」2010年09月21日 09時40分34秒

前回は、有名な「ピーターの法則」(民主党の小沢さんは運よく無能レベルに出世しなかったので、彼はこれからも有能に活躍されることであろう)をご紹介したが、ついでに今回は、それに劣らず産業界ではよく知られている(が、あまり理解さていないような)法則、「ハインリッヒの法則」をご紹介してみよう。

それは1930年代、保険会社に勤めていたハインリッヒさんという人が発見した法則で、1件の重大事故の背後に、29件の軽傷の事故と300件の「ヒヤリ」「ハッと」する体験があるという法則だ。別名「ヒヤリハット」の法則、「1:29:300の法則」とも呼ばれている。

それは、たとえば、工場の大火事とか、企業の情報漏えいとか、社員の不祥事とか、医療ミスとか、マスコミで報じられる大事件、重大事故が起きたときには、たぶん、その組織内で、それ以前に、軽度の事故、トラブルが29件くらい、さらに300件くらいの「ヒヤリ」としたり「ハッと」したりする経験があったはずだ、というものだ。

「ヒヤリ」としたり「ハッと」するとき、「これはまずい」と思う人が企業内にいて、対策を立てれば、それは軽度・重度のトラブルに発展しないですむが、「ヒヤリ」「ハッと」を無視していると、軽度のトラブル・事故・事件へ発展し、軽度のものも無視していると、さらに重大なトラブル・事故・事件に発展する――数字の割合がどれくらい精確かは、私には実証できないが、でもこの法則が当てはまった事例はあちこちでよく見かける。

この法則は、企業だけでなく、家庭とか、あるいは単に一個の肉体精神機構(人間)にも当てはまることである――小さいミス、小さい不調、小さいトラブル(それはある種の警告のようなものだ)を無視していると、もっと大きなミスやトラブル・事故に巻き込まれやすい。

「ハインリッヒの法則」は一般常識として知っておくと、特に組織で働いている人には役立つだろうし、またスピリチュアルな教えを学んでいる人も、よくこの法則を理解し、警告が来たら無視しないことをお勧めする。

なぜかというと、スピリチュアルな人たちがよく使う観念、「あるがまま」とか、「起こることは神の意志」とか、「現象は幻想である」とか、「人生に問題はない」、こういった観念がしばしばネガティブに影響する結果、小さいミスやトラブルを無視して、大きなミスやトラブルに巻き込まれてしまう人たちがけっこういるからである――起きたことなんて、たいしたことないさ、だって、幻想だし、それに神の意志だし、私の責任じゃないし―みたいな(笑)

しかしまあ、スピリチュアルな道にいる人に関しては、事故・トラブル・極度の精神的苦痛のさなかに、神秘体験とか覚醒体験をする人も非常に多くいて、特にここ10年くらいそういう話を私はよく読んだものだ――主に、アメリカ人の話であるが――交通事故、大病、犯罪で刑務所に入る、破産、アルコール中毒・ドラッグ中毒等々。皆さんもよくご存知のバイロン・ケイテイは、極度のうつ病と肥満に苦しみに、肥満治療の施設で覚醒体験をしたのは有名な話だ。

だから、平穏無事ではなくて、ジェットコースター的人生をお好みなら、「ハインリッヒの法則」的生き方もスピリチュアル的には悪くないです――たぶん。