ダグラス・ハーディング(6)「存在し、存在しない、それが答えだ」2016年11月09日 15時58分25秒

ダグラス・ハーディングの新刊存在し、存在しない、それが答えだ」(ナチュラルスピリット発行 本体価格 2300円)が発売されました。

目次は下記のサイトに掲載してあります。

今回、ダグラス・ハーディングについての最後の話は、また彼の人生に少し話 をふってみよう。
 
彼は十代の頃から建築家としての訓練を受けたが、それは親がたまたま決めた職業で、彼自身は建築の仕事にそれほど興味がなかった。むしろ若い頃の彼は作家になりたくて、何冊かの本を自費出版しているほどである。そんな感じで、彼は建築家としての仕事には情熱がなかったにもかかわらず、家族を養いある程度豊かな生活ができるくらいには成功し、しかも彼は自分の職業人生に関して次のように語っていた。「私は建築の仕事をほとんど一日に1時間くらいしかしないで、残りの時間は、私とは本当に何かの探求に費やしていた。それでも何とか仕事をやっていくことができた」。

彼の最初の妻は、「私とは本当に何か」を探求する彼の情熱も彼が発見したこともまったく理解もせず興味もなかったが、彼が建築の仕事を休んで、大著「The Hierarchy of Heaven and Earth(天と地の階層)」を書いている間、生計を支え、彼がそれに集中できるように協力してくれたという。

まだ晩年のインタビューによれば、彼が建築事務所を経営していたとき、彼の妻が仕事の関係で町の多くの有力者と知り合いだったため、建築の仕事を簡単に受注することができたそうで、だから、最初の妻は自分の人生に非常に貢献してくれたという話を語っている。全体的には、戦争があったとはいえ、彼の建築家人生はおおむね順調だったようだ。

むしろ困難がつきまとったのは、自分が発見したことを伝えるという霊的な仕事に彼が従事した年月だった。

彼が今回の「存在し、存在しない、それが答えだ」の本の中でも語っているように、特に伝統的宗教に深くはまっている人たちには嫌われた。

その理由は私が理解するに、キリスト教、仏教、イスラム教などの伝統的宗教は階級性と儀式や規律を非常に重んじ、愛しているからで、彼の言っていることはそういったすべての階級性や儀式や規律の必要性を破壊してしまうからである。

また、「私とは本当に何か」、あるいは神を発見するために、自分以外の外側のグルや教師、外側の組織、代理人(聖職者)は必要ないことも彼は明らかにしたからでもあろう。

様々な困難があったにもかかわらず、自分が発見したことを興味がある人たちと分かち合いたいという彼の情熱は晩年になっても衰えることなく、キャサリンによれば、世界各国から来るワークショップの依頼は決して断らなかったそうだ。。それはたぶんダグラスにとっては、世界の様々な地域に行って、様々な人たちに会うことは、「何が起こるかわからない冒険」であり、彼はそういった冒険を愛していたからだと思う。

時には、全然趣旨の違う団体に間違って招待され、会場に到着して初めて気づくということも起こった。会場に到着したら、「イギリスの建築家、ダグラス・ハーディング氏がイギリスの建築史について語る」建築関係者向けの講演会だとわかって困ったことがあったと、エッセイの中に書かれている。

そういう困難に会ったときの彼のモットーが、「Man's extremity is God's oppotunity(人間の苦境は神の機会)」という古いことわざで、つまり、その意味は「人間が本当に困ったときこそ、神の知恵が出てくる」  ぐらいの意味である。その言葉どおり、彼は困難に出会ったときは、人間的に奮闘することをやめ、ただ自分の本質から出てくる答えを待って行動し、切り抜けたとういう経験を多くしたようだった。

彼が私に話してくれたそんな出来事の一つが、1980年代に彼が日本のある禅寺の招待で、日本に来たときのエピソードである。彼が日本の空港に降り立つと、来ているはずの迎えが誰も来ていない。禅寺に電話をかけても英語が通じず、彼は住所と電話番号だけが書かれてあるメモを握りしめて、(おそらくは)虚空を眺めながら空港のロビーの椅子に坐っていた。

すると、しばらくしてどこからともなく、見知らぬサラリーマン風の日本人の男性が片言の英語で彼に話しかけてきて、彼もメモを見せながら、自分がここへ行きたいことを何とか伝えたという。すると、その男性は、「私について来なさい。私があなたをそこへ連れて行ってあげましょう」と言って、その晩は彼を自宅に泊めて、翌日その禅寺まで彼を送り届けてくれたという話である。

彼はこういった奇跡話みたいな話はふだんほとんど文章には書かないし、話したりもしない人なのだが、そのときはたまたま私が日本人なので、自分がその日本人の親切にどれだけ感激し感謝したかを私に伝えたかったのだと思う。

