性エネルギー(生エネルギー)2019年12月01日 16時30分50秒

前回、瞑想などをすると、性エネルギーがより感じられることがあるという話を書いたが、この話題に関して、今まで読んだ本の中で一番わかりやすく、適切な考察をしていると思ったのは、「バーソロミュー」(ナチュラルスピリット刊行)の「性エネルギーという贈り物」という章だ。そこには瞑想などをしている人、スピリチュアルな探求をしている人にとって、性エネルギーをどう考えたらいいかについて、バーソロミューの考えが書かれている。

一部引用すると:

瞑想をしている人は、自分の体のなかを流れ動くエネルギーをはっきりと感じ、そういうエネルギーは自分の肉体を超えたところから来ることを知ります。性エネルギーにも同じ働きがあって、あなたをより広大な意識へと誘う「引き金」となります。自分がすべてのレベルで学び成長していく手段としてセックスを利用したければ、自分の内部やまわりで何が起こっているかに耳を傾け、注意を払わなければなりません。静かにして意識をとぎすますのです。性エネルギーの動きに気づき、それを感じ、動くさまを知るようにならなければなりません。生殖器部分は宇宙のパワーであるクンダリーニの発火点に非常に近いことも、観察していくとわかります。意識を完全にとぎすましていると、パワーを急増させ、背骨の基部にあるチャクラから天頂のチャクラまでエネルギーをかけのぼらせ、途中のチャクラにすべて点火する能力が自分の中にあることがわかります」(p62-63)

今、「クンダリーニ」とか「チャクラ」という言葉がたまたま出てきたが、自分の性エネルギーを理解するのに、実際こういう秘教的知識や特別なメソッドや先生は必要ないことを、バーソロミューは強調している。

同じ章で「クンダリーニについて学ぶのに、先生が必要ではないか?」という質問に答えて、バーソロミューは次のように述べている。

何をするにも師が必要だなどと思いこまないでください。あなた自身が教師なのです。パワーはあなたの内部にあって、人はそれぞれがパワー制御装置のようなものを持っています。エネルギーが動くに従って、道も開かれていきます。私の言うことを鵜呑みにしないでください。もちろん、ほかの人の言うことも鵜呑みにしないでください。自分自身の内なる声に耳を傾けてください」(P65)

性は、人の世俗人生で一番多様性のある分野なので、他人の経験・意見・アドバイス、世の中の常識はほとんど役に立たないと思ったほうがいい。だから、「自分にとって性とは何か? どういう意味をもっているのか?」を考え抜くことであり、自分にとっての「答え」が自分の中から出てくれば、ぶれない確信をもつことができるはずである。

性エネルギーは広く言えば、「生エネルギー=生命力」であり、それがたまたま生殖器部分で感じられれば、「性エネルギー」と呼ばれ、生エネルギーがハートで感じられれば、愛などの感情となり、さらに上のチャクラで感じられれば慈悲とか創造力として感じられる。

さらに話をすすめれば、バーソロミューはまだ「個人の意志と肉体」というものを前提にして、個人が性エネルギーをどう扱うのか、選択があるという立場で話しているが、これが完全な非二元系の教え、マハラジやラメッシのところまで来ると、性に関する経験も含めて、人生のすべての経験は、「あらかじめすべて決まっている」という前提にたっている。非二元の教えに立てば、一個の肉体精神器官の性の経験がどんなものでも、別にどういう意味もないのだ(笑)。

さて、「バーソロミュー」の本の「性エネルギーという贈り物」という章のタイトルには、そのときは非常に不愉快で、でも今思い出すと滑稽な思い出がある。

それは90年年代半ばのことで、「バーソロミュー」の本を私が経営していた会社で出していた頃のことだ。ある日、中年の男性から電話があり、「娘の部屋に入ってみると、『性エネルギーの贈り物』とかいう内容が掲載されている本を見つけた。こんな有害な本を出して世の中によからぬ影響を与えているので、お前を警察に訴えてやる」という主旨の内容を電話口でわめかれ、電話を切っても切っても、相手はしつこくストーキング電話をやめなかった。

「娘の部屋に入って、娘の思想チェックをし、しかも他人の会社の業務妨害をしているお前こそ、有害オヤジじゃないか!」と私は心の中でブチ切れたが、話を聞いているうちに、たかだか本の中の言葉に過剰に反応するくらいなので、この男性は相当ストレスがたまっているのか、娘との関係がよくないのか、あるいは、性に関して何か歪んだ幻想をもっているのかも、と想像した。

性エネルギーが抑圧され、それが人生の様々なストレスと歪んだ合体をすると、その行き着く先は、人間関係にまつわる「トラブル」であり、さらにひどくなると、「犯罪」を犯すに至ることがある。歪んだ性エネルギーには人の人生を狂わし破滅させるほどの麻薬的パワーがあることを、世の中にあふれている様々な事件は教えてくれている。


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変えるべき「人」も「社会」もない2019年12月22日 16時05分13秒


(紙の本はシンプル堂で販売しています)
私が「楽しいお金」のキンドル版の前書きに、「これを最初に書いた頃と今は、多少考えが変わったことがある」と書いたことに対して、「どう変わったのですか?」というご質問を前にいただいた。

