ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(6)2020年02月29日 14時20分14秒

〔お知らせ〕

*予定していました、3月15日、3月20日の会は開催中止です。

*Pointers From Nisargadatta Maharajは、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」(ラメッシ・バルセカール著 ナチュラルスピリット発行)というタイトルで、3月中旬発売予定となりました。本体価格:2,550円(用語解説と訳者あとがきも含めた本文ページ数、378ページ)

目次は下記のサイトに掲載してあります



本書、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」を読んでいると、うっかりすると、これがラメッシ・バルセカールの本だということを忘れてしまいそうなくらい、ラメッシはマハラジと融合してしまっている。

本書についての最後のブログは、以前にも何度か書いたが、著者であるラメッシ・バルセカールについてである。

初めて彼のサットサンに参加したとき、彼の自宅でのサットサンがあまりに心地よくて、彼のサットサンにずっと通うために、日本の生活を引き払って、ムンバイに引っ越したいと一瞬は思ったほどだった――ちょうどストレスの多い時期で、自分を取り巻いているすべてが嫌になって、日本脱出が魅力的な現実逃避に思えた。けれど、歩いているだけで、呼吸困難になりそうなムンバイの耐えがたい大気汚染を見て、その考えはすぐにあきらめた。

その最初に行ったサットサンの帰りの飛行機の中で、明確に降ってきたメッセージとは、非二元の教えに関して、ラメッシ・バルセカール以後にもはや私が会いに行くべき先生はいず、読むべき本もないということだった。それからもう一つは、「誰もありのままの自分以上にはなれない」、「誰もが神に造られたままの存在であり、あらゆる瞬間に神の意志によって生きている」というメッセージだった。

スピリチュアル系の仕事をしていると、どうしても自分自身にスピリチュアル的な自己イメージを与えがちで、こうあるべきという自己イメージを自分が満たせないときに、それが大いなるストレスになることがよくある。私がこの時期陥っていたストレスとはたぶん、そういう種類のものだった。

ラメッシのサットサンに参加して(彼とはほんの少し話しただけだったけど)、そのストレスがものすごく軽減したことがわかり、それだけでなく、突然、ラメッシの本を出そうという元気まで出て、彼の本を出すために次の数年間、奔走した。

ラメッシはマハラジとは違って、まったくグル風な人ではなく、本人もグルという自覚はほとんどなかったと思う。名前も本名のままだし、そもそも師の教えについて他の人たちに話したいという熱意さえ最初の頃はなかったようだ。「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」を書いた当時のラメッシ(60代前半)は、原書編集者も書いているように、まったく社交的な人ではなく、どちらかというと、引きこもり系「瞑想おじさん」(笑)というような感じの人であったことがうかがえる。

私がお会いしたのは、それから約20年後の彼が80代の前半の頃で、その頃はラメッシもずいぶん雰囲気が変わり、しかも(彼自身のごくプライベートなことに関すること以外)、質問に制限もかけないので、ほとんどどんな質問にも答えていた。彼は非常に気さくで、親しみやすく、そして普通の人であった。

私は最初のサントサンに行ったあと、ラメッシに非常に感激したので、当時の知り合いの人たちにラメッシを紹介し、中には実際、インドまでラメッシに会いに行った人たちもいたが、私ほど感銘を受けなかったようなので、やはり先生とか教えには人それぞれ縁とか相性があることを確信した。

今思い出しても、ラメッシのサットサンに参加したことは(トータルで15日間くらい)は、人生で最高に贅沢の日々だった。毎朝、ホテルからタクシーに乗り(毎日同じタクシーがホテルの前で待っていてくれた)、ラメッシのマンションの前に到着すると、そこにたいてい数人の人たちがマンションの門が開くのを待ちながら、世間話をしたり、タバコを吸ったりしている。

サットサンの30分前に守衛さんがマンションの門を開けてくれて、皆でエレベータに乗り込み、ラメッシの自宅がある階に到着。由緒あるこの高級マンションには、他のバルセカール家(ラメッシの兄弟)のご家族も住んでいたようだった。それから部屋に入って、ラメッシをしばらく待っていると、ラメッシが寝室かキッチンのほうからトコトコ歩いて来て部屋に入り、サントサンの開始――私が参加した当時で、一日だいたい20人から30人くらいだった。

それから約1時間半、色々な国から来た人たちが質問し、彼がそれに答え、最後はインド人の帰依者の女性が素晴らしい声でバジャンを歌うのに合わせて、参加者全員でバジャンを歌って、サットサンの終わり。そのあとしばらく、写真撮影をする人、インド風の挨拶をする人、欧米風のハグをする人、本にサインを求める人など、あらゆる人の要請にラメッシはにこやかに応じていた。

それから、一人であるいはそこで知り合った人たちと、近くのとてもおいしいインド・レストランでランチをして、午後はブラブラとムンバイの街を呼吸困難になりながら、歩きまわったり、ラメッシのマンションの近くにある、アラビア湾を臨む(誰も泳いでいない)高級プールで泳いだり、ホテルに帰って昼寝をしたりして、夜はホテル近くの安い食堂で、再びインド風夕食。ラメッシのサットサンは、私にとってはそんな天国のような日々だった。

私が二度目に行ったときに撮ったラメッシのサットサンの写真が下記に掲載してあります。


今、最後の校正もようやく終わり、ふと思ったことは、私は本書をとても「親切な本」と言ったが、その何重にもわたる詳細で親切な説明が、かえって読む人に混乱を与える場合もあるかもしれない、ということだった。また別の機会を作って、本書に中で使われている用語に関して、読者に???をたぶん与えるかもしれないものを取り上げて、改めて説明してみたいと思う。

さて、今年の1月に、ラメッシの夢を見た――観光ツアーでインドへ旅行に行ったら、最終日にラメッシがサプライズで登場し、でも別にスピリチュアルな講話をするわけでもなく、ツアーに参加していた子供たちと楽しく遊んだり散歩していたりした、というまったくたわいもない内容の夢であった。

