『ピダハン』 ― 2026年10月04日 09時06分10秒

[TK様のご質問への答え]

「申し訳ないですが、テスラが考えたエネルギー・システムについて、本に書いてあったことはもうほとんど忘れてしまったので、ご興味がありましたら、本をご自身で読まれるか、ネットで調べてください」

[Youtube動画]

今、『ピダハン』ダニエル・L・エベレット著(みすず書房)という本を読んでいる。もう昔に出版された本で、出版された当初けっこう話題になり、私も読んだことがある。今回は、自分が書く予定の本(ようやく次の本を書く気が起こったが、完成は見通せない)の参考文献として再読している。

本書は、言語学者でキリスト教の伝道師だった著者が、地球上のほとんどの民族とはまったく異なる言語体系と文化をもつ南米アマゾンの民族、ピダハンととともに長年暮らしたいわゆる文化人類学的記録だ。とはいえ、学術書というわけでもなく、とても面白く生き生きとピダハンの生活と、著者の彼らへの愛が伝わる。

ピダハンの生き方は、高度に発達した物質文明に生きる私たちの真逆だ。本書によれば、ピダハンは:

*食料を保存しない。
*個性と創造性、プライバシーを重んじない。
*罪の観念がない。「心配」という言葉がない。
*赤ちゃん語がない。全員が共同体に責任を負い、全員が共同体から世話をされる。
*暇なときは、いつもおしゃべりしている。
*自分たちは他の文化よりも優位なので、他の文化の真似をする必要がない。
*未来の計画を立てない。
*昔の話、未来の話をしない。
*直接体験以外話さない。
*左右の概念がない
*知識の価値は、それが真実かどうかではなく、それが役に立つかどうかで決まる。

彼らは何百年も同じ生活スタイルを変えず、他の文化をうらやましがらず、その日暮らしをし、過去のことを後悔したり、未来を心配したりせず、5時間くらい働いてあとの暇な時間はみなでおしゃべりしている。文明人が患う精神的肉体的病気もなく、支配・非支配の階級もなく、日々平和に暮らしている。性に関しては、いちおう「結婚(カップル)関係みたいなもの」があるが、文明の国々ほどタブーはない。男たちの好きな遊びはお互いの性器を引っ張り合う(!?)ことだ。

彼らはいつも笑い合って、子供も大人も非常に幸福に生きている。一方で、彼らの生活は危険にも満ちている。ピラニア、アナコンダなどの危険な生き物に囲まれて生きている。注意を怠るとすぐ死ぬ環境でもある。でも彼らはその危険を受け入れて生きている。

彼らは物欲がない聖人的な人たちというわけでもなく、文明人のもっている便利もものは好きで、著者に、「今度来るときは、あれこれもってきて」とねだる。しかし、彼らはそれらを自分でまねて作ろうとか、自分たちの生活を改善しようという意欲がゼロで、創造性や個性を重んじない。

過去のことを後悔したり、未来を心配したりせず、今ここだけに集中して生きているピダハンたちは、まるで非二元の教えを民族全体で実践している(笑)ような感じである。

地球の中で、ピダハンのようないわゆる未開民族以外の地域と国ではすべて、個性、創造性、所有、プライバシーが重んじられる。「個性、創造性、所有、プライバシー」という言葉は非常に肯定的的響きがあるが、しかし、地球のほとんどの地域が患っている病気(経済格差、貧困、各種病気、争い、環境問題)は、「個性、創造性、所有、プライバシー」を重んじる負の遺産なのだ。「個性、創造性、所有、プライバシー」という価値が、不平等と格差を増大させるといってもいい。それでいながら私たちは「不平等は悪い」もので、平等をめざすべきだとも思っている。

一方で、建前的には「平等」を重んじ、一方で「個性、創造性、所有、プライバシー」を重んじる、両立しえない二つのものを目指す絶対矛盾が、いわゆる文明国に住む私たちの一番のストレスなのかも、と本書を読みながら思ったしだいだ。もちろん、物質文明の恩恵の中で生きている私たちはピダハン的生活はできないので、文明のストレスに耐えながら生き延びるしかない。

さて、『ピダハン』の著者の本当の仕事は、聖書をピダハン語に翻訳し、彼らにキリスト教を布教することだった。しかし、彼はそれが不可能だということを悟り、ついには、自分の長年の信仰も捨て去り、家族も崩壊するという悲劇的な結末を迎える。

私は思うのだ。どうしてキリスト教って、お節介で、傲慢なのかと。ピダハンのような人たちは文明国のキリスト教徒たちよりはるかに幸福で満ち足りた生活をしている。だから、彼らにキリスト教は必要ないのだ。彼らは著者に言う。

「俺たちはお前が好きだが、イエス(キリスト)は欲しくない。女は複数欲しい(笑)」



[昨年出版された本]

*『頭がないということ――禅と明白なことの再発見』発売

(ダグラス・ハーディング著  ナチュラルスピリット発行)

定価:1,870円(税込み)ページ数:163ページ




*『自己覚醒へのマスター・キー』


ニサルガダッタ・マハラジの師の本、初邦訳!

価格:本体1800円+税
ページ数:176ページ


[電子書籍版発行]

*『頭がない男』電子書籍版

価格:1,980円(税込み)

知られざる天才哲学者、ダグラス・ハーディングの生涯と哲学をイラストと文章で描いたグラフィック伝記。


*『猿笑非二元講座』

Youtube で公開している『猿笑(さるわらい)非二元講座』の電子書籍版。



[2023年に出版された本]

*ジョエル・ゴールドスミス著『静寂の雷鳴』

本体価格:2,380円+税
本文ページ数:333ページ
発行:ナチュラルスピリット



[その他の本]

*『仕方ない私(上)形而上学編――「私」とは本当に何か?』アマゾン・キンドル版(税込み定価:330円)

目次の詳細は下記へ。

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*『仕方ない私(下)肉体・マインド編――肉体・マインドと快適に付き合うために』アマゾン・キンドル版(税込み定価:330円)


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