「マントラ」についてのあれこれ2020年04月04日 08時06分41秒

「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」(ラメッシ・バルセカール著)を購入・ご購読いただきました皆様、ありがとうございました。

今日は、下記のようなご質問をいただいたことに関連して、スピリチュアルな瞑想における「マントラ」について書いてみようと思う。

その質問とは:

「マハラジの弟子の一人、ラマカント・マハラジの本『自己なき自己』(アン・ショー著 ナチュラルスピリット発行)の中で、マントラ瞑想、マントラ伝授についての言及がありますが、ラメッシ・バルセカールもマハラジの教えに関して、マントラ瞑想、マントラ伝授について何か語っていますか?」

まず回答からであるが、私がラメッシの本を読んだかぎりでは、ラメッシがマントラ瞑想、マントラ伝授について詳しく語ったことはないと記憶している。

もちろん、私はラメッシの本を全部は読んでいないし、私の記憶をすり抜けたこともたくさんあるはずなので、他の本の中で、あるいは私の記憶に残っていないところで、彼がマントラ瞑想、マントラ伝授について詳しく語った可能性も絶対にないとは言い切れない。しかも、ラメッシはスピリチュアルと世俗の両方で非常に博学な人だったので、知識としてはマントラ伝授についても、それがどういうものなのか知っていただろうと想像する。

マハラジが一部の帰依者たちにマントラを与えた話自体はよく出てくる話だし、今回の「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の中にも:

「マハラジは彼らにマントラを与え、彼らの精神が知識を受け取るほど浄化されるまで、それを詠唱し、瞑想するように求めます。」(8真理の証明より)と書かれている。

私の想像では、ラメッシは弟子や帰依者にマントラ伝授はしなかっただろう、という感じがしているし、彼自身もマハラジからマントラの伝授はしてもらわなかっただろうと思っている。なぜなら、彼はほとんど「理解」して、マハラジのところへやって来て、「精神の浄化」の必要がなかったからだ。だからこそ、彼はわずか3年間でマハラジの教えすべてを吸収し、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」を書くことをゆるされたのだ。

ここで私自身のマントラ瞑想体験を書いてみると、人生で一番最初にやった瞑想がTM瞑想(超越瞑想)で、私が20代の頃、かなり流行していた。たまたまTM瞑想の本を読んで、瞑想に興味がわき、東京の本部へ行って、マントラを数万円で購入した。「マントラを購入」と言う言い方がふさわしいかどうかわからないけれど、私の場合は、別に「伝授」とかそんな感覚ではなく、「マントラを買った」という感じだった。そのマントラでちょうど一ヶ月間、毎日30分ほど瞑想をやって、別に可もなく不可もなくという感じだったので、私は退屈して(笑)、それ以後そのマントラを使って瞑想することは二度となかった。

当時、TM瞑想についてよく聞いた話は、アメリカでは医学の現場で不眠治療にTM瞑想は使われるという話で、つまり、TM瞑想はアメリカの正統医学でも認められている瞑想である、ということだった。確かにマントラ瞑想は強制的に思考を停止する効果があるので、寝る前に思考がまわりすぎて眠れない人たちには有効にちがいないと、納得した。が、若い頃から今まで、私は不眠症とはほとんど無縁なので、体に痛みなどがないかぎり、眠るために瞑想を必要としない体質だ。

私がそのとき「マントラ」についていだいた最初の疑問は、もし思考を止めるのがその目的なら、なぜ、特定の、しかも古代のインドの聖なる言葉(と言われるもの)でなければならないのか、日本語や英語の平凡な言葉ではダメなのかというものだった。

そこで、私は実験してみたことがある。ごく平凡な言葉、たとえば、「コーヒー」という言葉をマントラにして瞑想してみても、同じように思考は止まるのだ。思考を止めることが目的であれば、どんな言葉でも可というのが私の結論だった。

ではなぜ、マントラ瞑想において、特別な言葉、音であることが必要なのか? しかも一人ひとり用の特別な言葉、音であることが必要なのか?――正直なところ、私はいまだこの点に関して明確な理解を得ていない。

