The art of spiritual healing (2)2020年11月23日 08時24分11秒

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今回はジョエル・ゴールドスミスがどんな人だったのか簡単に紹介してみよう。実は私は、彼が自分の著作の中で自分自身のことを語っている(あまり多くはないが)こと以外、ほとんど彼のことを知らなかった。(先日初めて、ネットで情報を調べました。詳細は下記のサイトに出ています)。


上記の情報と本の中で彼が語っていることから、簡単に紹介すると、若い頃から霊的探求を始め、聖書、その他霊的な文献を幅広く読み、熱心に探求した。あるとき、彼の父親が瀕死の病気になり、(当時世界で広まっていたキリスト教の新しい流派)クリスチャン・サイエンスのプラクティショナーに救われ、のちに自分が病気になったときも、同じようにクリスチャン・サイエンスのプラクティショナーによるヒーリングによって治るという経験をした。

彼自身はヒーラーやプラクティショナーになる訓練をしたことも、そういったものになるつもりもまったくなかったにもかかわらず、1928年、見知らぬ人から突然、「あなたが私のために祈ってくれれば、私の病気は治る」と頼まれたので、祈ったら、自分は何もしていないのにヒーリングが起こった。それから同じような経験が続き、多くの人たちからヒーリングを求められるようになり、会社をやめ、ヒーリングのためのオフィスを借り、本格的にヒーリングの仕事を始めた。

しかし、自然に起こったこのヒーリングという現象について彼はまったく何も知らなかったので、答えを求めて、彼自身もクリスチャン・サイエンスに入会、16年間そこで学ぶ。そのあと、そこを出て、自分の団体Infinite Way(無限の道)を設立し、著作、講演、クラスで教えるなどを通じて、あらゆる宗教、人種の人たちに「神性に目覚めることによるヒーリング」の道を教えた。

The art of spiritual healingの本によれば、彼がヒーラーをやっていた当時、一日100件以上のヒーリングの(ほとんどが電話による)依頼があり、軽い病気や症状なら、彼のヒーリングは受話器をおいたときにはほとんど終わっていた(!)というから、それこそ「瞬間ヒーリング」である。

話は少しそれるが、10年ほど前に世界的ベストセラーになった本に、「瞬間ヒーリングの秘密」(フランク・キンズロー著 ナチュラルスピリット発行)という本がある(私も翻訳の一部を担当した)。この著者の別の本、Beyond Happiness(ご本人の言葉によれば、この本はあまり売れなかったらしい)の最後にたくさんの参考図書が掲載してあり、その中に私はジョエル・ゴールドスミス、ダグラス・ハーディング、ニサルガダッタ・マハラジの本を発見した。もしかしたら、フランク・キンズローはこういった非二元系の賢者たちの認識、そしてジョエル・ゴールドスミスのヒーリングに関する考えややり方もかなり研究したのではないかと思う。フランク・キンズローは、非二元的認識・理解からヒーリング・テクニックをあみだし、かなり脱スピリチュアル化して大衆化した。

一方、ジョエル・ゴールドスミスの場合は、自然に起こったヒーリングを純粋にスピリチャルな教えとして純化し、非大衆化していった。ジョエル・ゴールドスミスはそれを、イエス・キリストの言葉に習って、「狭い道」(多くの人が通り抜けられない道)と呼んでいる。

ジョエル・ゴールドスミスは20世紀のアメリカを代表するキリスト教神秘主義者、霊的賢者(インドのラマナ・マハルシのような)の一人といってもいいくらい偉大な人だった(と私はそう思っている)にもかかわらず、今まで日本ではまったく知られていなかった。アメリカでも、ここ十数年、著名なエックハルト・トールやその他の現代のアメリカのスピリチュアル系の先生、作家が推薦して、ようやくまた脚光を浴び始めているという感じである。



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The art of spiritual healing (1)2020年11月14日 09時24分59秒

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今回から、来年出版予定の2冊の本と著者について紹介することにしたい。

その二冊の本と二人の賢者のうち、まずジョエル・ゴールドスミス(Joel S.Goldsimth1892-1964)と彼の本から紹介してみよう。

彼の本といつ出会ったのか、実はいつ買ったのかまったく記憶になく、たぶん1990年代にまでさかのぼる。たくさん洋書を買っていたときに、たまたま適当に選んだ本で、私は買ったときほとんどそのジョエル・ゴールドスミスの本(来年出版する本ではない)を読まなかったようだ。