でも、夢から目覚めたあと、とてもなつかしくて、うれしくなり、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の日本語版の出版をラメッシも喜んでいると、自分の物語の中で、私は勝手に思い込むことにした。

ということで、皆さん。「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の本は、値段が高いので申し訳ないですが、コロナ・ウィイルスの影響で外出を控えていらっしゃる方も多いと思いますので、そのぶん、本書に出費していただければ、ありがたく思います。


ニサルガダッタ・マハラジの教えに関する過去のブログ

2017年8月15日ニサルガダッタ・マハラジの教え
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/08/

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2017年9月22日ニサルガダッタ・マハラジの教え(3)
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2017年10月14日ニサルガダッタ・マハラジの教え(4)
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017年11月5日ニサルガダッタ・マハラジの教え(5)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/11/

2017年12月10日
ニサルガダッタ・マハラジの教え(6)
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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(5)2020年02月17日 15時29分56秒

3月中旬頃に、いよいよPointers From Nisargadatta Maharajが、ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」というタイトルでが発売されることが決まった。次回のブログで、価格、目次を公表する予定です。

先日の会でもお話ししたことであるが、ニサルガダッタ・マハラジの教えを理解するためには、彼がよく使う基本的言葉の正確な定義というか意味をまず理解することが重要であろうと、私は思っている。

たとえば:
意識、絶対、気づき、主体と対象、観念化(対象化)、意識の機能などなど。

(意識、絶対、気づき、主体と対象については、昔のブログに書きましたので、そちらをご参照ください)。

今日は今回の本にたびたび出てくる、「観念化(対象化)」、「意識の機能」という言葉について、簡単に説明してみよう。

「観念化(対象化)」とは;

今、皆さんがどこでこのブログを読まれていても、皆さんの目の前に一つの映像世界(→崇高な言葉を使えば、「顕現」)が広がっているはずである。もし人が何の思考も感情もなく、ただその映像(顕現)を眺めているだけであれば、それは「観照」と呼ばれる。その状態では、顕現はただ顕現であり、その中に分離も区別もなく、「私が」「○○を」「見る」という三つ組みがなく、ただ意識の機能として「見ること」が起こっているだけである。

しかし、それからマインドが介入してきて、その映像世界のある部分を区切って、「これはパソコン、これは同僚の○○さん、これはボールペン、これは電子レンジ、これは机、あれは上司……」と名前をつけて、区別する作業をおこなうとき、これがニサルガダッタ・マハラジが言う「観念化(対象化)」である。

その「観念化(対象化)」が始まるとき、私はそれぞれの対象物の人間的物体的主体となり、対象物との間に二元的関係を作る。

私が観念(対象化)を始める前は、私は一個の人間物体ではなく、顕現した意識そのものである。しかし、私の中で対象化が始まる瞬間、私はパソコン、同僚の○○さん、ボールペン、電子レンジ、机、上司に対する人間物体となる。

そして、肝心なことは、誰もこの観念化(対象化)を意志で止めることはできないし、観念化(対象化)が自動的に起こらなければ、私たちは人間として機能することはできない、ということだ。これができなくなる病気は、医学的には「認知症」と呼ばれている。

ニサルガダッタ・マハラジが言わんとしていることは、絶対的観点から見たら、人間的主体(相手から見れば、それもまた一個の対象物である)対対象物という関係は幻想であり、「私」は一個の対象物でも、一個の人間的主体でもありえないことに気づくことが、「目覚め」である、ということである。

人間関係で言えば、私たちは相手によって、「娘、息子、母親、父親、妻、夫、友人、恋人、部下、上司、友人」などなど様々な役割になるわけであるが、そのどれも(映像の中の)役割にすぎず、やはり「偽物」(今回の本では、この言葉がたびたび出てくる)である。私たちにできることは、それを役割にすぎないことを認識して、俳優を楽しく演じるだけである。

この説明で、「どうやって私たちは観念化を止めることができますか?」(前回のブログ参照)という質問に対して、マハラジがダメ出ししたか、理解していただけたと希望する。

そして、「意識の機能」:

顕現している意識は、すべて「視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚」の五感の機能と感情・思考の機能として、ただ起こっている。

今ここで、私の中で、過去数秒間に起こっていることを、一瞬一瞬止めて、言語化すれば;

視覚:机にパソコンとその周辺背景が見え、パソコンのキーボードの上に、二つの手が忙しく動いていて、パソコンの画面に文字が打たれていくのが見える
聴覚:キーボードを叩く音、外の工事の騒音、メールが来た合図が聞こえる。
味覚:特になし。
触覚がキーボードに触れている感触、その他、体の一部が、椅子、床に触れている感触が感じられる。
嗅覚:特になし
思考活動:今日はちょっと疲れているなあ→お腹すいた→ランチ、何を食べよう?→冷蔵庫に何かあったけ?→あ、今日はあとで郵便局へ行かなくちゃ、という思考の流れ。
感情活動:特になし。

今、この文章を書くために言語化(対象化)をしたが、実際は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚と感情・思考が、機能としてただ起こっているだけである。

そして、先ほども書いたように、この機能の流れには、「私は」「○○を」「見る(聞く、味わう、嗅ぐ、触る、考える、感じる)」という三つ組みがない、つまり、私たちが自分だと思っている(者やイメージ)は関わっていない(=個人的行為者というものは存在していない)。意識の機能は、個人的行為者もなく、自動的というか、自然に起こるだけである。

以上のような話を先日の会ではお話した。

わかってしまえば、とても科学的でシンプルな話で、だから私はマハラジの教えを「主体の科学」としてとらえている。今私が平凡に書いたことを、もう少しスピリチュアルな教えらしくロマンチックに語れば、ラメッシの次の言葉のようになる。

全気づきの完全な状態の中では、
それは、その気づきに気づいていません。
それから、意識がAum(オーム)の疼きへと動き出し、
そして、夢‐創造が始まります。
それは存在していることを意識します。
それは、「私は在るという性質」の愛の中に没頭して、
自分自身を二元性の中に表現します。

(今回の本の、付録3「全真実」という詩形式の文章の冒頭)

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本と出版の未来2019年11月02日 08時29分08秒

