今年のマイ・ブーム――「ザ・メンタリスト」2014年06月01日 17時37分12秒

 親鸞とラメッシ(2) は、Consciousness Speaks の本の出版時期が確定したときに、改めて書くことにします――Consciousness Speaks の日本語版は約700ページほどになる予定で、本の価格がかなり高めになると思いますので、ラメッシのファンの方は今から貯金よろしく(笑)お願いいたします。

今回は、先日、「シンプル堂さんの今年のマイ・ブームは何ですか?」と尋ねられたので、 今はまっている たわいもないマイ・ブーム について書いてみよう。

今年のドラマの マイ・ブーム は、アメリカで2008年から放映されている刑事ドラマ「ザ・メンタリスト」である。 CBI(カリフォルニア州捜査局)で犯罪コンサルタントとして働くジェーン(サイモン・ベイカー主演)がメンタリストとしての能力を駆使して、犯罪を解決するドラマである。

メンタリスト(mentalist)とは、何をする人なのかといえば、ドラマの最初にその定義が記され、こう書かれている。「人の心を読み、暗示をかける者。思考と行動を操る者」。つまり、「人の心を深く読み、自分が思う方向へ相手が行動するように仕向ける」のがその仕事だ。昨年の「モンク」が、人の心をまったく読めない犯罪コンサルタントであったなら、ジェーンは人の心を読みまくる役まわりで、相手の心を読んだうえで、平気でずけずけと人の心を逆なでするような質問を関係者にする。「あなた、どうやって殺したんですか?」  とか、「○○さんと不倫しているでしょう?」  みたいな。そういう直球の質問を投げかけ、それに相手がどう反応するかを見て、本当の犯人を探し出し、最後は犯人に白状させるように心理的に追いつめていく。

メンタリストなんて仕事はイヤラシイ仕事なのだが、そこはテレビドラマの主役であるので、視聴者が感情移入して共感できるように、ジェーンは妻子を殺されたトラウマを抱え、子供好きで無垢な性格を合わせもつというふうに設定されている。このドラマの売りは、ジェーンと関係者の心理戦と、有能だけどいつも不機嫌そうな女性上司リズボンとの好きそうで嫌いそうな、嫌いそうで好きそうな微妙な関係、そして二人の皮肉めいた会話だ。

今私が見ているのは第1シーズンの途中で、すでにレンタルでは第4シーズンまで出ているので、まだ先が長い。妻子を殺した犯人レッド・ジョンをジェーンが捕まえる最後までたぶん見てしまうことだろう――ドラマに「はまる」ということは、ある種の心理的緊張状態で、その緊張状態を終わらせるためには継続して最後まで見るしかない――これが「中毒」ということで、ドラマを作る側はどうやって人の心を中毒させるのか、そのトリック(仕掛け)を考えるわけである。

個人的な好みではあるけれど、刑事ドラマに関しては、日本の刑事ドラマよりもアメリカの刑事ドラマのほうがそういう仕掛け作りは上手な印象がある。日本のドラマではNHKの朝ドラが、日本人の心を中毒させる仕掛け作りがうまい。しかも脇役の俳優が素晴らしいので、母の家にいるときは、「花子とアン」を母と一緒に毎朝見ないと気がすまない中毒状態である。

あと、最近のマイ・ブームは、語学の勉強もかねて、youtubeで海外版子供向けアニメを見ることだ。どのアニメでも、子供たちは(なぜか海外アニメでは動物が人間役をやっているものが多い―熊、うさぎ、豚、蛙など)飛び跳ねて、食べて笑って泣いて遊んでいる。悪人はいず、登場人物はみな善人である。つまり、子供たちは天国に住んでいる。

(フランス語版のアニメで)子供たちがやたら「ヤッピー!」(Yupi=やったー!)と叫ぶので、私にも伝染して、最近は時々この元気でノリのいい言葉をマントラにしている。「今日は快晴だ、ヤッピー!」  「料理がおいしくできた、ヤッピー!」
  
 本日は、ブログが書けた、ヤッピー!
 