今になって考えるに、なぜ買った当初、自分が彼の本を読まなかったのか、理由が推測できる。それは聖書の引用が非常に多いこと、それと各ページにあまりに多く出てくるGod(神)という言葉に嫌気がさしたのだと思う。

聖書には慣れ親しんできたし、Godという言葉も私は嫌いではないし、ダグラス・ハーディングのようにGod-freak(神狂い)(笑)の人とも知り合いだったにもかかわらず、買った当時、がちがちのキリスト教信仰の本のような感じがして、ジョエル・ゴールドスミスの本を読むのには抵抗を覚えたようだ(このあたりは記憶にないので、推測だが)。

それから10年ほどたった2000年代のある日、本棚を整理して、不要な本を処分しようと思い、本棚を眺めていたら、ジョエル・ゴールドスミスの本に目が留まった。「ああ、こんな本、買っていたんだ。何の本だったっけ?」と、とりあえず目を通してから処分しようと思い、本棚の前に座り込んで、最初から読み始めた。10ページほど読んだとき、突然に霊感が降りてきて(笑)、「この人はダグラス・ハーディングやラメッシ・バルセカールとまったく同じことを、まったく異なる表現とスタイルで語っているのだ」ということに気づき、私の中で、ダグラス・ハーディングとラメッシ・バルセカールとジョエル・ゴールドスミスのゴールデン・トライアングル(黄金の三角形)ができたというわけである。

それ以後、私は10冊以上のジョエル・ゴールドスミスの本を購入し、ものすごく熱心に読み、ある日、彼の本を翻訳しようという情熱がわき、数冊翻訳をしてみた。来年、出版予定の本はその中の1冊である。

再び今思い出せば、私がジョエル・ゴールドスミスの本に目覚めた頃、私は体調・精神が絶不調で、実はダグラス・ハーディングやマハラジの本がほとんど読めなかった。体調・精神が不調のときは、ハーディングの難解な英語はすらすらとマインドに入ってこないし、彼らの教えはある意味で科学系なので、読んでも気分が高揚したり、励まされたりするわけではない。

それに対して、ジョエル・ゴールドスミスにかぎらないが、キリスト教系の教えの言語は、聖書も含めて、感情に訴えるものがある。つまり、マインドや体調が不調なときでも、いや、マインドや体調が不調なときこそ、言葉が入って来る傾向がある。だからその時期、ジョエル・ゴールドスミスの本にはずいぶん慰められたものだ。


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「輪廻転生」再考(3)2020年10月29日 11時38分02秒

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ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の中で、(ラメッシの説明によれば)、マハラジは「輪廻転生」や「悟り」の観念を全部否定している。最晩年、マハラジが帰依者やサットサンの参加者たちを導こうとしたところは、「意識に先立って」、つまり、すべての思考・観念・感情・言語が生じる以前の本質である。

だから、本質の観点から見れば、「輪廻転生」や「悟り」だけでなく、「すべての思考・観念・感情・言語」は、本質的には存在しない、否定されるべきものとしてある。

ニサルガダッタ・マハラジの最晩年の教えの焦点が何かが理解できれば、「輪廻転生」や「悟り」という観念をなぜ彼が否定するのか、少なくとも知的には理解できるだろうと思う。

それにもかかわらず、賢者が言葉を使って説明しようとした瞬間に、すべては時空間の幻想領域に入り、前回も説明したように、彼らはある程度は時間と空間があるという前提でしゃべらないと、言語そのものがまったく意味不明となる。

ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の中では、なぜか、人間の肉体の始まりである「精子と卵子」の話が多いが、人間は「精子と卵子」の合体から始まり、それが時間をかけて成長しましたというふうに、時間と空間を前提にした物語をマハラジは語ることによって、聞いている人に、「自分の本質がそんなふうに変化するものではありえない」という最低の知的理解を与えようと試みている。

しかし、マハラジの目標は知的(観念的)理解ではなく、あくまでも、「すべての観念以前」である。つまり、「悟りとは何か?」とか、「輪廻転生とは真実か?」とか、その他あらゆることを私たちが議論できる根本的原因は何なのか? その根本原因に戻りなさい、という指示だ。

もっと日常的に言えば――私たちは生きて、正常に機能しているからこそ、あらゆることを考え、議論できる。しかし、その「生」を究極的につかさどっているのは、何なのか? それは、「人間」と呼ばれている一個のはかない生物なのか、あるいは、様々な観念なのか、それとも何なのか……