マントラに関して、私がもう一つ長い間、気になっていることは、「般若心経・金剛経」(岩波文庫版)の中に出てくる記述だ。この本の「大神咒(マハー・マントラ)」の説明にこう書かれている。

「マントラは、バラモン出身の修行僧によって教団にもちこまれ、ブッダは初めこれを禁止したが、後に毒蛇・歯痛・腹痛等を治癒させる呪は使用を許可した」(ページ34)

この記述から読み取れることは:

*仏陀は、マントラの使用は自分の教えとは合わないと思っていた。
*様々なマントラにはそれぞれの用途と効能がある。


もしマントラで、歯痛・腹痛、その他等を治療することができれば、とても便利なはずだ(笑)が、だったら、仏陀はなぜ最初、禁止したのだろうか?――これに関しては、心身の治療を求めて特定のマントラを唱えることは、たぶん仏陀の教えとは合わないだろうなあという、ぼんやりとした感覚が私にはある。

マントラには本当に様々な種類のものがあるようで、昔、知人が、お金が入る効果があるとされるマントラが書かれた色紙をおみやげにくださったことがある。その人はあるワークショップで販売されていたものを友人・知人へのおみやげにたくさん買ったそうだ。せっかくもらったので、しばらく壁に貼って、たまに唱えてみたが、たぶん熱心ではなかったため、効果もなく、いつのまにか色紙も捨ててしまった。

話をニサルガダッタ・マハラジのマントラ伝授に戻そう。マハラジは人の理解・知性の程度を見抜くものすごい眼力があったことがうかがえるので、彼が自分の帰依者たち一人ひとりに合うマントラを伝授したことは確かなことであろう。

私が思うに、「伝授」とは「帰依」とセットで、つまり、マントラ伝授が効果をもつためには、そのマントラを伝授した人への帰依(信頼)がなければならないだろう、ということだ。マハラジも、マントラを求める人に誰かれかまわずマントラを伝授したわけではないだろうし、自分への帰依(信頼)がある人だけに伝授したのではないかと思う。

だから、もし誰かからマントラ伝授を受けたいと思うなら、その点も考えるべきことだ。「私はこの人とこの人の教えに帰依できるのかどうか」と。

私自身は伝授とか帰依とか、そういうことを面倒に思うタイプなので、マントラ瞑想としては、今は、アメリカの賢者、ロバート・アダムスが、誰でもやることができるワークとして提唱したIAM瞑想をたまにやる程度で、皆さんにも推薦している。(ロバート・アダムスの本も今後刊行予定です)。やり方は下記に書いています(IAMというマントラは、すべての人が使用可能である)。



一般に公開されている「大神咒(マハー・マントラ)」としては、仏陀が2500年前にすでに明らかにしていて、それは般若心経の最後に書かれている。

訳(岩波文庫版より)

それゆえに人は知るべきである。智慧の完成の大いなる真言、大いなるさとりの真言、無上の真言、無比の真言は、すべての苦しみを鎮めるためのものであり、偽りがないから真実であると。その真言は、智慧の完成において次のように説かれた。

往ける者よ、往ける者よ、彼岸に往ける者よ、彼岸に全く往ける者よ、さとりよ、幸あれ。

(羯諦  羯諦  波羅羯諦  波羅僧羯諦  菩提 薩婆訶) 
ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテ―、ボーディ スヴァーハー


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イエス・キリストからのアドバイス2020年04月12日 08時45分37秒

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3月、4月は、普段よりさらに引きこもって本を読んで、昼寝をしている。世の中が非常事態のときに、いつもにもまして大事だと思うことは、日々普通に暮らすこと、そしてその普通で平凡な今日をありがたく思い、平和に楽しむということだ。

もし家族がいるなら、その存在を喜び、仕事があるなら、その仕事を喜び、三食食べることができることを喜ぶ――今日あるものは、ひょっとしたら、明日にはないかもしれない……

