グルジェフの教え2016年02月02日 07時27分15秒

「動物園から神の王国へ」 を購入・購読いただきました 皆様、ありがとうございました。

私の著作を購入・購読いただいた読者のために、数回にわたって、私の翻訳書ではなく、著作について、少しその背景を語ってみたい。(ダグラス・ハーディングのTo Be and not to be, that is the answerについては、発売が近づきましたら、改めて書く予定です)

今、私はいわゆる非二元系の本の翻訳を主な仕事にしているが、実のところ、私の著作はそれらの影響をあまり受けていない。つまり、ダグラス・ハーディングやラメッシ・バルセカールなどの本と教えは、「私とは何か」への本質的答えを与えてくれ、私が平和に生きることを助けてくれているが、私の著作のスタイルにはほとんど影響していない。
 
それらよりはるかに、私の著作は、20代の後半に出会ったロシアの神秘思想家グルジェフの教え、それから、タデウス・ゴラス(「怠けものの悟りかた」の著者)、 そして、40代前半に出会った生物進化論の影響を受けている。

今回は、「グルジェフの教え」 について簡単に書いてみたい。実のところ、グルジェフの教え・宇宙論は膨大で、とても簡単に説明できるようなものではないので、あくまで私が影響を受け、私なりに理解したグルジェフの教えである。
 
とりあえず私が非常に影響を受けたことを列挙してみると、

*人間は本能・感情・思考などをもった機械である。
*人間機械は間違って使われているので、非能率的であり、膨大なエネルギーをムダにしている。
*人間が進化するためには、エネルギーのムダ遣いをやめ、余剰エネルギーを生み出さなければならない。
*人間は、進化の段階によって7種類の人間がいて、それぞれ異なった言語、文化、芸術をもつ。
*(人間を含めた)有機生命体は地球の知覚器官である。

 
グルジェフ・ウスペンスキーの本を読んでまず最初に、「人間は肉体・感情・思考などをもった機械である」、「人間機械は間違って使われているので、非能率的であり、膨大なエネルギーをムダにしている」ということを私は非常に納得した。肉体・感情・思考はそれぞれ独立している機械であるという考え方は、それらとの一体化を解除し、機械として、あるがままの状態を純粋に客観的に観察することを可能にする。いったん観察し始めると、自分や他人の機械について、色々なことに気づくようになり、グルジェフのいう「機械の誤用」とはどういうことかを具体的に知るようになる。(グルジェフのワークでは「気づき」という言葉の代わりに、「自己想起」という言葉が使われている)

機械の誤用とはどういうことかというと、具体的な例を挙げれば、たとえば、歩くときは、実は考えること、つまり思考機械を使うことをまったく必要としていないにもかかわらず、多くの人たちは(そしてこう書いている私だって時々は)考え事をしながら歩いている。そして、驚くべきことは、考え事をしながら歩いても目的地や自宅に問題なく到着することだ。グルジェフはこういう状態を「眠っている」といい、もし人が目覚めて、肉体の仕事は肉体に、思考の仕事は思考に、感情の仕事は感情にまかせれば、はるかに効率的に仕事が行われ、エネルギーの節約になると教えている。

それから多くの人たちがやっていることが、感情の誤用である。感情は感じることは得意であるが、判断したり論理的に考えたりすることは苦手である。ところが多くの人たちは、自分の「好き・嫌い」を「善・悪」「正しい・間違っている」の判断に転化する。つまり、好き=善・正しい、嫌い=悪・間違っている。もちろん、誰にでも物事の好き・嫌いはあるが、しかし、それだけを物事の判断に使うと、起こりがちのことは、あとあと後悔するような決定や判断をする羽目になるということだ。