本質から出てしまえば、観念としてはあらゆること、あらゆる物語、あらゆる議論が可能である、つまり、この幻想世界は「何でもあり」の世界なのだ。

地球上の70億の人間がそれぞれ特有の観念世界(幻想)をもち、一人ひとりが善悪の観念、真理とウソの観念をもっている。さらにはこの惑星に住むその他の生物もそれぞれの世界をもっている。


朝と夜に鏡を見て、問いかける。「鏡の中のあの人はどうやって生存するようになった(製造された)のか?」 私は幻想(物語)領域に入って、答えてみる。「あの人は、○○という父と○○という母の元で、××年に生まれた△△という名前の者である」。(大丈夫、今日はまだ記憶機能が正常で、ちゃんと答えられる)

しかし、鏡を離れた瞬間に、「あの人」は消滅し、次に鏡を見るとき、またそこに出現(転生?)している。そして、家族、たとえば、母(幻想物語の中で、「あの人」の製造者だとされている人)に会った(最近は、パソコン上で時々会う)とたん、母のマインドに「あの人は転生」し、私も母の前で「あの人」になる。母の記憶はかなりあやしくなっているが、かろうじて、まだ「あの人」が自分の娘だという記憶が働いている。

「輪廻転生」の観念についての結論は、もしその観念がどうしても気になるなら、納得いくまで考えて、一人ひとりが結論に至ればよいのだと思う。

私自身の結論は、すべての観念について、般若心経風に言えば:

「さとりもなければ、さとりがなくなることもない」
「迷いもなく、迷いがなくなることもない」
「老いも死もなく、老いと死がなくなることもない」

それに習って言えば:

輪廻転生もなければ、輪廻転生がなくなることもない……

つまり、言語的にはまったく無意味……(笑)


輪廻転生について以前書いたブログ
「アジャシャンティ」(3)輪廻転生 2012年4月8日
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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(6)2020年02月29日 14時20分14秒

〔お知らせ〕

*予定していました、3月15日、3月20日の会は開催中止です。

*Pointers From Nisargadatta Maharajは、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」(ラメッシ・バルセカール著 ナチュラルスピリット発行)というタイトルで、3月中旬発売予定となりました。本体価格:2,550円(用語解説と訳者あとがきも含めた本文ページ数、378ページ)

目次は下記のサイトに掲載してあります



本書、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」を読んでいると、うっかりすると、これがラメッシ・バルセカールの本だということを忘れてしまいそうなくらい、ラメッシはマハラジと融合してしまっている。

本書についての最後のブログは、以前にも何度か書いたが、著者であるラメッシ・バルセカールについてである。

初めて彼のサットサンに参加したとき、彼の自宅でのサットサンがあまりに心地よくて、彼のサットサンにずっと通うために、日本の生活を引き払って、ムンバイに引っ越したいと一瞬は思ったほどだった――ちょうどストレスの多い時期で、自分を取り巻いているすべてが嫌になって、日本脱出が魅力的な現実逃避に思えた。けれど、歩いているだけで、呼吸困難になりそうなムンバイの耐えがたい大気汚染を見て、その考えはすぐにあきらめた。

その最初に行ったサットサンの帰りの飛行機の中で、明確に降ってきたメッセージとは、非二元の教えに関して、ラメッシ・バルセカール以後にもはや私が会いに行くべき先生はいず、読むべき本もないということだった。それからもう一つは、「誰もありのままの自分以上にはなれない」、「誰もが神に造られたままの存在であり、あらゆる瞬間に神の意志によって生きている」というメッセージだった。

スピリチュアル系の仕事をしていると、どうしても自分自身にスピリチュアル的な自己イメージを与えがちで、こうあるべきという自己イメージを自分が満たせないときに、それが大いなるストレスになることがよくある。私がこの時期陥っていたストレスとはたぶん、そういう種類のものだった。

ラメッシのサットサンに参加して(彼とはほんの少し話しただけだったけど)、そのストレスがものすごく軽減したことがわかり、それだけでなく、突然、ラメッシの本を出そうという元気まで出て、彼の本を出すために次の数年間、奔走した。