春は、花を眺めるのも楽しい。母と散歩の途中、母が自宅や近所の花壇の花に目をとめて、「きれいだね」と言う。私も無言でうなずき、花の美しさ(神の顕現)に改めて目覚める。

「今ここに在るものを喜び(受容し)、ないものを嘆かない」

もし皆さんが「運」というものに興味があるなら、これはどんなときにも人生の運のよくする最強の方法である。特に今のように、世の中に不安と恐怖心が蔓延しているときこそ、非二元系スピリチュアルな道にいる私たちは日ごろ学んでいる霊的知恵、特に「受容」を実践するべきである。

最近よく読む新約聖書から、イエス・キリストのアドバイスを紹介すると:(特に今のような時期、「マタイによる福音書」5書から7章はお勧めである)

「わたしはあなたがたに言う。悪(人)に手向かうな」(5章39)

「わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、(あなたがたを)迫害する者のために祈れ」(5章44)

人類は今、自分たちを迫害しているコロナ・ウイルスという悪(敵)と戦っているような状況である。しかし、イエス・キリストの「悪に手向かうな」の意味は、心の中では敵を憎んではいけない、というより、さらに言えば、そもそも心の中では「敵」を作ってはいけないという意味である。

先日も書いたように、常識程度にコロナ・ウイルス対策をし、世の中の状況に過剰に反応しないことである。私の経験と理解によれば、状況を嫌ったり心配したり、憎むほど、自分が嫌ったり憎んだりする状況が寄ってくる確率が高くなる。

私は祈る体質ではないので、「敵(コロナ・ウイルス)」のために祈ったりしないが、代わりに最近は、ウイルスについて理解しようと思い、多少勉強してみた。(それについては次回に書く予定です)。

その他瞑想すべき、イエスの言葉を紹介すると:

「空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか」(6章26)

「まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのもの(注――必要な物事)は、すべて添えて与えられるであろう」(6章33)

「だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である」(6章34)


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ウイルスはスパイ?(笑)2020年04月30日 08時13分30秒

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コロナ・ウイルス感染拡大の影響を受けている皆様、お見舞い申し上げます。


ウイルスは、やっかいで、かつ興味深い生命体である。

生物学者や生物進化論などの専門家が書かれた記事や本を参考にして、ウイルスについて興味深い点を書いてみると:

*ウイルスとは生物と無生物の間のような生命体である。
*ウイルスはエネルギーを作れず、寄生しなければ増殖できない。
*ウイルスは非常に多くの種類があるが、人類に害を為すのはわずかである。
*ウイルスは生物の進化に不可避の一部である。

最近目にした文章で特に興味深かったのは、生物学者の福岡伸一さんの、「福岡伸一の動的平衡 ウイルスという存在」(朝日新聞4月3日版)という文章だ。

福岡さんが書いたことの一部を抜粋してみると:

「ウイルスは宿主の細胞内に感染するわけであるが、それは宿主側がきわめて積極的に、ウイルスを招き入れるとさえいえる挙動をした結果である。(中略)

高等動物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた。遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。それが家出して、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れたのだ。なぜそんなことをするのか。それはおそらくウイルスこそ進化を加速してくれるからだ。親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。しかしウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる」


私がこの文書を読んで、思い浮かんだイメージは、ウイルスとは情報をあちこちに伝える「スパイ」のようなものだということだ。

それは人類の祖先が、「お前、しばらく外の世界に出て、外の世界の情勢がどんなか、どんな変化が起きているのか、これからどんなことが起きそうなのか、探って来てくれ」と言って、遺伝子の一部をスパイとして外へ送り出したようなものだ。しかし、ウイルスは自分の力では生きていくことができないので、あちこちの生物に寄生するわけであるが、中には寝返って、敵(他の生物)のスパイになって戻って来て、人類への破壊工作(笑)をするようになるものがいる、というような感じである。

