覚醒と病気 ― 2018年12月03日 16時37分22秒
「神の実験室通信88号」の中で私が書いたことについて、少し前に質問をいただいた。
(「神の実験室通信」のバックナンバーは下記に掲載されています)
その通信の中で私は、「自分の病気も治療できない人の覚醒は完全ではない。だから、癌で死んだニサルガダッタ・マハラジやラマナ・マハルシなどの覚醒や教えは完全ではない」という考えには同意しないと書き、それに対して私のその反論の詳細を聞かせてほしいというものだ。
正直なところ、ニサルガダッタ・マハラジやラマナ・マハルシ、あるいはその他のどんな賢者やスピリチュアルな先生の覚醒や教えが完全ではないとか、彼らは悟っていないとかいるとかという議論は、本当は私にはどうでもいいことなのだ。
でも質問をいただいたので、本日はあえて反論を書いてみようと思う。
まず、一般的な話として、「自分は絶対に病気にならない」とか「病気になっても絶対に自分の力(あるいは何かの力)で直す」 という超強力な信念を人がもつなら、たぶんそうなるのだと思うし、それは覚醒とはほとんど無関係な信念の問題だ。確かに強力な信念とか意志にはそういうパワーがある--これまでの人生で様々な人たちを見てきて、一般的にはそういう傾向があると思う。
しかし、こうも思うのである。「絶対に病気にならない」 とか「絶対に病気を直す」 という信念を聞くとき、「その信念を維持するにはかなりの努力が必要かも」と。
そもそも非二元・覚醒系の教えでは、「私は1個の肉体ではない」 が教えの基本であり、そうであれば、1個の肉体が病気だろうが、健康だろうが、あんまりたいした意味もないだろうし、病気だからといって、あるいは病気で死んだからといって、その人の覚醒が不完全だとか教えが不完全だということにはならない。仏陀は食中毒で死んだというのが定説であるが、であれば、仏陀は食中毒も治療できなかったので、彼の教えも覚醒も不完全だという話になってしまう。
非二元系の教えの「覚醒」の意味とは、人間と呼ばれている物体を病気にならないような完璧な物に仕立て上げることではなく、人や肉体というイメージや物体「からの目覚め」と言う意味である--少なくとも私はそう理解している。
非二元系の教えの「覚醒」の意味とは、人間と呼ばれている物体を病気にならないような完璧な物に仕立て上げることではなく、人や肉体というイメージや物体「からの目覚め」と言う意味である--少なくとも私はそう理解している。
「覚醒すれば肉体が病気にならないとか、病気で死なない」を突き詰めれば、さらにそれは肉体の不死への願望ともなり、驚くべきことに、「自分が強く信じれば、自分の肉体を不死にすることができる」という教えさえある。最近のことはよく知らないが、私が20代の頃、この種の教えが流行したことがある。ダグラス・ハーディングの「顔があるもの,顔がないもの」の本の中で、肉体の不死の教えに関する質問があり、ダグラスがそれに関して何と答えているかというと、「肉体の不死など、地獄である!」 というものだ。
特にニサルガダッタ・マハラジやラマナ・マハルシの病気に関して言えば、まずラマナ・マハルシは若い頃から肉体そのものにまったく無関心で、肉体を嫌っていたとも言える。ラマナの癌について、ダグラス・ハーディングが「存在し、存在しない、それが答えだ」の本の中で、ラマナの肉体無視のせいで、彼の肉体の細胞たちが反乱を起こしたのだろうという主旨の見解を述べている。彼の肉体無視の生活は、彼の覚醒とも教えとも無関係の彼の生まれもったプログラミングのせいである。
一方ニサルガダッタ・マハラジの咽喉癌はたぶん、バジャンやタバコなど、喉の使いすぎが原因ではないかと私は思っている。彼は晩年に自分を襲ったこの癌を治療する気がまったくなかったが、その態度は私にも理解できる。私の印象では、彼は自分の肉体を通じてやるべきことを全部やり終えたと思っていた感じだし、だから治療して寿命をわずかばかり延ばすより、肉体から早く解放されるほうがはるかによい--彼はそう思っていたことが「意識に先立って」の本からは感じられる。
話は少しそれるが、私がニサルガダッタ・マハラジの本を最初の読み始めた頃、私が一番ショックを受けたことは、彼のスピリチュアルな教えのほうではなく、彼が言った「世界には一定量の苦しみがあり、あらゆる人はその苦しみの配分量を割り当てられている」という主旨の発言だ。
苦しみの配分量(笑)って一体どういうこと?と思ったものだ。それまでに読んだほとんどのスピリチュアルな本にそんなことが書かれていたことはなかったからだ。スピリチュアルな本や先生たちは、いつも「愛、喜び、豊かさ、健康」など、ポジティブなことばかり語るのが定番である。
しかし、そのとき「苦しみの配分量」という話が私のハートを直撃し、私は自分が知るあらゆる人の人生、そして自分自身の人生も振り返って、「確かに、賢者の人生も含めてあらゆる人は一定量の不幸と苦痛を免れないのだ」と納得した。
「自分の病気も治療できない人の覚醒は完全ではない」という考え方はさらに、「人生に不幸や苦痛が起きたら、その人の覚醒は完全ではない」という考え方を生み、そこからさらに「もし自分が覚醒したら、その後の人生は幸福と幸運だけに恵まれるだろう」という愚かしい幻想も生む原因となる。
賢者も含めて、あらゆる人の人生は平等に幸福と不幸、幸運と不運、喜びと苦痛が割り当てられている。そして、老荘思想が教えるように、「人生万事塞翁が馬」、つまり、よいことは悪いことに変わり、悪いことは善いことに変わる--このことを理解すれば、私たちは不必要な不幸感に苦しまずにすむのだ。
ニサルガダッタ・マハラジの癌--それは彼に配分された最後の苦しみだったのかもしれないが、本人はそれを不幸だとも何とも思わず、むしろ「存在の驚くべき表現」みたいな発言をしている。彼が癌の苦痛の中、何年も死ぬ数ヶ月前まで真理を伝え続けた、むしろそのことが私には彼が本当に賢者の中の賢者だったと確信させてくれる。
前にも書いた話を繰り返すが、こんなことを書いている私も病気はイヤだし、まして病気の苦痛はもっとイヤなのだ。そこで私が実践することは、普段から常識程度の健康管理をやるだけである。今だってちゃんと病名のついているいくつかの持病をもっているが、痛くならないかぎり、基本は放っておく主義だ。もし苦痛がひどい重病になったら、そのときは、「苦痛の配分量が来たか!」と、私は泣いて受け止めることだろうと思う。
最終的にはこういった議論は、教えの好みの問題になる。「覚醒すれば絶対に病気にならないとか、病気で死なない」という教え(そちらのほうがはるかに人気がある)が好みの方はそういった教えに行けばいいし、人はそれぞれ自分が好きな教えを実践するだけである。
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コメント
_ ま ― 2019年01月14日 23時09分35秒
素敵な反論ですね✨
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