ラメッシはマハラジとは違って、まったくグル風な人ではなく、本人もグルという自覚はほとんどなかったと思う。名前も本名のままだし、そもそも師の教えについて他の人たちに話したいという熱意さえ最初の頃はなかったようだ。「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」を書いた当時のラメッシ(60代前半)は、原書編集者も書いているように、まったく社交的な人ではなく、どちらかというと、引きこもり系「瞑想おじさん」(笑)というような感じの人であったことがうかがえる。

私がお会いしたのは、それから約20年後の彼が80代の前半の頃で、その頃はラメッシもずいぶん雰囲気が変わり、しかも(彼自身のごくプライベートなことに関すること以外)、質問に制限もかけないので、ほとんどどんな質問にも答えていた。彼は非常に気さくで、親しみやすく、そして普通の人であった。

私は最初のサントサンに行ったあと、ラメッシに非常に感激したので、当時の知り合いの人たちにラメッシを紹介し、中には実際、インドまでラメッシに会いに行った人たちもいたが、私ほど感銘を受けなかったようなので、やはり先生とか教えには人それぞれ縁とか相性があることを確信した。

今思い出しても、ラメッシのサットサンに参加したことは(トータルで15日間くらい)は、人生で最高に贅沢の日々だった。毎朝、ホテルからタクシーに乗り(毎日同じタクシーがホテルの前で待っていてくれた)、ラメッシのマンションの前に到着すると、そこにたいてい数人の人たちがマンションの門が開くのを待ちながら、世間話をしたり、タバコを吸ったりしている。

サットサンの30分前に守衛さんがマンションの門を開けてくれて、皆でエレベータに乗り込み、ラメッシの自宅がある階に到着。由緒あるこの高級マンションには、他のバルセカール家(ラメッシの兄弟)のご家族も住んでいたようだった。それから部屋に入って、ラメッシをしばらく待っていると、ラメッシが寝室かキッチンのほうからトコトコ歩いて来て部屋に入り、サントサンの開始――私が参加した当時で、一日だいたい20人から30人くらいだった。

それから約1時間半、色々な国から来た人たちが質問し、彼がそれに答え、最後はインド人の帰依者の女性が素晴らしい声でバジャンを歌うのに合わせて、参加者全員でバジャンを歌って、サットサンの終わり。そのあとしばらく、写真撮影をする人、インド風の挨拶をする人、欧米風のハグをする人、本にサインを求める人など、あらゆる人の要請にラメッシはにこやかに応じていた。

それから、一人であるいはそこで知り合った人たちと、近くのとてもおいしいインド・レストランでランチをして、午後はブラブラとムンバイの街を呼吸困難になりながら、歩きまわったり、ラメッシのマンションの近くにある、アラビア湾を臨む(誰も泳いでいない)高級プールで泳いだり、ホテルに帰って昼寝をしたりして、夜はホテル近くの安い食堂で、再びインド風夕食。ラメッシのサットサンは、私にとってはそんな天国のような日々だった。

私が二度目に行ったときに撮ったラメッシのサットサンの写真が下記に掲載してあります。


今、最後の校正もようやく終わり、ふと思ったことは、私は本書をとても「親切な本」と言ったが、その何重にもわたる詳細で親切な説明が、かえって読む人に混乱を与える場合もあるかもしれない、ということだった。また別の機会を作って、本書に中で使われている用語に関して、読者に???をたぶん与えるかもしれないものを取り上げて、改めて説明してみたいと思う。

さて、今年の1月に、ラメッシの夢を見た――観光ツアーでインドへ旅行に行ったら、最終日にラメッシがサプライズで登場し、でも別にスピリチュアルな講話をするわけでもなく、ツアーに参加していた子供たちと楽しく遊んだり散歩していたりした、というまったくたわいもない内容の夢であった。

でも、夢から目覚めたあと、とてもなつかしくて、うれしくなり、「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の日本語版の出版をラメッシも喜んでいると、自分の物語の中で、私は勝手に思い込むことにした。

ということで、皆さん。「ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」の本は、値段が高いので申し訳ないですが、コロナ・ウィイルスの影響で外出を控えていらっしゃる方も多いと思いますので、そのぶん、本書に出費していただければ、ありがたく思います。


ニサルガダッタ・マハラジの教えに関する過去のブログ

2017年8月15日ニサルガダッタ・マハラジの教え
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/08/

2017年9月10日ニサルガダッタ・マハラジの教え(2)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/09/

2017年9月22日ニサルガダッタ・マハラジの教え(3)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/09/22/