今日はそれに対してお答えしながら、非二元の教えにおいては、「変えるべき人も考え方も社会もない」という概念を説明してみたいと思う。

私が90年の初頭に出版社を作った頃、私の中にまだ、「自分自身や人生について、あるいはお金や人間関係について多くの人たちが考え方や生き方を変えれば、社会はよりよくなりうるはずだ」というかすかな希望のようなものがあった。それが無謀をかえりみず、私が出版社を作った(自分の中での)動機だった。

私は、「考え方を変える」のは、洋服を着たり脱いだりするようなもので、誰でも簡単に自由に変えることができるだろうと思っていたのだ。大人になってからの私は、若い頃から「自分の自由意志」という信仰の信者だった。

だから、今読み返してみると、90年代初頭に書いた「楽しいお金」には特に、「自分の自由意志」とそれに伴う「自己責任」という信仰の影響が強く残っている(それでもお金についての基本的考え方は変わっていないので、キンドル版の内容も当時のままで変更はしていない)。

それから、私は非二元系の教えに出会い、私は非二元系の賢者の先生たちが言っていることの正しさを確信するようになった。前にも書いた話だが、特にラメッシの「意識は語る」の本を最初に読んだとき、「すべては神の意志であり、神の意志がなければ何事も起こらない」という彼の言葉に衝撃を受け、ショックで1週間も寝込んでしまったほどだ。もしすべてが「神の意志」なら、人が考え方を変えるのも変えないのも、どんな考えをもっているにしろ、本人の自由意志でも責任でもありえないではないか!と。そもそも生き方を自由に選ぶことができる「個人」が存在しないのだ、ということを理解した。

しばらく、非二元の教えと「自分の自由意志」の信仰の間で葛藤したが、そのうち私が「自分の自由意志」を信仰するようにプログラムされたのは神の意志で、それを特に無理して変える必要もないし、私が何を信じても、それもそれで神の意志なのだと納得した。だから、今でも、シンプル堂と呼ばれている「人」は、見かけの自由意志と自己責任をゆるく信仰したままである。

社会に関しては、人類の歴史を多少学んで、「社会は変わり続けるが、誰の努力によっても決してよりよくはならず、永遠に問題を抱え続ける」ということを理解した。

ラメッシ、マハラジも含めて、インドの非二元系の教えでは、「社会(現象世界)は幻想である」というのが定番の考え方で、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の本の中でも、マハラジがそれを軽快に論理的に説明している。

非二元の観点から見れば、「社会もその中の人間も意識の中のイメージ・物語にすぎない」のであり、映画の世界と同じように実体がない。「実体がないものを変えたり、救ったりすることはできない」というのが、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の中で、マハラジが日々繰り返している話である。(ただし、私自身はダグラス・ハーディング同様に、「幻想」という表現をあまり好まないし、正しく理解しなければ、「現象世界は幻想である」はかえって人生に悪影響を及ぼす可能性もあると思っている)

そして、その物語社会の風景(イメージ)は変わり続けるが、その中にいる人間(人類)の行動パターンも思考パターンも、数千年間(ブッダやキリストの時代も、時代劇の中の江戸時代も、現在の日本と地球社会も、SFなどで描かれる数千年後の未来宇宙も)、驚くほどほとんど変わっていない。

権力者たちはいつの時代も腐敗し、庶民(国民、平民)から吸い上げたお金(つまり、税金)を、庶民には何の役にもたたないプロジェクトや私利私欲のために湯水のように浪費し、我が世の権勢を誇って祝杯をあげ、あらゆるところで動物園の住民たちは権力闘争に明け暮れ、そして愚かしい理由で、戦争が起こり続けている。

安倍首相が税金で大勢の「自分の」支援者を集めて、彼らに囲まれながら桜を眺めてご満悦な様子も、大昔から変わらない、そして数千年先の未来でも変わらない権力者の滑稽でかつ普通の姿なのだ。別に安倍首相が特別に「ひどい」政治家ということではなく、映画の中の権力者という役割の俳優はみな同じように思考・行動する。

だから、90年代の頃と、それ以後私の考えの何が一番変わったかというと、「人が自分の意志で考え方や生き方を変えることができる」や「社会がよりよく変わる」という考えを捨て、「理想の社会」とか、「平等で平和な社会」というシナリオがありえないのだと、理解したことだと思う。

「社会がよりよく変わる」、「人が自分の意志で考え方や生き方を変えることができる」という考えは捨てたが、それにもかかわらず、私が今でも本に関する仕事をして、非二元の教えを伝えているのは、つまり、非二元の教えの宣伝員のようなことをやっているのは、「人」も「社会」も架空にもかかわらず、主体である「私」(意識している存在)が、恩寵(神の意志)によって、「私とは本当に何か?」に目覚めれば、そのおかげで、意識が一つの肉体精神機構を通じて、日々顕現する世界が少しだけ親切で平和で美しい世界になる可能性を信じているからであり、それが私の経験でもあったからだ。

まあ、それさえ、本当のところは、私がそう考えている(=シンプル堂という物体にそういう「思考」が起こり続けている)だけで、実際は、現象はどんな人の関与も理由もなく、ただただそう起こり続けているだけ……という非二元特有の「身も蓋もない」いつものつまらない結論(笑)となってしまうのであります。

〔お礼〕
本年もシンプル堂の活動に多大なご支援をいただき、ありがとうございました。また本をご購入くださった皆様、直接お会いした皆様、ご縁に感謝します。それでは皆様、楽しく平和な夢年末・年始をお過ごしください。来年は1月中旬からブログを再開する予定です。


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