創造(構造)と破壊(混乱=カオス) (1) ― 2017年01月23日 07時45分23秒
皆様、あけましておめでとうございます。
今年も、適当にゆるくブログを書いていく予定ですので、お暇なときにお付き合いください。
今年は、久しぶりに科学の話から書こうと思い立った。
昨年、何度か東京の街(新宿や渋谷)へ行って感じたことは、2020年の東京オリンピック開催の影響なのか、建築工事(オフィスビル、ホテルの建築、道路工事など)が非常に多いということだ。そして、私が住んでいる首都圏の街でも、ここ5年くらい新築マンションの建築が続いている。
素人の素朴な感覚から言うと、「人口が減っていく時代に、おいおい、そんなに新しい箱物をどんどん造って大丈夫なのか?」 という感じである。
箱物(コンクリート製の建物) の建築現場を見かけるときに、よく思い出す文章が、イギリスの著名な化学者であるピーター・アトキンスの本、「 エントロピーと秩序 」(日経サイエンス社)の中の次の文章だ。
「エンジンは、レンガ、ブロック、鉄骨などからビルをつくりだすことができる。しかし、これは『破壊』の結果としてできあがったのである。」 ( 115P「5章カオスの力」より)
「構造の一様性は、ほかのどこかがその犠牲として乱雑な状態になって、はじめて現れる。世の中のある部分に構造ができて一様性が現れるのは、それと同時に、ほかのところが大きな規模で乱雑状態へ崩壊していく場合である」(274p9章「カオスがつくりだす模様」)
以上の有名な熱力学の法則(一般的な言葉では「エントロピーの法則」と呼ばれるが)をもう少しわかりやすく言えば、
以上の有名な熱力学の法則(一般的な言葉では「エントロピーの法則」と呼ばれるが)をもう少しわかりやすく言えば、
何かの構造物を造るためには、破壊(混乱=カオス)が必要である、ということである。つまり、じゃんじゃん箱物を建築するためには、それ以外のどこか他の場所でじゃんじゃん破壊(混乱)が必要ということである。
もちろん、創造(構造建築)と破壊(混乱)のバランスが取れていれば、別に問題はないわけで、創造(構造)→破壊(混乱)→創造(構造)というサイクルは自然のサイクルでもある。
しかし、日本の建築構造物に話を限れば、日本全国で使われていない非常に多くの老朽化したビル、人が住んでいない家屋が何もされずに放置されている現状を見ると、建築構造物の創造と破壊のバランスが取れているとは言えない感じである。
本当は、人が使っていない老朽化した建物・家屋をまず壊すか、リノベーション(全部を壊さず、必要なところだけ新しくすること)するほうが順番が先で、それから必要な新しい建物を造るべきなんだと思う。しかし、新築の箱物を造ることはお金が儲かるので、すぐに事が進行するが、老朽家屋の破壊やリノベーションは時間がかかり、お金も儲からないので遅々として進んでいないようである。
この日本の建築構造物の創造と破壊のアンバランスから予想されうることは、人間が創造と破壊の適切なバランスを造らないとしたら、自然がそれを無理やりやる可能性が高くなるということだ。つまり、災害(自然災害、人為災害)等による破壊がより起こりやすくなるということである。
科学者は人間活動のアンバランスについて、熱力学の法則の観点から次のように警告する。
「自然界では、温度が上がろうとすると、上がりすぎないように、コントロールが働きます。ある生物が増えすぎると、集団自殺なでも含め、その数をコントロールする力が働きます。自然界はいつでもアクセルとブレーキを操っています。
人間が本当に賢ければ、この自然界の法則の意味を理解した上での、アクセル操作とブレーキ操作ができるはずですが、人間もどうやら自然の法則に埋没しているようで、自分達のやり過ぎを自然によってきつく制御(叱責)されるまでは、気づくことがないのかも知れません。」 (「熱力学で理解する化学反応のしくみ」182p平山令明著 講談社発行)
この創造と破壊のバランスとアンバランスという観点は、非常に多くのことに応用できる考え方である。
たとえば、「動物園から神の王国へ」の2部でも書いた話であるが、日本も含めて先進国では、高齢化が進んでいる。それは、医学、福祉の発達のおかげで、人が簡単に死ななくなって(死ねなくなって)いるからである。そのため、破壊(死)が不足するために、よって生(誕生)も不足に陥っている。少子化(子供が生まれない)という日本の現実は、子供をもつかもたないか、生むか生まないかという個人の意志には本当は関係なく(見かけはそう見えるかもしれないが)、人間構造物の単純なエントロピーの問題、そして日本という国の領域におけるお金・時間の資源配分の問題なのだと私は思っている。
おそらくあと10年くらいして、日本の少子高齢化の問題がもっともっと深刻になるとき、この国は財政的な理由から、安楽死や胃瘻の是非を問わざるを得ないときがくるだろうと思う。
そんな現状で、日本のような老人国が運動会(東京オリンピック)をやる体力的財政的余裕があるとも思えないし、東京オリンピックの開催をめぐってはトラブル続きで、先行きの暗雲がしばしば暗示されてきた。しかし、もう後戻りもできず、現在日本はオリンピックという名の構造物をかなり無理して造ることに邁進している。
その結果は、いっそうの混乱(カオス)……老いた日本には、過激な運動後の体の疲労、痛みのように感じられるだろうが、大規模な混乱からまた新しい時代に合ったシステムや構造が生まれるなら、それもそれでよいのかもしれない。
人間は、 「自分達のやり過ぎを自然によってきつく制御(叱責)されるまでは、気づくこと」ができない生き物……いつも痛感させられる事実だ。
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