それから、反対に感情を感じるべきときに、思考を介入させる人たちも多くいる(一般的には男性に多い)。長年それを続けていると、自分でも自分の感情がまったくわからないということになる。怒っているのに、自分の怒りがわからない、悲しんでいるのに、自分の悲しみがわからない、嫉妬しているのに、自分の嫉妬がわからないなど。自分の感情を感じることができない人は他人の感情もわからず、いわゆる非常に鈍感な人間になって、他者とのコミュニケーションに支障をきたすことが多くなる。

 いわゆるグルジェフ・ワーク(私は正式にはやったことがないが)の主要な部分は、「人間機械の誤用」を改善し、エネルギー節約型にし、進化させることであり、グルジェフはそのために膨大な要求を弟子たちに突きつけた。彼は妥協を許さない厳格な師であったようで、そのため多くの弟子たちがやって来ては、離れていった。

そんなわけで正式なグルジェフ・ワークはほとんど一般向きではないだろうが、それでも、 「自分自身に対して徹底して正直であり、何も覆い隠さないこと」――このグルジェフの教えの根幹は、人がどんな霊的な道や教えにいようが、あらゆるスピリチュアルな教えの基本中の基本である。が、実践にはしばしば苦痛がともなう。なぜかといえば、自己観察を続けていくと、一般的に人がいだいている、「自分は善人である」とか「自分は何でもできる有能な人間である」とか、「自分は道徳的な人である」というイメージ・幻想がはげ落ち、だんだん自分が救いようもなく(極悪人とまではいかなくても)情けない奴に思え、さらには人間はほとんど無に等しい(というより実際に無である)生き物であるという自覚すら生まれてくるからだ。しかしそれに耐えて、自分の中の悪と利己心を受け入れ、人間機械の誤用を改善できるようになれば、そのときには、自分の中で分裂していた様々なことが統合されて、グルジェフ風にいえば、人間機械の効率がよくなり、自分の中に統一感が出てくる。

それから、グルジェフの教えが私の著作に影響を与えている点として、「人間は、進化の段階によって7種類の人間がいて、それぞれ異なった言語、文化、芸術をもつ」ということがある。最初に読んだ二十代のとき、私はいつも他人とのコミュニケーションに困難を感じていた。グルジェフの7種類の人間という観念を知って、なぜ人間同士のコミュニケーションや相互理解が困難なのか、そしてなぜ人は相手を決して本当には説得できないのかがわかり、ムダなコミュニケーションの努力をやめることができた。「あらゆる人の意見は、その人の立場に立てば、正しい」のである。

私が「動物園から神の王国へ」の第2部「サルの壁 人の壁」の中で展開した知性の7段階は、グルジェフのその「7種類の人間」という観念を借用してはいるが、しかし、その説明はほとんど似ていない。私は現代の日本人の読者に合うように、観念を大幅にアレンジし、さらに生物進化論の観念もまぜて説明している。職場、家庭、親子関係、恋愛・友情関係で、コミュニケーションに悩んでいる方が、少しでも重荷が軽くなればいいなあという希望をこめて書いたわけである。

以上簡単に私の著作に及ぼしたグルジェフの影響について書いてみた。本格的にグルジェフのワークをやったわけでもないのに、私はなぜか彼の教えや言葉には相当影響され、はまってきた。それはたぶん彼が徹底した現実主義者で、そして彼の説明がまた徹底して物理的(物理学的)であるところが、私の好みに合うからだと思っている。また彼の警句のいつくかは人生が困難な時期の私の心の支えとなってきた。

彼は時代より数世紀は先に進んでいるし、いつか公の科学が彼に追いつく日もくるかもしれないとは思うけど、グルジェフはこうも警告している――つまり、追いつく前に、人類そのものが消滅という可能性…… である

もし人類が進化しなければ、それは有機生命体の進化の停止を意味し、それはまた創造の光の成長が止まる原因にもなる。それと同時に、もし人類が進化をやめたら、それは人類創造の目的という観点からすれば無用のものになり、その結果滅ぼされるかもしれない。そんなわけで、進化の停止は人類の滅亡を意味するかもしれないのだ」(「奇蹟を求めて」473ページより)