「シンプル道の日々――2007-2018」(アマゾン・キンドル版)本体価格500円



ラメッシ・バルセカールの「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)については、出版時期が決まりましたら、続きを書きます。

今日は、電子書籍などの新しい形態の読書について、最近考えたことを書いてみたい。

この夏から、私もついに自分の本をアマゾン・キンドル版にして、販売し始めた。

電子書籍自体は、5年ほど前からタブレットで読み始め、特に洋書は海外から送ってもらう時間とお金がもったいないので、最近はほとんど電子書籍版を読んでいる。

電子書籍は、わからない単語や言葉について、その場で辞書をひけること、関連情報をやはりその場で、ネットで調べられること、そしてたくさんの本を一つのデバイスに入れることができるので、本をまわりに置いておかなくてもいいなどの、紙の本にない利点がある。

今でもあえて言えば、紙の本のほうが好きだとは思うけど、でも電子書籍も慣れれば、けっこう便利で読みやすい。最近古いタブレットが壊れて、新しいものに買い替えたので、なおさらそう思うのかもしれない。

作る側・売る側のメリットで言えば、なんといっても在庫をかかえなくてもいい、ということに尽きる。印刷する前までの作業は紙の本と電子書籍はそれほど違わないが、そのあとの流通コスト、在庫管理コストは、電子書籍の場合は、紙の本より比較できないほど安い。

だからこそアマゾン社が、無料であらゆる人に電子書籍を販売できる機会を提供できるわけである。仮に一つ一つの本が、ほんのわずかしか売れなくても、それが多数となれば、利益がでる。そういう薄利多売のシステムになっている(ようである)。

ただし、たくさんの人が参加すれば、質はピンキリになるのは免れず、アマゾン社は細かいところまではチェックはしないようなので、買う側はリスクを覚悟する必要がある。洋書の電子書籍版を読んでいると、編集や翻訳(他の言語から英語に翻訳されたもの)がひどいものにも、たまに出会うことがある。

それでも、今まで大手出版社が出さなかった本も個人が出すことができ、たとえ少数の人でも、たとえ読者が一人でも読むことができるシステムは、著者と読者が出会う機会を増やし、出版の多様性が広がるという意味ではよいことだと、私は思っている。

それから、今はまだ多くの人に利用されてはいないが、これからの出版の形態としてプリント・オン・デマンド、つまり、注文を受けたときに、1冊ずつ印刷して、注文者に発送するという形態も、これからはもっと普及するだろうと思う。将来的には、個人用の安価な製本機能付きプリンターが出回ったら、ダウンロードした電子書籍に一人ひとりが自分の好きなカバーをつけて、自分オリジナルな紙の本を作ることも可能になるかもしれない。

現在、日本の町から本屋さんがどんどん減って不便で残念なことではあるけれど(私の散歩コースにあった書店が最近なくなったので、現在徒歩圏内に書店がついにゼロになってしまった)、新しい形態で人と本との関わりはこれからも続いていくことだろう。

で、「シンプル道の日々――2007-2018」(アマゾン・キンドル版)ですが、最初は、ブログの数があまりに多くなり、自分でもいつ何を書いたかがだんだん思い出せなくなったので、自分自身のために、探しやすいように目次をつけて、テーマ別に整理しようと思ったことから始まった。それから、せっかく目次もつけたので、誤字・脱字等を修正し、その他表現も一部直し、アマゾン・キンドル版にして公開しようと思い立った。

無料で提供しているものを有料にして売れるのかどうかとは思ったのだけれど、ひょっとしたら、シンプル堂にお小遣いをくださる奇特な方もいるかもしれないと希望し、有料版にすることにした。2007年から2018年までに書いたブログから約9割くらいを収録し、付録として2002年から2005年に書いた文章も10個ほど掲載してある。総文字数約42万字、普通の単行本の2冊分くらいの大作(笑)である。格安なので、よろしくお願いします。

大まかなテーマ(目次)は下記をご参照ください。




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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(2)2019年09月21日 08時13分22秒

ラメッシがどんないきさつで、Pointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の原稿を書き始めたのか――その詳しい経緯が本の「はじめに」で、ラメッシ自身の言葉で綴られている。

彼は元々は銀行家で、文書を書いて発表したいとか、作家になりたいという気持ちを人生で一度もいだいたことがなかった。

ところが、あるとき自分の内側から、マハラジの教えについて書きたいという抗えない情熱がやって来て、自分で考えて書くというより、書き取らされるという形で、ほとんど修正することもなく、彼はどんどん文章を書きためることになった――これはマハラジがまだ生きていた頃の話である。

ラメッシは、マハラジがスピリチュアル系の物書きをあまり好まなかったことをよく知っていて、またマハラジの教えについて公に書いたり、サットサンの外で話し合ったりしてはいけないというルールがマハラジのサットサンにはあったとも書いている。

だからラメッシはそれをマハラジにも誰にも言わずに、自分のための覚書として、将来発表することもまったく考えず、書き進めていた。

ところが、原稿が25ほどたまったとき、マハラジに黙ったままこのまま書いていていいのかどうか迷って、同じくマハラジの帰依者である友人に相談した。すると、ある日その友人がマハラジにラメッシの原稿の話題のことを持ち出すと、ラメッシはマハラジに叱られるかもしれないと恐れていたのに、マハラジはとても喜んで、祝福してくれたという話である。

そのあと、「アイ・アム・ザット私は在る」の編集者にその話が伝わり、彼は原稿を一読して、すぐに出版を決め、マハラジが亡くなった翌年1982年(ラメッシが65歳のとき)に初版が発行されている。

Pointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の構成を簡単に紹介すると:

まずラメッシが驚異的な記憶力で、マハラジの日々のセッションを再現した文章が57個あり、最後の57番目の文章は、マハラジが亡くなったときの様子と翌日の葬式の話で締めくくられている。

それからその他、付録として3つの文章が掲載されている:
*The Core of the Teaching(教えの核心)――ラメッシが改めて、彼自身の言葉でマハラジの教えの核心を要約している。
*A Note on Consciousness(意識についての覚書)――意識についてあらゆる角度から詳細に説明している。
*The Whole Truth(全真実)――詩的な形式で、最後の最後に「真理とは何か?」「私とは何か?」を綴っている。

