北京オリンピックの聖火リレーが、世界のあちこちで妨害されている。私がこのニュースを聞いて最初に思ったことは、ああ、いよいよ中国の時代なんだなあということである。20世紀の後半からつい数年前まで、国際的に反〇〇運動が起こるといえば、それは反米国運動ときまっていた。なぜ反米運動かといえば、それは世界中が、アメリカこそが、世界の覇権を握っていて、アメリカが世界の一番の政治経済大国だと信じていたからである。
反〇〇運動というのは、運動する人たちが、敵(アメリカとか中国)の力を認めないかぎり、起こりえないことなのである。相手が、反対運動する価値があるだけ、巨大で強力であると認識しているからこそ、反対運動は盛り上がるわけである。だから、たいてい、反〇〇運動は、運動者の意図とは反対に、敵にエネルギーを与える結果となる。
現在、聖火リレーの行く先々で、反中国運動が起きているのは、それは世界が、これからの世界の覇権は中国が握り、中国こそ21世紀の政治経済大国だと信じ始めているからである。
かつての日本がそうであったように、アジアでのオリンピック開催というのは、その国の経済がこれから急激に上昇しますよ、というような合図のようなものだ。15億の中国国民が、60年代、70年代の日本の10倍くらいの熱気で、豊かになる希望と願望をいだいて、がむしゃらに走り始めているのである。
今、15億の民のその熱気に勝てる国は、世界のどこにもない。
そして、経済政治帝国は、必ず領土や支配領域を異常に拡大したがる習性があり、騒動をあちこちで引き起こす。帝国は、ほんの少しでも自分の支配領土が減るのがイヤなのであり、常に拡大しないと気がすまない。
これからの世界の政治経済映画では、世界の覇権を手放したくない沈みつつある旧帝国船(アメリカ)と、国民一丸となって上昇しようという新帝国中国とが、日本という国をはさんで、米中政治経済戦争を繰り広げるのである(現在のアメリカの頭の中では、まだ、日本、韓国、台湾までが、自分たちの支配領域となっている)。
例のごとく優柔不断な日本は、両国に利用されつつ、しかし、まあ、最終的には、中国と仲良くして、なんとかこれからの経済的苦境を乗り切ってゆくだろうと、私はそんなふうに予想している。
中国は4千年に及ぶ歴史を誇り、その大部分をアジアの盟主としてきた国である。それが復活しつつあるのである。欧米諸国が束になってもかなわない伝統の国なのだ。
この事実を考慮に入れないで中国に接するのは間違いと思う。