2017年10月14日ニサルガダッタ・マハラジの教え(4)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/10/
2
017年11月5日ニサルガダッタ・マハラジの教え(5)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/11/

2017年12月10日
ニサルガダッタ・マハラジの教え(6)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/12/



[今後のイベント予定]
2020年5月17日(日曜日)(岐阜県岐阜市)
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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(5)2020年02月17日 15時29分56秒

3月中旬頃に、いよいよPointers From Nisargadatta Maharajが、ニサルガダッタ・マハラジが指し示したもの」というタイトルでが発売されることが決まった。次回のブログで、価格、目次を公表する予定です。

先日の会でもお話ししたことであるが、ニサルガダッタ・マハラジの教えを理解するためには、彼がよく使う基本的言葉の正確な定義というか意味をまず理解することが重要であろうと、私は思っている。

たとえば:
意識、絶対、気づき、主体と対象、観念化(対象化)、意識の機能などなど。

(意識、絶対、気づき、主体と対象については、昔のブログに書きましたので、そちらをご参照ください)。

今日は今回の本にたびたび出てくる、「観念化(対象化)」、「意識の機能」という言葉について、簡単に説明してみよう。

「観念化(対象化)」とは;

今、皆さんがどこでこのブログを読まれていても、皆さんの目の前に一つの映像世界(→崇高な言葉を使えば、「顕現」)が広がっているはずである。もし人が何の思考も感情もなく、ただその映像(顕現)を眺めているだけであれば、それは「観照」と呼ばれる。その状態では、顕現はただ顕現であり、その中に分離も区別もなく、「私が」「○○を」「見る」という三つ組みがなく、ただ意識の機能として「見ること」が起こっているだけである。

しかし、それからマインドが介入してきて、その映像世界のある部分を区切って、「これはパソコン、これは同僚の○○さん、これはボールペン、これは電子レンジ、これは机、あれは上司……」と名前をつけて、区別する作業をおこなうとき、これがニサルガダッタ・マハラジが言う「観念化(対象化)」である。

その「観念化(対象化)」が始まるとき、私はそれぞれの対象物の人間的物体的主体となり、対象物との間に二元的関係を作る。

私が観念(対象化)を始める前は、私は一個の人間物体ではなく、顕現した意識そのものである。しかし、私の中で対象化が始まる瞬間、私はパソコン、同僚の○○さん、ボールペン、電子レンジ、机、上司に対する人間物体となる。

そして、肝心なことは、誰もこの観念化(対象化)を意志で止めることはできないし、観念化(対象化)が自動的に起こらなければ、私たちは人間として機能することはできない、ということだ。これができなくなる病気は、医学的には「認知症」と呼ばれている。

ニサルガダッタ・マハラジが言わんとしていることは、絶対的観点から見たら、人間的主体(相手から見れば、それもまた一個の対象物である)対対象物という関係は幻想であり、「私」は一個の対象物でも、一個の人間的主体でもありえないことに気づくことが、「目覚め」である、ということである。

人間関係で言えば、私たちは相手によって、「娘、息子、母親、父親、妻、夫、友人、恋人、部下、上司、友人」などなど様々な役割になるわけであるが、そのどれも(映像の中の)役割にすぎず、やはり「偽物」(今回の本では、この言葉がたびたび出てくる)である。私たちにできることは、それを役割にすぎないことを認識して、俳優を楽しく演じるだけである。

この説明で、「どうやって私たちは観念化を止めることができますか?」(前回のブログ参照)という質問に対して、マハラジがダメ出ししたか、理解していただけたと希望する。

そして、「意識の機能」:

顕現している意識は、すべて「視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚」の五感の機能と感情・思考の機能として、ただ起こっている。

今ここで、私の中で、過去数秒間に起こっていることを、一瞬一瞬止めて、言語化すれば;

視覚:机にパソコンとその周辺背景が見え、パソコンのキーボードの上に、二つの手が忙しく動いていて、パソコンの画面に文字が打たれていくのが見える
聴覚:キーボードを叩く音、外の工事の騒音、メールが来た合図が聞こえる。
味覚:特になし。
触覚がキーボードに触れている感触、その他、体の一部が、椅子、床に触れている感触が感じられる。
嗅覚:特になし
思考活動:今日はちょっと疲れているなあ→お腹すいた→ランチ、何を食べよう?→冷蔵庫に何かあったけ?→あ、今日はあとで郵便局へ行かなくちゃ、という思考の流れ。
感情活動:特になし。