私に言わせれば、こんなに「親切」で、至れり尽くせりの非二元の教えの本はないだろうと言ってもいい本である。まさに「パーフェクト非二元」――昔、大学受験業界にいた頃、参考書に「パーフェクト〇〇」というタイトルの本を時々見たことがあったけど、まさにそんな感じだ。

次回は、その「親切」の意味をもう少し詳しく説明してみよう。


[イベント]

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2019年10月27日(日曜日)「非二元の教えを生きる会」 (大阪府茨木市
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2019年10月6日(日曜日)「私とは本当に何かを見る会」 (東京)


2019年10月7日(月曜日)「非二元の教えを生きる会」 (東京)予約受付終了しました




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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(1)2019年09月07日 10時38分30秒

ラメッシ・バルセカールのPointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の本の作業が進行している。

ラメッシ・バルセカールには、すでに翻訳出版されている「誰がかまうもんか?!」、「意識は語る」(ナチュラルスピリット発行)のような、多くのいわゆる講話集(弟子たちが講話を集めて編集した本)と、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)のように彼自身が自ら書いた本がある。彼が自ら書いた本は講話集に比べると、より説明が詳細であるという長所と文章が難解で読みにくいという欠点がある。

私は、1980年代に発行された本書「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)と、Explorations into the Eternal( 永遠への探求)、Experience of Immortality(不死の経験)を「ラメッシの初期三部作」と呼び、長い間、バイブルのように読んだものだ。夜眠る前に読むと、あまりに英語が難解なので、長い時間読むことができず、数ページ読むと、すぐに眠りに落ちた。ラメッシのサットサンに行って、そこで出会った人たちとラメッシの本の話をしたとき、私が「ラメッシの本は睡眠薬ですね」と言ったら、彼らも皆笑って同意してくれた。英語が母国語の人たちにとってもラメッシ自身が書いた本は、読むのが簡単ではないのだ。

英語が難解という理由で、翻訳に関しては、この3冊を私が翻訳することはたぶん無理だろうと思っていた。ラメッシは話すときはそれほど難しい英語を使うわけではないのに(だから、講話集の英語は読みやすい)、書く英語はとんでもなく難しい。英語を母国語とする著作家の文章の中にだって、まず見ないような英単語まで出てくる。

ところが、(いつ頃のことかは忘れてしまったが)ラメッシの「意識は語る」の翻訳が終わったあとも、まだラメッシの本を翻訳し足りない気がして、でも別の講話集の翻訳はやる気が起こらなかった。それから、あるとき、「もしラメッシの本をまだやるなら、初期三部作の中のどれか1冊しかないだろう」と思い至った。それで、三部作の中で、一番読みやすく、説明もわかりやすく、しかもマハラジの一番リアルな姿が描かれている(と私が確信している)Pointers From Nisargadatta Maharaji「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)に決めて、翻訳に取り掛かることにした。

マハラジがラメッシにほとんど乗り移って書かせたとさえ言える本書を翻訳し始めたら、けっこう楽しくて、ラメッシの師への愛情と、ラメッシを通じて描かれるマハラジの魅力とパワーに、改めて心打たれた。

マハラジのように自ら本を書かない賢者の場合、本の中の賢者のイメージは、本を作ることに関わった人たちの編集の仕方によって、ずいぶん違うということを私はいつも感じてきた。私の勝手な印象では、「アイ・アム・ザット私は在る」の中のマハラジは力強いが高所から説いている感じがあり、一方「意識に先立って」の中のマハラジは少々弱々しく、厭世的ですらある。

しかし、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の中でラメッシが描くマハラジは陽気で、軽快で、数学者に匹敵するほど論理が冴え、そして遊び心に満ちている。たぶん、実際のマハラジはこんな感じの人だったのだろうと思う。

(翻訳は難攻したが)ようやく本書の出版(予定)にまでたどり着いて、喜んでいるというかホッとしているこの頃である。いや、まだたくさんの作業が残っているので、本当はホッとしてはいけないのだけど。

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2019年10月26日(土曜日)「私とは本当に何かを見る会」 (大阪府茨木市)
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2019年10月6日(日曜日)「私とは本当に何かを見る会」 (東京)


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「頭がない男-ダグラス・ハーディングの人生と哲学」
*定価:本体価格2,500円+税 *版型:B5版(フラカラー)183ページ*発行:ナチュラルスピリット
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「グルジェフ伝」2019年06月30日 16時23分55秒

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皆様、梅雨&暑中お見舞い申し上げます。8月の終わりまで、ブログをお休みします。


20代、30代に非常に影響を受けた教えとして、以前一度、グルジェフの教えについてブログに書いたことがある。

「グルジェフの教え」2016年2月2日



最近また、今まで読んでいなかったグルジェフ関係の邦訳本を読んでいる。その中でも最大のものが「グルジェフ伝」(ジェームズ・ムア著 平河出版社)で、邦訳で600ページもある大作だ。

1866年から1949年までのグルジェフの生涯が時代背景とともに非常に詳細に描かれている。彼は中央アジアで生まれ、フランスのパリで亡くなっているが、その間に旅した(移動した)距離と場所を見ると、ものすごい距離を移動している。時代は、ロシア革命、第一次世界大戦、第二次世界大戦の頃で、彼の人生はまさに「戦争時代をずる賢く生き延びた」人生だった。しかも、自分だけでなく、彼は弟子たちや家族を引き連れ、戦争という過酷な状況を貧相にではなく、王者のように生き延びた人生だった。

今回、伝記を読んで、グルジェフという人に関してはっきりとわかったことがある。彼は今の時代でいうある種のメンタリスト(他人の精神を自由に操る人)(笑)だ。彼はありとあらゆる能力をもち、カリスマ的人格で人々をひきつけては、(ワークという目的のために)翻弄し、突き放す。