そんなこんなの冒険(時には危険な出来事や不愉快な出来事)満載の彼の人生を振り返ってみて感じることは、ときに困難が襲っても、彼が人生と世界を深く愛していたことである--その理由はおそらく、人生と世界は神の創造であるからで、「神なる私」が造ったものだからだ。

ダグラス・ハーディングはインド系の賢者とは違って、「世界は幻想である」という言い方をしないし、むしろそういう表現を嫌っていたと思う。彼にとっては、物質世界は神満載の現実であり、それを「幻想」と呼ぶのは神に対して失礼な表現なのだ。

彼は、神とは何か、私とは何か、人間とは何かの研究・探求に生涯を捧げた研究者・科学者・神秘家という多面的な面をもつ人であり、そして私にとっては少々頑固で愛すべきおじいちゃんでもあり、彼の教えと彼に出会ったことをとても貴重で不思議なご縁だと思っている。
                                       
最後の最後に、ダグラス・ハーディングがあらゆる機会にしつこくしつこく問いかけた質問……

今これを読まれている皆さんは目の前のパソコンやスマートフォンの画面を眺めているはずであるが、On the present evidence(現在の証拠にもとづいて)答えるならば、その文字や色を見ている(認識している)主体(あなた)は色や形があるだろうか?……On the present evidence(現在の証拠にもとづいて)


[イベント]

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探求の終わり、そしてまた始まり2016年11月22日 14時03分01秒

 「シンプル堂さんは探求が終わったのですか?」と尋ねられたことがある。この質問への答えは、Yes でもありNoでもある。

振り返ってみると、私が二十代半ばに霊的探求を始めた頃、二つの目標というか望みがあったと思う。それは「平和と絶対的な真理」である。 私は、心の平和と永遠に変わらぬ真理、それが熱烈に欲しかったのだ。

幸い自分を導く教えと師のような方々(厳密に言えば、私は誰とも特定の師弟関係ではないし、グル-弟子という観念は自分には合わないと思っている) と巡り会い、 「平和と絶対的な真理」を知ることができた。しかし、「私は○○を知る」という表現も本当には正確ではない。 むしろ、どこに「平和と絶対的な真理」  があって、どこにないかを認識し、疑いが消え、確信に落ち着いたというのが一番近い表現だ。
 
以上述べた意味においては、「探求は一応終わった」と言うことができるだろうと思っている。しかし別の意味においては、それはシンプル堂と呼ばれている人間物体が死ぬまで続くものであるかもしれない。

ダグラス・ハーディングはよくこんなことを言っていた。

「神とは無限に未知で、無限に神秘で、それは一人の人間の一生で探求(研究)し尽くせるものではない」
彼は死ぬまで、「私」の本質である神を探求(研究)しつづけ、そして自分が発見したことをどうしたらよりよく伝えることができるかも研究し続け、「私とは本当に何かを見る」ための新しい実験やイラストをいつも考えていた。

私の場合は、仕事(翻訳と著作)のためにまだまだ色々と研究・探求することがたくさんあり、 そしてダグラスと同じく実験についても研究・探求している。だから、また新たなる探求・研究が始まったとも言えるかもしれない。でも、「探求・研究」という高級な言葉よりも、それはどちらかというと、シンプル堂と呼ばれている人間物体の余生の趣味・娯楽のようなものだ。

さて、今、来年出版が予定されているニサルガダッタ・マハラジのPrior to Consciousness(意識以前)の本の作業を開始している。10回以上読んだ本であるが、マハラジの言葉は一つ一つが奥深いので、作業しながら、彼の言葉に瞑想する日々である。彼もまた(もちろんお会いしたことはないけど)ダグラス・ハーディング、ラメッシ・バルセカールと並んで、私が深い敬愛の情と感謝を感じる賢者である。

最晩年の本書の中で、彼がよく言っていることは、世の中で普通に生きることの重要性だ。

「(物事の状態を正しい観点で)見て、自分の能力のかぎりを尽くしてこの世の中での自分の人生を生きなさい。」

「理解したら、何でも好きなことをやればいい」

 
まさにそういうことなので、シンプル堂は、他のことよりは多少は能力がある翻訳と著作をもう少しだけ頑張ろうと思っている。

「お知らせ」
ダグラス・ハーディングの新刊「存在し、存在しない、それが答えだ」(ナチュラルスピリット発行 本体価格 2300円)が発売されました。
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本書の詳しい目次は下記のサイトに出ています。

1部 ヒトにおけるセックスと闘争・暴力の問題について
2部 サルの壁 人の壁
3部 人生は、ド・アホでいこう!

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なお現在は、パソコン等では、横書きの文章のほうが読みやすいという人たちもいると思い、縦書き版と横
書き版の二種類の版を用意してあります。 編集の都合上、総ページ数(縦書き版が453ページ、横書き版が367ページ)は異なっていますが、内容はまったく同じです。

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