「癒やし系妻&夫、ほしいです……」2013年09月09日 09時03分50秒

この間、ものすごく久しぶりに結婚式に行ってきた。不慣れなフランス料理のフルコースを食べながら、今どきの結婚式に驚き、そして新郎新婦の挨拶文に、思わず笑ってしまった。

そこにはこう書かれてあった。

新郎が考える理想の夫:強い夫
新婦が考える理想の妻:癒やし系の妻

途中で祝辞を述べた中年の男性がこう言った。「私も、癒やし系の妻、ほしいです……」
 
理想とはいつも現実の逆である。その結婚が、風雪に耐えて、数十年無事続いたとしたら、そのカップルの両親がそうであるように、「癒やし系の夫と強い妻」のカップルになっているはず……であろう。

(キリスト教式の)結婚式では、カップルは、「富めるときも貧しいときも、健やかなときも病のときも、死が二人を分かつときまで……」と神父の前で誓うわけであるが、この約束を成就できたら、キリストのスーパー弟子である(!)

癒やし系の夫&キリストのスーパー弟子――今年のはじめ、そんなスーパー癒やし系「夫&父親」である人の講演を聴きに行ったことがある。

その壮絶な結婚生活を綴った本がベストセラーになり、その他仕事術の本もたくさん書かれている佐々木常夫さんという方である。

講演の内容は――結婚し、子供が3人生まれ、自分は大きな会社で課長に出世という順風満帆だったときに、突然、妻が鬱病にかかり、それから別の病気も併発して、入退院を繰り返すようになり、さらに子供の一人が自閉症でとても手がかかり、自分が家事・子育て全部をやらなければならない立場になった。そのため毎日、残業なしで定時に帰れるように仕事を工夫し、会社では出世し、社長になり、会社の業績も伸びた。しかし、会社の仕事はうまくいったものの、家庭生活では次から次へ難題(長女の自殺未遂や息子の自閉症が悪化等)が起こり、家庭が崩壊しないように数十年間必死で頑張った――だいたいこういう内容の話を、巧みな話術とユーモアで語られた。

現在では、奥様も回復され、普通に家事ができるようになり、子供たちもみな立派に成人し、佐々木さんも社長業を引退し、講演と著作の日々をのんびりと送り、仲のよい最愛の家族に囲まれて、とても幸せな生活を送っているとのことである。
 
講演の最後に、参加者の女性がこう質問した。「離婚を一度も考えなかったのですか?」

それに対して佐々木さんはこう答えた。「一度も離婚しようと思ったことはないです」

講演を聴いていた会場の大半を埋めた女性たちは、仕事と家庭を両立させ、家族を自分が守り抜くという佐々木さんの強い決意に感動し、そして、こう思ったかもしれない。

「私も、こんな癒やし系&強い夫、ほしいです……」



[お知らせ]

*2013年9月22日(日)「私とは本当に何かを見る会」(東京)
 
http://www.ne.jp/asahi/headless/joy/99_blank014.html

*201310月26日(土)「人をめぐる冒険ワークショップ」(広島市)
 
http://www.simple-dou.com/CCP037.html

*2013年10月27日(日)「私とは本当に何かを見るワークショップ」(広島市)
  
http://www.simple-dou.com/CCP037.html                                            


結婚は、「仕事」、あるいは、「冒険」2013年09月28日 09時07分26秒

前回のついでに、今回も結婚についての話題です。

以前に読んだ投稿サイトの投稿で、二十代後半くらいの若い女性が結婚について書いた悩みが、印象に残っている。

要約すると、だいたい以下の内容である。

「私は今、恋人と同棲しています。彼のことが大好きで、いずれ結婚したいと思っています。『あなたとずっと一緒にいたいから結婚したいし、あなたのことがこんなに好きなんだから、結婚してもきっとうまくいくと思う』と彼に言っても、彼はなかなか結婚しようと言ってくれません。彼は、『君のことは好きだけど……でも君は結婚のことを何もわかってない』と言います。『結婚が何もわかっていない』とは、どういうことでしょうか?」

もし私が20代の頃にこういった文章を読めば、この女性にきっと共感しただろうけど、今なら、男性の気持ちのほうがよくわかる。 人生には、「好きだけど、縁が終わらざるをえないこと」(人間関係にかぎらず、あらゆるものとの縁)が、たくさんあるのだ。

私自身は運命の都合で、一度も結婚したことがないが、自分の両親をはじめ、結婚している人たちを子供の頃から観察してきたことと、特に生物進化論、人類学等から、「結婚の現実」を学んだ。その結論から言えば、ロマンのない話にはなってしまうが、結婚とは「仕事」である。特に若い年代の人たち、そして、特に女性は、結婚をロマンチックに考える傾向にあるが、結婚は「仕事」とほぼ同義であり、結婚したい人はそう思って結婚に向かうほうが、現実的である。