グルジェフと出会った誰もがグルジェフを「とんでもない人」と言うが、彼の霊的知識、達人的生活能力、強靭な体力、政治・経済状況を見通す能力、そして何よりも人心掌握術とビジネス的才覚は並みはずれている。そして、彼はほとんど詐欺師並みにずる賢い。どこの町に行っても、その町の有力者とコネをすぐに作り、食料と部屋を確保し、金持ち相手にビジネスをする。どれだけ戦争中の物資欠乏時代でも、彼のいるところには食料が豊富にあり、最晩年、彼はパリのマンションで毎晩大勢の人たちと晩餐会をやっていたという。

そういった特異な性格の一方で、彼が自分の家族(妻、両親、兄弟姉妹)に寄せる愛情は非常に人間的なものだ。敬愛する父親はトルコ軍によって殺されてしまうが、晩年はその他の家族(母と、弟と妹の家族)をパリに呼び寄せ、生活の面倒を見る。

彼と多くの弟子たちとの確執、特に彼のモスクワ時代の弟子、ウスペンスキーとの愛憎は興味深い。二人は何度か和解を試みたが結局は成功せず、ウスペンスキーは晩年は酒におぼれて、グルジェフよりも早く死ぬ。死後、ウスペンスキー夫人が「奇跡を求めて」の原稿をグルジェフに見せ、グルジェフはそれを読み、「自分の言ったことが正確に書かれている」と夫人に出版の許可を与えたという。

本当に「とんでもない人」――こんなハチャメチャな人の弟子に誰がなれる?(笑)と思いながら、「グルジェフ伝」600ページを何とか読み終えたところだ。


その他参考図書
「奇跡を求めて」(PDウスペンスキー著 平河出版社)
「ベルゼバブの孫への話」(GIグルジェフ著 平河出版社)
「生は〈私が存在し〉て初めて真実となる」(GIグルジェフ著平河出版社)
「グルジェフ・ワーク」(KRスピース著 平河出版社)
「グルジェフ・弟子たちに語る」(GIグルジェフ著 めるくまーる社)


〔新刊発売〕

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今さらですが、手塚治虫2019年05月05日 10時27分21秒

ここ二か月ほど、手塚治虫の漫画を読みふけっている。

なぜ今になって、手塚治虫(1928年-1989年)かというと…

たまたま2月に読んだあるインタビュー記事の中に、手塚治虫の漫画に言及があり、ちょっと興味を惹かれたからだ。幸い、図書館に手塚治虫全集が入っている。

実は、子供の頃読んだ「リボンの騎士」、テレビで見た「鉄腕アトム」、大人になって読んだ「ブラックジャック」以外、ほとんど手塚治虫の作品を読んだことがなかった。「ブッダ」、「火の鳥」など手塚治虫の主要作品を読みたいと思いながら、私はお金を出して買ってまで読むほどの漫画の愛好家ではない。

それでこの機会に、主要作品をかたっぱしから読み漁り、「陽だまりの樹」、「ブッダ」、「火の鳥」、その他全部で40冊くらいを読んだ。こんなに漫画を集中して読んだのは、たぶん子供の時以来である。マインドの集中力がいらないので、気軽に読めるのが漫画のいいところである。

改めて驚いたことは、手塚治虫って、こんなに多作で、幅広いジャンルを描いているんだ、ということだ。SF、歴史、子供向け、恋愛、その他。しかも早死である。短い期間に膨大な作品。たぶん、仕事中毒の人だったのだろう。

それからもう一つ驚いたことは、彼は今日のAI(人工知能)時代、そしてこれからやって来るかもしれないAIによる人類支配の時代をはるか昔に予見していたことだ。

彼の作品の中に、人間のように話し、考え、行動し、しかも人間を超える能力をもつ存在――いわゆる人造人間――を創造したいという科学者たちがよく登場する。そして、そういった科学者たちが創造したものが、逆に人類を混乱させる、あるいはどちらがどちらを支配するかをめぐって、人類と対立するというテーマがある。

1949年の作品、「メトロポリス」の最後は、次の文章で締めくくられている。

科学の最高芸術である生命の創造はただむだに人間社会を騒がせただけであった。おそらくいつか人間も発達しすぎた科学のためにかえって、自分を滅ぼしてしまうのではないだろうか?

もう一つ彼の作品に色濃く流れるものは、仏教的因果応報、輪廻転生の思想である。彼は「ブッダ」を描くくらいだから、仏教思想をよく知っていたと思われるが、でも同時に、宗教が結局のところ政治の権力闘争の道具に使われるあやうさもよく描いている。

「火の鳥」の中で印象的だったのは、奈良時代を描いた「鳳凰編」:

(あの有名な奈良の)大仏建造のための資金集めに奔走したあげく、結局仏教が政治の道具として使われたことを嘆いて自ら死ぬ僧がこうつぶやく。「宗教など、くだらない。私はただ政治に使われた道具だったのだ」

それから、今から数千年(?)先未来のシャドー(影)対光一族の教団対決、そして奈良時代の狗族対仏教の対立を描いた「太陽編」:

それまで虐げられていたシャド―が権力を握ったとき、その指導者はこう言い放つのだ。
我々は新しい宗教を作り、全人類をわれわれに従わせる。信じないものはかたっぱしから処罰

このくだりを読んで、「数千年先の未来は、全世界が北朝鮮か!」と、私はツッコミを入れたが、たぶん、そうなるのかもしれない(他の作家のSF小説でも、巨大宗教教団とAI一族が入り乱れて、権力闘争を繰り広げる世界が描かれているのを読んだことがある)。

「ブッダ」も大変面白く読めた。ブッダの生涯、そしてブッダが生きた時代のインドの状況も詳しく描かれ、インド史の勉強にもなってよかった。

すべての人の平等を説くブッダの教えは、その時代の宗教的権力者からは嫌われ、迫害の対象となる。手塚治虫が描くブッダは、高見から説教する人ではなく、苦しんでいる人と一緒に苦しむとても人間的なブッダの姿だ。

