アルファ・オス(序列が一番上のオス)になりたい夫たち2007年12月06日 10時26分18秒

「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」と、夫に言われて、怒りがおさまらないという主婦の悩みを、たまに悩み相談のサイトで見かけることがある。

「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」という言葉は、昔から、夫婦喧嘩のときに、夫たちが、主婦である妻に投げつける定番の武器であり、私も昔、知り合いの主婦の人たちから、その怒りを聞いたことがある。

そして、機会があるときには、夫たちがその言葉を妻に言わざるをえない、動物脳の習性を説明してあげたこともあった。

その動物脳の習性とは、

ヒトも含めて集団をつくる哺乳類は、集団の中の序列を確定したがる、ということだ。そして、序列を確立したあとで、自分が他のメンバーに対してどういう行動をとるかを決定する。

よく知られている例が、犬で、犬を飼うときは、ペットの飼い主は、自分が犬よりも、序列が上であることを最初にしっかりと犬に教えなければならない。そうでないと、犬は、自分が家族の中のアルファ・オス(序列が一番上のオス)だと思い込んで、誰の言うことも聞かなくなるという。動物脳には、民主主義は理解できないのである。

私が知るかぎり、妻子を養っているほとんどの男は、「オレの稼ぎで、家族は生活している」と思っている。生活費とは、動物的解釈では、餌を運んでくるという意味で、動物の世界では、オスが餌を運んでくることができれば、それは、強いオス=集団の中で序列が一番上ということを意味する。

つまり、妻子を養っている男の脳では、「オレは餌を運んできているので、この集団のアルファオスだ」=「よってお前たちは、オレの言うことに従わねばならない」という解釈が成立している。

ところが、現実のヒト家族では、たいてい、夫であり父親である男の言うことなど、誰も無視して、従わない。そのことが、特に動物脳が強く機能している夫の脳には、耐え難いストレスとなる。「なんでアルファ・オスであるオレの言うことに、誰も従わないんだ? お前ら、なんか変じゃないか?」と。

動物世界では、みんながアルファ・オスに絶対に服従するので、こういった夫たちのストレスと疑問も、当然といえば、当然なのである。

人間の脳がある程度機能している夫の場合は、たとえ、「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」という思考が心によぎっても、もしそれを口に出して、妻に言ってしまったら、夫婦関係が悪くなるのを理解しているので、理性でとめて、言葉をこらえる。

さらに、もし神の脳が機能している夫であれば、「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」という思考がよぎったときに、その思考そのものの真実を疑うはずだ。事実は、誰かが誰かを養っているなどということはなく、ただ縁によって、いくつかのボディ・マインドが、家族として引き合って、神の意志によってお互いを支え合っているだけの話なのだ。「オレの稼ぎで、家族は生活している」などという思考そのものが、笑止千万である。

このように、「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」などという言葉と思考は、笑止千万であるにもかからず、家庭内でアルファ・オスの地位を名実ともに勝ち取ろうとあがいている夫たちにとっては、妻子を黙らせ、従属させる(そして、嫌われる)最強の武器でもある。

そして、もしそれを言われた妻の側が、いつまでも、うじうじ、ぐじゃぐじゃと悩み、怒るとすれば、その人の中にも、「自分は夫に養われている」という劣等感と負い目があるはずであり、敵(夫)はその弱点を攻撃して、従属関係を作ろうとするわけだ。相手の一番弱いところを攻撃するのが、動物的習性というものである。


夫婦喧嘩は、カップルが離婚する運命がない場合、激しくやりあったあと、仲直りするケースも多いので、妻の側も、一人で悩んで怒っているよりは、女の得意技、「口撃」で、反撃するのもいいかも、と私は思います。

「誰のおかげで、お前は飯を食っていると思っているんだ?」と言われたら、

「誰のおかげで、あんたは毎日、清潔なパンツをはいて会社へいけると思っているの?」と同様に笑止の言葉で切り返す、あるいは、

「あんたが私を食わせているって? ええ? そんなまさか!? 今日まで知らなかった……」と、ボケて見せる、あるいは、

「ごめん、実は今だから言うけど、内の子供たち、あんたの子供じゃないようなの……あんたの知らないところで、私も色々あってね……
今まで、本当にありがとう。自分の子供でもないのに、お金出してくれて、本当に感謝するわ」と白状して、さらに修羅場を作るか……