Gift(生まれつきの才能)と情熱2009年01月13日 09時52分43秒

皆様、あけましておめでとうございます。本年も、時間がゆるすかぎり、気ままに、気楽に、適当に、ブログを書いていきたいと思います。気が向いたときに、アクセスください。

昨年読んだ本に、「Why You Can’t Be anything You want to be」(直訳すれば、「なぜあなたは、自分がなりたいものになることができないのか」( Arthur F. Miller jr著) という本がある。

何の本かというと、人のgift、つまり、生まれつきの才能とはどんなもので、それを生かして仕事を選び、人生を生きるにはどうしたらいいかをテーマにして書かれた本だ。(念のために言うと、英語には「才能」を表す単語がいくつかあり、そのなかで、giftという単語は、特に「生まれつきの才能」、しかも、「天から贈られた才能」という意味あいが強い)

著者のArthur F.Miller jrという人は、本書も含めて邦訳は一冊もでていないので、日本では無名で、アメリカでも一般的に有名というわけではないが、彼は自分の理論をもとにしたキャリア・カウンセリング(職業選択のアドバイスをする仕事)の団体を作り、アメリカのキャリア・カウンセリングの業界では、先駆け的存在で、非常に大きな影響を与えた人らしい。

「Why You Can’t Be anything You want to be」の中で彼が主張していることを、短くまとめると、

*あらゆる人には、もって生まれた才能(gift)がある。

*人は、そのもって生まれた才能(gift)の衝動や情熱のパターンにしたがって、人生を生きようとする。(これを著者は、英語で、Motivation Abilities Pattern(MAP)と呼んでいる=(訳すと、「やる気がでる才能パターン」、「どんな才能を使うとき、人はやる気が出るのかのパターン」ぐらいの意味)

*したがって、人は、向かないことを自分に押し付けたり、自分の弱点を無理やり克服しようとするよりも、自分がすでにもっているgiftや強みを理解し、それらを生かす仕事をするほうが、効率的で、心も満たされる。

*自分のgiftが何かの鍵は、子供時代にあり、子供時代に無条件に楽しかったことの中に、その人のgiftのヒントがある。

*親も世間も教育も、このgift やMAPとは無関係で、また一人ひとりのこのMAPを誰も変えることはできない。なぜなら、giftは神が一人にひとりに与えたものだからである。

*gift やMAPが人生に生かせないと、人は落ち込み、憂鬱で、不幸である。

*よく世の中で流布している、「あなたは、どんなものにもなることができる」といった人気のある観念は、むしろ人を迷わすだけで、害がある。人の能力とは、ある特定のところに限定されていて、人は、自分が望むどんなものにもなれるわけではない。

*人のgiftには破壊的面、負の面もある。

本書を読んで、私も考えてみた。子供のとき、何が一番楽しかったかなあ?と。一番楽しかったことは、算数や数学の問題を解くことと、それから、本、特にシャーロック・ホームズなどのミステリー小説を読むことだった。私は、問題や謎があって、それに対する答えが、最後には明確に出てきて、しかも、その答えを出すプロセスを論理的に理解できるものが好きだった。

大学へ入って以来、数学そのものは勉強しなくなったが、私の根本的情熱は子供の頃からほとんど変わっていないように感じる。私は人生で自分が感じた謎や疑問に対して、納得のいく答えがでるまで、考え続ける。そしてそのために本を読む。他の人からみれば、どうでもいいような疑問を、長年飽きもせずに考えることができるのが、私の最大のgiftのようだと、本書を読んで納得した。

ただ、その私のgiftは、本を読むこと以外は、それほど仕事やキャリアに役に立ったとも思えないが、そのgiftのおかげで、私は孤独と退屈、たくさんの人生の苦痛から救われてきた。あらゆることが不安定な人生と世界にあって、頼りになる数少ないものの一つが、人それぞれのgiftなのではないかと私は思う。

giftに関しては、親や世間や教育は、たいていそのgiftを理解できないので、悪気はなくても、どちらかというと人のgiftを妨害する役割を演じることが多い。とういうより、むしろ、親とか世間は、わざと人に負荷を与えて、人のgiftを試す役割というほうが近いかもしれない。つまり、様々なものに妨害され、他人や社会に否定されても、それでも自分の中に何かに対する失われない情熱があれば、それが、その人のgiftである可能性は高い、ということだ。

さて、「Why You Can’t Be anything You want to be」の本は、著者のクリスチャンとしての信仰にももとづいていて、彼はgiftは神の意志であり、giftを使って神の創造の世界に貢献することが、人としての使命であるとも言っている。そのあたりの思想的重さと、「あなたは、どんなものにもなることができる」という観念に対抗して付けたらしい「Why You Can’t Be anything You want to be」というタイトルのせいで、本書は良書ながら、それほど売れなかったのではないかと推測する。現在ではタイトルは、「Why You Can’t Be anything You want to be」から、新版では「Power of Uniqueness」(訳せば、「人とは違う個性のパワー」くらいか)と変更になっている。(以前書いたように、アメリカでは、本のタイトルになんでもかんでも、Power をつける傾向がある)

残念ながら、本書には邦訳がないので、仕事や自分の能力・才能について考えている方々のために、Arthur F. Miller jrのMAPと同じような発想で書かれている別の本の邦訳書をご紹介する。

「まず、ルールを破れ」マーカス・バッキンガム&カート・コフマン著 日本経済新聞出版社
何万人の従業員をインタヴューした結論から、すぐれたマネージャー(管理職)のいる職場こそ、最高の仕事効率があることを解説した本。すぐれたマネージャーとは、職場での人間関係ストレスをできるだけ排除し、スタッフ一人ひとりが本来もっている最高の能力を引き出すことができるように、気を配れる人である。分厚く専門的なので、どちらかというと一般向けではなく、会社や組織の管理職の方むき。

「さあ、才能に目覚めよう」マーカス・バッキンガム著 日本経済新聞出版社
こちらは、自分のgiftが何かを探求して、それを仕事に生かしたい一般読者向け本。

「「これだ!」と思える仕事に出会うためには」ジェリル・ギルマン著 花風社