そして、長年、苦楽をともにした愛弟子が、昔自分の親を殺した敵への復讐心に駆り立てられて、戦争へ出かけ、結局死んでしまい、ブッダが、「自分が長年教えたことは無駄だったのか?」と号泣する場面は、私にとってはブッダ全編の中でも一番印象的な場面だ。

今も昔も、「平和と平等」は人間のマインドには本当には届かず、むしろ「復讐するは我にあり」のほうが、はるかに人間のマインドにはアピールすることが、「ブッダ」「火の鳥」の中でも繰り返し描かれている。

ブッダがもし、自分が生きた千年後(奈良時代)の日本での仏教振興を見たら、喜ぶのか、それとも悲しむのだろうか…大勢の庶民を犠牲にして建てられた大仏を見て、「こんなものは、くだらない」と言うかも、だ。たぶん、仏教や政治の権力者たちより、この時代の仏教支配に対抗して狗族のために戦った犬上宿禰とむしろ気が合ったかもと、私の中で勝手に「ブッダ」と「火の鳥」をつないだ物語を想像してみた。犬上宿禰は「火の鳥」の全登場人物の中で、私が一番気に入ったヒーローである。

あともうしばらく、手塚治虫漫画タイムが続きそうだ。


〔イベント〕

2019年5月26日(日)「私とは本当に何かを見る会」(東京都新宿) 予約受付終了 
2019年6月15日(土)「ダグラス・ハーディングー自分とは何かを見る会」(岐阜県岐阜市)
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〔今後の会の予定〕
2019年6月29日(土)「非二元の教えを生きる会」(東京都新宿)  


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ニサルガダッタ・マハラジの教え(6)Prior to Consciousness2017年12月10日 07時13分33秒

今回は、ニサルガダッタ・マハラジの教えについてではなく、彼がどんなグルだったのかを書いてみよう。

もちろん私はマハラジにお会いしたことがないので、私がこれから書くことは、本による印象、ラメッシ・バルセカール、セイラ―・ボブなどの弟子たちの言葉、マハラジのサットサンを撮影したDVD, そしてインターネット上の情報などから得たことから、私なりに感じたことだ。

まず、マハラジはグルとしては非常に厳しい人で、いい加減な態度や気持ちで自分のサットサン(真理と交わる場くらいの意味)に来るのを許さないという雰囲気がある。セイラ―・ボブによれば、彼はそういった人たちを自分のサットサンから追い出したとある。

「厳しい」というのは、「何をするべきか、何をするべきでないか」という行為に関してではなく、真理を探究する態度とその動機に関してである。

人々は様々な動機で彼のサットサンにやって来る。すべての人々の動機が純粋な霊的探求のためというわけではなく、マハラジから単に霊的知識が欲しい人もいれば、恩寵を望むだけの人もいる。また自分の知識をマハラジに認めてもらいたいために来る人もいれば、グルになるための秘訣を学びに来る(笑)人もいる。もちろんマハラジが真面目に相手をするのは、ただ「私とは何か」の究極の真理を熱心に探究する人たちだけだ。

彼は鋭い眼力によって、人々がどういう動機で自分のところへ来ているのかを見抜き、時には皮肉を言ったり、からかったり、様々な対応している。

アイアムザット私は在る」(ナチュラルスピリット発行)の頃は、マハラジもまだ元気だったせいか、マハラジに議論をふっかける人もいて、彼もそれなりに応えていた印象があるが、Prior to Consciousness(意識以前――仮称)では、もうマハラジは議論をするだけの体力がなく、「自分の話がわからないなら、家へ帰ってバジャン(神に捧げる賛歌)をやりなさい」  とか、「もうここへ来るべきではない」とただ言うだけである。
 
マハラジは、「自分の話はすべての宿題をやり終えた人たち向けのもので、霊的初心者のためのものではない」と言う。では彼が言う「宿題」とは何か?

それは私が思うに、「宿題をやり終えている」とは、肉体・感情・思考との一体化の解除がある程度進み、エゴ的な執着がかなりなくなっていることだ。

マハラジのところへ、霊的パワーや悟りを求めて来るのさえ間違った動機である。なぜなら、彼はそういったものを提供しないからだ。彼が提供しているのは、「人がいつかそうなるべき状態」ではなく、「人が今そう在る状態」、究極の現実が何なのかという科学的分析である。

さて、今皆さんは、パソコンかスマートフォン(タブレット)でこの文章を読んでいる(見ている)はずである。マハラジの問いを使って、この状況に関して質問してみれば、「何があるゆえに、あなたは自分の世界を認識することが(見ることが)できるのか?」となる。

ここで「目」と答えた人は、「ブー(×)」(笑)です。

そして、マハラジが鋭いところは、マハラジは仮にその人が観念的に自分の質問に正しく答えても(本からの知識を知っていれば、マハラジの問いに知的には正しく答えることは可能である)、その人がその瞬間に本当に自分が答えていることを直観していない場合には、その正しい答えさえも否定するところである。

私が感じるに、マハラジのスタイルはトニー・パーソンズなどと同様に、方法論としては「否定」の道で、そこは弟子であるラメッシとはかなり違うところだと思う。

ラメッシ・バルセカール、ダグラス・ハーディングはどちらかというと「肯定」の方法論である。つまり、彼らは質問者の観点や考え、議論をほとんど否定しない。たぶん、それは観点や考えはたいして重要でなく、どう展開しても、議論や観点、考えが言葉なき認識へ導くわけではないと知っているからだ。それに彼らにはどんな観点や議論も強制終了させることができる伝家の宝刀がある。

ダグラスの場合は、実験があり、ラメッシの場合は、「すべては神の意志」という観念がある。

実はマハラジにも宝刀があるのだが、本書Prior to Consciousnessの中ではほとんど使っていない。それはあらゆる質問に対して、「誰がそれを尋ねているのか?」  という質問で答えることだ。

ラメッシの説明によれば、ほとんどの人が自分の質問に対してマハラジが「誰がそれを尋ねているのか?」 という質問で切り返すとき、マハラジが自分の質問に答えることを避けているという誤解を与えたということである。