彼の教えにご興味ある方は下記に紹介した本を読んでいただければと思う。(本としては非常に難解で、努力を要する本である)

参考図書
奇蹟を求めて」(P.D.ウスペンスキー著 平河出版社)
 「グルジェフ・弟子たちに語る」(G.I.グルジェフ著 めるくまーる社)
ベルゼバフの孫への話」(G.I.グルジェフ著 平河出版社)

* グルジェフについての詳しい情報は下記に掲載されています。(GeorgeIvanovich Gurdjieff, ロシアの神秘思想家1866年1月13日? - 1949年10月29日)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%82%A8%E3%83%95

[イベント]
「私とは本当に何かを見る会」2016年2月21日(日曜午後) 東京  予約受付終了しました
  詳細・予約は下記へ
http://www.simple-dou.com/CCP006.html

 [お知らせ]

*シンプル道コンサルティング再開しました。
   http://www.simple-dou.com/CCP.html

*「動物園から神の王国へ―サルの惑星、のような星で、平和に生きるために」(PDFファイル)ダウンロード版は、DLmarketのサイトで販売しています。お手持ちの機器(パソコン、タブレット、スマートフォン)に、PDFを読むソフト(AdobeReader等)が入っていれば、どなたでも読むことができます。

DLmarketからファイルをダウンロードするためには、まず会員登録をする必要がありますが、Facebook、Twitter、楽天のアカウントもご利用でき、各種支払いにも対応しています。(銀行振り込み、コンビニ支払い、クレジットカード、Paypal、その他)。なお現在は、パソコン等では、横書きの文章のほうが読みやすいという人たちもいると思い、縦書き版と横書き版の二種類の版を用意してあります。 編集の都合上、総ページ数(縦書き版が453ページ、横書き版が367ページ)は異なっていますが、内容はまったく同じです。

*購入についての詳細は、購入前に下記のDLmarketのサイトを見てください。
 http://www.dlmarket.jp/

「動物園から神の王国へPDFダウンロード縦書き版」(1500円+税)(453ページ)
   http://www.dlmarket.jp/products/detail/331107
 
「動物園から神の王国へPDFダウンロード横書き版」(1500円+税) (367ページ)
  http://www.dlmarket.jp/products/detail/331108

試読版(無料)は上記のサイトから、会員登録等なしに、どなたでも自由にダウンロードできますので、本との相性を確かめて、購入の判断をしていただければと思います。 (画像の下の、「立ち読みできます」をクリックすると、試読版PDFを無料でダウンロードできます)
 
*DLmarketで下記も販売中です。(無料試読版は会員登録不要で、自由にダウンロードできます――画像の下の「立ち読みできます」をクリックしてください)  
 
「楽しいお金」PDFダウンロード版(本体価格1,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/290251


「 楽しいお金3」PDFダウンロード版(本体価格1,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/290294


 「人をめぐる冒険 」PDFダウンロード版(本体価格1,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/290283


「1994年バーソロミュー・ワークショップ東京会場1日目」MP3ダウンロード版(本体価格2,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/297870


「1994年バーソロミュー・ワークショップ東京会場2日目」MP3ダウンロード版(本体価格2,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/297880


「1994年バーソロミュー・ワークショップ京都会場1日目」MP3ダウンロード版(本体価格2,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/297958


「1994年バーソロミュー・ワークショップ京都会場2日目」MP3ダウンロード版(本体価格2,000円)
http://www.dlmarket.jp/products/detail/297975

*上記MP3無料試聴版は下記よりダウンロードできます。
「1994年バーソロミュー・ワークショップ東京会場試聴版」(無料)

http://1drv.ms/1lKRZcr


「1994年バーソロミュー・ワークショップ京都会場試聴版」(無料)
http://1drv.ms/1g9oRdI