私が若い頃、女性たちは、結婚を「永久就職」と多少揶揄して語ることがよくあったし、今では、就職活動のように、まさに「婚活」という言葉が一般的に定着している。永久かどうかは別として、「就職」という言葉は、けっこう当てはまっているかもしれない。もちろん、女性にとってだけでなく、男性にとっても、結婚は「仕事」である。

おそらく、先の投稿者の恋人が本当に言いたかったことは、「君のことは好きだけど、でも君は『僕との結婚という仕事』には向かない」ということではないかと、推測する。

生物進化論&人類学の研究によれば、男女の恋愛感情の賞味期限は3~4年ということであり、これには生物学的な根拠がある――詳しく知りたい方は 「愛はなぜ終わるのか?」 (ヘレン・フィッシャー著 草思社 ) 「結婚の起源」 (ヘレン・フィッシャー著 どうぶつ社) などの本がお勧めである。

だから、どんな大恋愛で結婚したとしても、数年たてば、その恋愛感情は色あせるのが普通ということである。結婚生活がうまくいくかどうかは、恋愛感情が終わったあとにも、結婚生活を支えるだけの共通の目的があって、そのために夫婦が努力できるかどうかということにかかっている。たいていは、「子供を無事に育てあげる」が共通の最重要の目的である―そもそもそのために、「結婚制度」は始まったのだ。 

もちろん、子供以外に、夫(妻)の仕事を支えるとか、共通の趣味(思想)を楽しむとか、一緒に商売や何かの活動をするとか、伝統的な家業を継承するとか、その他色々な目的があるが、結婚が続いているカップルは、「結婚生活において、何が重要か」という価値観が絶対に一致している。そして、「結婚における幸福」とは、お互いの協力でその目的がうまく実現していると思えるときで、そのとき相手に対して愛情と感謝を感じ、相手を大切にしようという気持ちが自然にわく。

表面的にはそれほど仲よさそうに見えない夫婦でも、「結婚生活において、何が重要か」の価値観だけは共通しているものである。たとえ、どれほど自分ではそう思えなくても、結婚している人たちはすべて、自分にピッタリな相手を得ている――そもそも、「あらゆる人は自分にピッタリの人間関係を得ている」(仏陀の言葉らしい)、のである。昔、私の母親が自分の夫(つまり、私の父親)について、ぐちぐちと不満を言ったとき、私は言った。「お父さんは、お母さんにピッタリな人でしょう」。そのとき母親が、その言葉にどれほど抵抗したことか(笑)。私の母親にかぎらず、なぜか、「あなたの夫(妻)はあなたにピッタリの相手」という言葉に抵抗する人たちは多い(特に妻たち)。

結婚は仕事であり、就職である。「会社で、自分は同僚や上司に大切にされていない」という悩みは、本質的な悩みではない。仕事では、「仕事の目的を果たすために、相手とどううまく付き合えばいいのか?」が、問題である。

 では、結婚は「仕事」という考え方が、あまりにロマンがなさすぎると思う方のためには、「結婚は神聖な冒険」という考え方もあり、それのほうがスピリチュアル系の人たちには合うかもしれない。それを言ったのは、私が好きな神話学者、ジョージ・キャンベルで、 「ジョージ・キャンベルが言うには、愛ある結婚は冒険である」(築地書館)の本の中で、結婚生活が神聖な冒険とはどういうことか、彼の考えを述べている。

結婚が「仕事」にしろ、「冒険」にしろ、あるいは、スピリチュアル系の人たちがよく言う「修行」にしろ、 結婚されている皆さんはよくご存じのように、「結婚生活における重要なこと」のために、夫婦は他の多くのことを犠牲というか我慢しなければならない。人間界での喜びは苦労に比例する。結婚式で、本人たち以上に親が感涙にむせぶのは、自分たちの長年の努力がやっと花開いた―自分たちの「作品」が、皆様に見ていただけるように、立派に完成いたしました!―と、感じるからなのであろうか……
  
その他お勧めの本

「100万人が癒やされた愛と結婚のカタチ」 (ハーヴィル・ヘンドリックス著 アーティストハウス)
アメリカの著名な結婚セラピストが、うまくいかない結婚生活を解明し、「結婚生活を成功させる方法」を伝授する。


 [お知らせ]


201310月26日(土曜日午後)
「人をめぐる冒険ワークショップ」(広島市)

  http://www.simple-dou.com/CCP037.html

2013年10月27日(日曜日午後)
「私とは本当に何かを見るワークショップ」(広島市)

   http://www.simple-dou.com/CCP037.html                                            

2013年11月23日(土曜日午後)
「楽しいお金」ワークショップ(大阪市)

2013年11月24日(日曜日午後)
「私とは本当に何かを見る」ワークショップ(大阪市)

http://www.simple-dou.com/CCP040.html