私の理解によれば、「誰がそれを尋ねているのか?」という質問の意図は、質問者を質問より以前にある自分の本質へと退却させることだが、ほとんどの場合は、「尋ねているのは私です」→「ではその私とはか?」→「わかりません。だからお尋ねしているのです」みたいな新たな議論に発展してしまいがちで、議論から直観へというマハラジの意図がほとんど伝わらない。
 
Prior to Consciousnessはマハラジの末期癌の影響のせいもあって、明るい雰囲気の本ではない。彼は死にたいと言う言葉は使わないが、自分は早くこのすべてを処分したいと何度か本書の中でももらしている。ただ、読者はそれを「厭世」の勧めのように読むべきではないと私は思う。彼は決して厭世的な人ではなかったと思うし、家庭生活と仕事と霊性を自分のできるかぎり精一杯やり尽くした人だ。

私のなんとなくの印象で言えば、彼は昭和の頑固オヤジのような感じで、厳しいけど、素朴でまっとうで、いざというときには、心優しく、頼りになる近所のタバコ屋のオヤジである。

ラメッシによれば、マハラジはサットサン以外の普段のときは平凡な話し方をする人だったそうで、マハラジ自身、なぜこんな奥深い言葉が自分から出て来るのかわからないと驚いている。彼の知識は本から得たものではなく、すべて直観と経験から出てきたものであり、それにもかかわらずどんな学者やインテリもかなわないくらいの奥深さであることは本当に驚くべきことだ。本の中では彼が、自分のところへやって来る学者系の人たちをからかって遊んでいるところがある。

そして私が彼を非常に敬愛するもう一つの理由は、インドにあって、霊的経験やパワー、名声を売り物にしてグル・ビジネス(弟子や信者、お金をたくさん集めるビジネス)をしなかった希有な人だったからだ。

マハラジは本書Prior to Consciousnessが将来大勢の人たちに読まれることを、1981年の時点ですでに予言している。本としても厳しい本だと思うが、熱心に読まれれば、熱心な探求者たちに役立つだろうと私もそう信じている。

以上、6回にわたって、ニサルガダッタ・マハラジのPrior to Consciousnessについて簡単に解説してきた。

諸事情で完成・発行が大変遅れてしまい、お待ちいただいている皆様には大変に申し訳なく思っています。本書の発売が正式に決まりましたら、改めてお知らせします。

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ニサルガダッタ・マハラジの教え(4)Prior to Consciousness2017年10月14日 08時25分44秒

今回は、マハラジの教えから少し離れて、私がいつも感じている非二元系の教えにおける言語の問題について言及してみよう。

あるとき、ハーディングの実験の会に来た人から下記のような質問されたことがある。

「たとえば、『自分を見てください』と言うとき、その言葉自体が他者とは違う『自分』がいることを想定しているのではありませんか?」

つまり、この質問の意図は、ハーディングの実験の目的が、私の本質という自他の区別のない一元的世界の認識であるのに、その認識を導くために使われる言葉が、そもそも二元的であるのは矛盾ではないか? という意味だと、私は理解した。

矛盾している――まったくその通りである。同様に、「『自分の』足を見てください」とか「『自分の』手を見てください」というときも、私たちは明らかに「自分の」手足と「他人」を手足を区別して、「他人の」手や足ではなく、「自分の」足や手を見る。

この根本的矛盾の原因は、「自分」「私」という言葉、  英語でいう、me, I の言葉の問題である。

前回と前々回のマハラジの教えのところで、マハラジの教えるにおける「私」の定義について次のように説明した。
 
1「私は1個の肉体・マインド である」
2「私は存在である」(I Am=私は在る=意識の状態)
3「私は非存在(非現象)である」(絶対の状態)

普通、二元世界で「私」と言えば、それは明らかに肉体の私(鏡の中で見たり、他人から見られた人間物体)のことである。二元世界では、「私」は明らかに一貫して肉体の「私」のことで、お互いにその暗黙の了解の元で会話するので、少なくとも「自分、私」に関しては、矛盾がない。

しかし、賢者の方々が、「私」と言うとき、あるときは、個人的肉体的「私」のことであり、あるときは、意識の「私」であり、あるときは絶対の「私」であり、という具合に、話している途中でも自由に「私」の定義が変わるのである。
 
彼らは話す前にこれから言及する「私」がどの「私」なのかいちいち言ったりしないが、言ってくれたら、翻訳する側としては助かる(笑)と思うことがよくある。
 
たとえば、賢者の方々のよくある発言を例にとって、分類してみれば、

*「私」が子供だった頃  →肉体の「私」と一体化
*「私」は意識全体であり、世界である。→顕現した意識としての「私」と一体化
*「私」は生も死も超越している→意識が顕現する前の絶対としての「私」と一体化

私が知る限り、マハラジもダグラスもラメッシも、話の途中で、個人的思い出――「私が子供だった頃」というような――を語ることがあり、そのときは明らかに彼らは肉体の「私」と一体化している。

ラメッシは、「賢者であっても、『マハラジ、ラマナ』などと、自分の名前を呼びかけられれば、普通に返事をするもので、それはつまり、そのときは彼らが個人的自己と一体化しているという意味だ」と、言っている。
 
最初の実験を指示する言葉についての質問に戻ろう。

「自分を見てください」という実験の指示は、それは明らかに一人ひとりの肉体が違うことを想定している発言である。つまり、一元的世界の認識へと導く実験も、二元世界から出発せざるをえない。ダグラス・ハーディングの実験を小難しく言えば、対象世界(二元世界)から主体世界(一元的本質)への移動であり、言語や自分の肉体という二元世界の道具を使って移動する(ダグラスが好きな言葉で言えば)「」なのだ。

マハラジの教えにおける「私」の定義で、1の世界は当然、非常に個人的なものだ。そして、あえて、「個人的」という言葉を使えば、上の2、顕現した意識の「私」も超絶的に個人的である。「非個人的」という言葉が強調されるせいか、意識の「私」は自分が対象物として見る人たちとは、全然違う世界に住んでいるという事実はあまりよく理解されていなように感じる。