現在のコロナ大惨事は、自分から出ていったスパイ(遺伝子)が自分の敵になっているとも知らずに、昔の宿主(人類)が優しく迎え入れてしまった結末という解釈も成り立つ。

この「寝返ったスパイ」というたとえは、それほど荒唐無稽なイメージではないと思う。「破壊する創造者」(フランク・ブライアン著 早川書房)の中に、なぜある生物の中では無害に共生していたウイルスが、他の生物に対しては攻撃的になるのかの事例と理由が書かれている。

その理由をかいつまんで言えば、Aの生物とBの生物が、生態的にライバル関係にあるとき、Aの中では共生していたウイルスがBに対しては致死的なウイルスに豹変するという。まるでAが、「Bは俺たちの生存には邪魔だから、殺してこい」と言って、自分の中で共生していたウイルス(スパイ)を敵(B)に送り込むような感じだ。

「破壊する創造者」の中で書かれた事例は、AとBは同じ生物の別の種(2種類のウサギやサル)であるが、もし他の野生動物が人類を自分たちの生存のライバルと見なすなら、他の野生動物とは平和に共存していたウイルスが、人類を攻撃することもおおいにありうることだろうし、今回の致死的コロナウイルス出現と人類への攻撃は、地球の野生動物連合の意志かもしれない。「もう俺たち(野生動物)が生き延びるためには、人類には死んでもらわなければならない!」というような。

最近読んだ、著名な霊長類学者ジェーン・グドール(Asahi Weekly4月26日版)のインタヴューで、彼女は、人類が自分たちの経済活動を広げた結果、野生動物たちがより狭い領域に追いやられ、つまり、今流行の言葉で言えば、「密」の状態に追いやられた結果、種から種へ、そして家畜へウイルスが蔓延するようになったという主旨の発言をしている。そして、さらにその背後に、「自然を破壊しなければ生活できない、貧しい国の貧しい人たちの問題がある」とも指摘している。

人類というか人間は、当然自分の観点からしか自然や地球全体を見ることができない。しかし、人類は地球の唯一の生物ではないし、単なる自然の一部にすぎない。他の動植物やウイルスの観点、あるいは地球全体の観点もあるはずだ。人類は快適に生き延びたいと思っている。そしてその他すべての生物だって、生き延びたいと思っているにちがいない。それぞれの種が生き延びることができるかどうかは、それぞれの種がコントロールできることではなく、究極的にはすべての生物が寄生している地球全体の意志によるのだろうと私は思う(すべての生物は地球に寄生している)。

今回のコロナ大騒動では、あらゆる立場の人がそれぞれの立場で発言したり、提言したり、文章を書いている。政治家の発言には、「ウイルスを撲滅」「ウイルスとの戦い」「ウイルスに打ち勝つ」というような勇ましい言葉が並び、彼らは立場上、そういう表現を使わざるをえない。しかし、生物学者、生物進化論の専門家は「ウイルスとの共生」という言葉を使う。地球と生物の長い歴史を研究してきた彼らは、人類は決してウイルスとの戦いに勝てないこと、そしてウイルスは人類の進化にも寄与してきたことを知っているからだ。

福岡さんの文章は下記のまとめで終わっている。

「ときには、ウイルスが病気や死をもたらすことですら利他的な行為といえるかもしれない。病気は免疫システムの動的平衡を揺らし、新しい平衡状態を求めることである。(中略)

かくしてウイルスは私たち生命の不可避な一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない」

進化論的に言えば、「ピンチのあとにチャンスあり」ということで、ウイルスの攻撃に耐えて生き残った種は、そのあと繁栄するというシナリオがだいたいはあるようである。だから、人類という種も、それぞれの国家も個人も、今回のピンチをチャンスに変えることができれば、より進化した形態を創造できる可能性もあるということだ。

しかし、コロナ惨事で精神的にも肉体的にも財政的にも疲弊したあとで、「やらないほうがいい大運動会(オリンピック)」をあくまでも強行しようという日本国に、そんな変革のエネルギーが出てくるのかどうか……


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