『チ.地球の運動について』(1)――権力者対異端2025年07月25日 10時08分22秒

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今日の話は、『チ。地球の運動について』についてである。すでに見た人たちもいるだろうけど、簡単にこのアニメを説明すると、15世紀のヨーロッパを背景に、地動説の研究に情熱をかける人たちと、そういった人たちを異端として迫害する教会との戦いを描いた作品だ。ちなみに、「チ。」の意味は、「知、地、血」と三つの意味がある。このアニメの原作者、魚豊(うおと)さんのインタヴューによれば、彼は知(知性)と血(暴力)の関係に関心があったという。「戦い」といっても、戦闘シーンは少なく、登場人物たちの会話がなかなか奥深くて楽しい(←政治家や政治家候補の皆さんが語る、他人の関心を得ようとする作為された言葉とは違って、みな自分の本気をしゃべっている)。

私がこのアニメを見て一番印象的に感じたことは、権力者対異端という、歴史上いつの時代にもどこの地域にもある対立である。ある意味では、人類の歴史とは「権力者対異端」の戦いといっても過言ではない。

権力者とは、その時代と地域において、お金(税金)を集める権利、それをどう使うのかの自由、そして人々に命令するパワーをもつ人たちの集団であり、異端とは、権力者が自分の権利、自由、パワー、権威を脅かすと決めつけている人たちのことだ。

権力者たちの異端狩りの一番の根本的動機は「恐怖」、つまり自分たちが享受してきた特権を失うことで、それは何としても食い止めなければならない。このアニメの中で教会がそれほど執拗に地動説研究者を迫害するのは、もし地動説が正しいとなれば:

*天動説が正しいとする彼らの神学がゆらぎ、
*教会の権威に傷がつき、
*人々から教会税を集金したり、彼らの生活を支配したりするパワーを失う、

ということを恐れてのことだ。もちろん表向きは、「社会の不安をあおる人類の敵を滅ぼすことは、神のための仕事だ」と自分たちがやっていることを正当化し、人々にもそう思い込ませようとする。このアニメの中で異端審問官のノヴァクは、「悪魔と結託してこの世界を変えようとする輩を迫害するのは、人類のため、神のため」と信じて疑わず、どんな残酷な拷問でさえ平気で行なう。信仰になった「恐怖」ほど残酷さを生み出すものはない。

歴史上の権力者は、(特定の宗教の)教会、軍、共産主義、絶対王政、民主的政権と、時代と地域によってどんな人たちでもありえ、そして今名前を挙げた権力者は、すべて反対の異端にもなりうる――宗教(キリスト教は長い間、多くの国で異端であった)、共産主義、民主派など。

では、現在の権力者対異端は、それぞれの国で違うが、たとえば:

中国では、中国共産党が権力者、それに対する異端とは民主派運動の人たち、チベット独立運動の人たちなど、そして台湾も中国にとっては異端だ。

中東の権力者イスラエルにとって、最大の異端はハマスであり、イスラエルがあれほどガザで残酷になれるのは、ハマスへの彼らの「恐怖心」のせいだと私は感じる。

アメリカは、トランプさんが大統領になってから異端狩りが激しい。彼にとっては、保守的価値観をもつ純粋な白人以外、すべて異端のようだ――移民の人たち、外国人留学生&労働者、性的少数派の人たちなど。彼はアメリカを保守的価値観をもつ純粋な白人の王国にしようと躍起だが、彼の言動そのものがアメリカの凋落を象徴している。

では、日本はどうかと言えば:
日本の権力者は誰かというと、長年政権与党の自民党のように見えるが、この国の本当の権力者は、たぶんその自民党を背後で動かしてきた人たちだろう。彼らが作り出した、「他人の言うことを聞いて、善人で真面目に働いてさえいれば、人は幸せになれる」という価値観がものすごくこの国の国民を束縛している。それはまるで「チ。」の中でたびたび出てくる、「教会の言うことを真面目に信じていれば、死後天国へ行ける」という信仰に似ている。

私は子供の頃からずっと「異端」であったので、「善人で真面目に働いてさえいれば、人は幸せになれる」という大人たちの信仰をいつも疑っていた。なぜなら、周囲の大人たちはみんな善人で真面目に生きていたのに、ほとんど誰も幸せではなかったからだ。そして私はずっと「異端」をつらぬき、幸いなことに迫害されることもなく、この年まで生き延びてきた。でも最近の私は昔よりはるかに人の言うことを聞く、真面目に働くよい子になっている(笑)。

ということで、権力者対異端の戦いは、現代の時代でもずっと続いているのだ。

さて、このアニメの登場人物たちの中で、私にとって一番興味深く、共感を感じたのはオクジーである。彼は下級国民の出身で無学で文盲で、「教会の言うことを真面目に信じていれば、死後天国へ行ける」と心から信じていた人間だ。ところが、運命によって地動説を研究する人たちと出会い、仕方なくその流れに巻き込まれてしまう。誰にバカにされても決して怒ることなく、素直に従う青年。視力が抜群によく、剣が強いので、その能力を生かして、縁の下の力持ちとなって、地動説研究者を支える。研究者たちの影響で文字の読み書きを学び、最後には地動説について本まで書くという成長ぶりだ。

第12話 『俺は、地動説を信仰してる』では、オクジーの素晴らしい言葉の連打が胸を打つ。彼は、こっそり地動説を研究している修道士バディー二の下働きをしているが、二人のところへも異端審問の魔の手が伸び、二人が最後の別れの挨拶をするときの会話だ。

他人のことなど一切配慮せず、自らの野心のために地動説を研究してきたバディー二が、「私はみすみす情報を(他人には)渡さない」と、地動説の研究はあくまでも自分だけのものと主張する姿に、オクジーは珍しく異論を唱える。

「他人を排除すると間違いに気づきにくくなるのではありませんか? そしてそれは研究にとってはよくないのでは?」

「キャスト伯(←天動説の権威)は、自分が間違っている可能性を信じ、受け入れました。自からが間違っている可能性を肯定する姿勢こそ、学術や研究には大切なのではありませんか?」

「第三者からの反論が許されないなら、それは信仰です。反論してもらうためには他人が必要です」

「天動説と地動説などの対立が現実を前へ向かわせるのです」

珍しく自分に反論するオクジーの言葉は傲慢なバディー二のハートにも響いたようで、二人のハートの触れ合いは最後の美しい悲劇へとつながっていく。

そしてオクジーは、バディー二が逃げる時間を稼ぐために、そして地動説という自分の信仰のために、死ぬ覚悟をして異端審問官と戦う。

信仰と科学の違い、なかなか考えさせられるエピソードだった。

第12話について詳しく解説したサイト



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