私がよく出す例で言えば、たとえすぐ隣に人が座って、似たような風景を眺めているとしても、それぞれの人間物体を通じて展開する意識の世界はまったく個人的な風景(思考や感情世界も含めて)であり、非常にユニークでオリジナルである。それは一元的本質(本質だけがあらゆる人間物体に共通している)上に、繰り広げられる多様な個人的個性的世界である。(ダグラス・ハーディング「存在し、存在しない、それが答えだ」の第6章「平凡な人を抜け出す」を読むことをお勧めしたい)

だから、「個人的」とか「非個人的」という言葉も最終的にはどうでもいいことなのである。言語とは二元的時空間の世界、過去・現在・未来の区別のある世界を描写するための道具であって、本当は一元的世界を描写することにはまったく向いていない。向いていない道具を使って、説明せざるをえないので、言葉上では様々な矛盾が生じ、そういうことを気にする人たちに多大な混乱を与えてしまう。

しかし、実験、瞑想、直観などによって、自分とは何かについて考えるのではなく、見る・認識することができれば、言葉上の混乱も次第に収まるものだと思う。



[イベント]                                        

*2017年10月28日(土曜日)「私とは本当に何かを見る会」(大阪府茨木市)
予約・詳細は下記のサイトへ

*2017年10月29日(日曜日)「ラメッシ/マハラジの教えと『気づき』について学ぶ会」(大阪府茨木市)
予約・詳細は下記のサイトへ


[お知らせ]
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ニサルガダッタ・マハラジの教え(2)Prior to Consciousness2017年09月10日 13時50分43秒

 それぞれの賢者、伝道者には独特の用語や表現というものがある。前にも書いたことであるが、それが読者や探求者のマインドを混乱させる大きな原因となりうるものだ。「この点に関してはあの賢者はこう言っていたけど、この賢者は別のことを言っている」  みたいな。

マハラジの本の中では、本の中でさえも言葉上では矛盾が見つかる。それをPrior to Consciousness(意識以前―仮称)の原書編集者も前書きで指摘していて、それはマハラジがいつもそのときの相手にふさわしい言葉を使っているからだ。本書の内容は、大勢の人に向けて一般的に講演したものではなく、あくまでも自分の目の前にいる人に対して、その人にとって必要な言葉が、(マハラジの頭の中で作りあげたものではなく)自然に出てきたものだ。マハラジは「物事は自然に出てくる」という表現をよく使う。
 
マハラジがPrior to Consciousnessの中で、「私を皆さんを最高のレベルへ導こうとしている」と何度も強調しているが、では彼が語るレベル(つまり、探求者がいま現在どの理解にいるかというレベル)とはどんなものか、簡単に紹介しよう。

1「私は1個の肉体・マインド である」
2「私は存在である」(I Am=私は在る=意識の状態)
3「私は非存在(非現象)である」(絶対の状態)
 
本書で、マハラジは1のレベルの話は一切せず、「自分の話は『私は在る』に充分安定した探求者たち向けのものだ」の何度も言っている。

原書編集者が「死ぬ2年前くらいから、肉体・マインドに関する一切の質問を受け付けなくなった」と書いているところから想像すると、それでもそれ以前は肉体・マインドに関する質問にも答えていたようだ。

また彼は「以前の私の話は、ある程度人々は理解したが、自分の現在の話をほとんどの人は理解しない」とも言っているところを見ると、最晩年になるにつれて話のレベルをしだいに上げていった様子もうかがえる。

本書を読むさいに注意すべきことは、本書の中では「意識(Consciousness)」は最終状態を指す言葉ではなく、「絶対が現象として顕現した状態」を指し示す言葉として使われ、「意識の状態」は絶対へと超越されるべきものとして語られている。

そして、ここが肝心なところだが、その絶対の状態とは達成されるべきものはなく、永遠にあらゆる人の背後にある土台であり、今述べた2の意識状態と3の絶対状態は分離しているわけではなく、二つで一つ、コインの表裏のようなものだ。  あらゆる賢者が言っているように、現象と非現象、色と空(くう)は一つである。
なので、「超越」という言葉が使われてはいるが、実際は「何かをしてどこかへ超越する」というより、意識と絶対は一つであることを直観することに他ならない。

さもないと、「どうやって私は絶対の状態へ行くのでしょうか?」などという誤解された質問が出てくるわけだ。

実際、すでにそこにいるゆえに、「そこに行く」とか「そこに到達する」という問題はないわけで、「どうやって?」という質問に対して、マハラジは、「『私は在る』の状態にただ留まっていないさい。そうすれば自然に理解は起こるだろう」と言う。

マハラジの方法論は、「ただ在る」、「ただあらゆることを観照する」ということに尽きる。そして、もし「ただ在る」、「ただあらゆることを観照する」ことができない人、あるいは知的にも彼の話を理解できない人は、まだ充分にそれ以前の修行(瞑想やバジャン)、彼の言葉で言えば、「宿題」が終わっていない状態であり、もし自分の話がわからなければ、ここに来るべきではないとも彼は言う。

マハラジも含めて、あらゆる賢者たちが言っていることは、「現実とは何か」「私とは何か」「世界はどのように存在するようになったのか」についての科学であり、信じるべき信仰ではない。ダグラス・ハーディング同様に、マハラジの言っていることはきわめてシンプルで科学的であり、彼自身「科学的態度をもつべき」ことを強調している。

実際、マハラジはダグラス・ハーディングのことを知っていて、イギリスから来た探求者には本国へ戻ったら、ダグラス・ハーディングに会いに行くように勧めていたという。またダグラス・ハーディングもマハラジを高く評価していた。彼の「顔があるもの 顔がないもの」(マホロバアート発行――現在絶版)の五章「存在が自ら生じる神秘」の章で、「自分の中心の顔のなさを見る」ことをマハラジの教えと絡めて語っていて、マハラジの言わんとしていることをより立体的に表現している。本書をおもちの方は、この部分を再読されると、マハラジの話もより理解しやすいのではないかと思う。


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*2017年9月17日(日曜日)「ラメッシ/マハラジの教えと『気づき』について学ぶ会」(東京)
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