「きっと、うまくいく」2014年06月22日 08時31分12秒

きっと、うまくいく」――ある方に、「とても面白い映画です」と熱心に勧められて、先日、見たインド映画のタイトルだ。 見る前は、3時間を超えるインド映画と聞いて、あの歌って踊りまくるボリウッド映画を3時間も見る体力・気力が自分にあるかどうか自信がなかったけれど、見始めたら、これがまた楽しい。あっという間に3時間が終わり、音楽もすごく気に入ったので、翌日にもう一度見たくらいだ。

日本でもヒットしたそうなので、ご存じの方も多いかもしれないが、インドの超難関工科大学の男子学生寮を舞台にそこに学ぶ三バカ(映画の原題は、3 idiots= 三バカ)学生が起こす騒動と彼らの10年後を描いた作品だ。
 
三バカの一人はランチョーという名前の実はハチャメチャな天才で、彼は仲間から「ランチョー導師(グル)」と呼ばれ、知恵とユーモアでいつも難局を切り抜けていく。彼はことあるごとに、「自分の好きなことをすればいい」とAal Izz Wel(=All is well=すべてはうまくいく)  と仲間に説くが、なかなか理解されない。周囲に理解されないばかりか、彼を嫌う保守的な学長に三人一緒に目のかたきにされ、あわや退学寸前まで追い込まれてしまう。

 この映画を見て、若い頃、両親と激しく喧嘩した日々を思い出した。「自分の好きなことをすればいい」VS「子供は親の期待通りに生きるべきだ」の対立は、インドにかぎらず、日本に限らず、今という時代に限らず、あらゆる時代のあらゆる国の若者が抱える普遍的葛藤である。この作品には、大学生の自殺というインドの社会問題も織り交ぜてあるが、日本でも就活がうまくいかなくて自殺する大学生がいるという話をどこかで読んだことがある。どれだけの若者が親や周囲の期待に応えられずに、苦しんでいることだろうか……

私もランチョー導師同様に、今も昔も自分にも他の人にも、「自分の好きなことをすればいい」と気楽に言うが、ただ  「自分の好きなことをすれば」Aal Izz Wel(=All is well=すべてはうまくいく)なのかどうかは、保証のかぎりではない。好きなことをしていても、見た目うまくいかないこともたくさんあるし、お金がまわらない時期もあるし、精神的に苦痛な時期もある。だから、実は、「自分の好きなことをすればいい」は、ものすごくハードルが高いメッセージであることも理解している。

それでもやっぱり「自分の好きなことをすればいい」とあえて言うのは、映画の中で学生の一人が似たようなことを言っていたように、「他人の言うとおりにして失敗すれば、あとで人を憎むけど、自分の好きなことをすれば、人を憎まずにすむ」からだ。 

死に際の「人生の後悔」についての調査によれば、後悔のNo1は、「自分らしく生きなかったこと」で、「何かをやって後悔している」人よりも、「何かをやらずに後悔している」人のほうが、はるかに多いそうである。だから、「自分の好きなことをすれば」、人生への後悔が減り、(人には憎まれるかもしれないが)人を憎まなくてすむという意味では、確かにAal Izz Wel(=All is well=すべてはうまくいく)である。

さて、ラメッシが亡くなってからインドへの思いと熱もすっかり冷めてしまったが、「きっと、うまくいく」を見てヒンズー語の音楽を聴いていたら、インドへの郷愁にひどく駆られてしまった。そして、インドに滞在していたときに「中毒」していたマサラドーサを突然に思い出し、どこかへ食べに行こうと思いたった。インドまで行くのは無理そうだけど……。

[イベント]

*2014年7月21日(月曜日─祝日)午後 「私とは本当に何かを見る会」(東京)
*2014年7月27日(日曜日)午後 「私とは本当に何かを見る会」(東京) 
http://www.simple-dou.com/CCP006.html