今、この文章を書くために言語化(対象化)をしたが、実際は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚と感情・思考が、機能としてただ起こっているだけである。

そして、先ほども書いたように、この機能の流れには、「私は」「○○を」「見る(聞く、味わう、嗅ぐ、触る、考える、感じる)」という三つ組みがない、つまり、私たちが自分だと思っている(者やイメージ)は関わっていない(=個人的行為者というものは存在していない)。意識の機能は、個人的行為者もなく、自動的というか、自然に起こるだけである。

以上のような話を先日の会ではお話した。

わかってしまえば、とても科学的でシンプルな話で、だから私はマハラジの教えを「主体の科学」としてとらえている。今私が平凡に書いたことを、もう少しスピリチュアルな教えらしくロマンチックに語れば、ラメッシの次の言葉のようになる。

全気づきの完全な状態の中では、
それは、その気づきに気づいていません。
それから、意識がAum(オーム)の疼きへと動き出し、
そして、夢‐創造が始まります。
それは存在していることを意識します。
それは、「私は在るという性質」の愛の中に没頭して、
自分自身を二元性の中に表現します。

(今回の本の、付録3「全真実」という詩形式の文章の冒頭)

ニサルガダッタ・マハラジの教えに関する過去のブログ

2017年8月15日ニサルガダッタ・マハラジの教え
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/08/

2017年9月10日ニサルガダッタ・マハラジの教え(2)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/09/

2017年9月22日ニサルガダッタ・マハラジの教え(3)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/09/22/

2017年10月14日ニサルガダッタ・マハラジの教え(4)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/10/
2
017年11月5日ニサルガダッタ・マハラジの教え(5)
http://simple-dou.asablo.jp/blog/2017/11/

2017年12月10日
ニサルガダッタ・マハラジの教え(6)
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3月に予定していました、下記の二つの会の開催を中止します。

2020年3月15日(日曜日)「非二元の教えを生きる会」(東京都新宿)
2020年3月20日(金曜祝日)「私とは本当に何かを見る会」(東京都新宿)



[今後のイベント予定]
2020年5月17日(日曜日)(岐阜県岐阜市)
「ニサルガダッタ・マハラジの教え」



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本と出版の未来2019年11月02日 08時29分08秒

「シンプル道の日々――2007-2018」(アマゾン・キンドル版)本体価格500円



ラメッシ・バルセカールの「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)については、出版時期が決まりましたら、続きを書きます。

今日は、電子書籍などの新しい形態の読書について、最近考えたことを書いてみたい。

この夏から、私もついに自分の本をアマゾン・キンドル版にして、販売し始めた。

電子書籍自体は、5年ほど前からタブレットで読み始め、特に洋書は海外から送ってもらう時間とお金がもったいないので、最近はほとんど電子書籍版を読んでいる。

電子書籍は、わからない単語や言葉について、その場で辞書をひけること、関連情報をやはりその場で、ネットで調べられること、そしてたくさんの本を一つのデバイスに入れることができるので、本をまわりに置いておかなくてもいいなどの、紙の本にない利点がある。

今でもあえて言えば、紙の本のほうが好きだとは思うけど、でも電子書籍も慣れれば、けっこう便利で読みやすい。最近古いタブレットが壊れて、新しいものに買い替えたので、なおさらそう思うのかもしれない。

作る側・売る側のメリットで言えば、なんといっても在庫をかかえなくてもいい、ということに尽きる。印刷する前までの作業は紙の本と電子書籍はそれほど違わないが、そのあとの流通コスト、在庫管理コストは、電子書籍の場合は、紙の本より比較できないほど安い。

だからこそアマゾン社が、無料であらゆる人に電子書籍を販売できる機会を提供できるわけである。仮に一つ一つの本が、ほんのわずかしか売れなくても、それが多数となれば、利益がでる。そういう薄利多売のシステムになっている(ようである)。

ただし、たくさんの人が参加すれば、質はピンキリになるのは免れず、アマゾン社は細かいところまではチェックはしないようなので、買う側はリスクを覚悟する必要がある。洋書の電子書籍版を読んでいると、編集や翻訳(他の言語から英語に翻訳されたもの)がひどいものにも、たまに出会うことがある。

それでも、今まで大手出版社が出さなかった本も個人が出すことができ、たとえ少数の人でも、たとえ読者が一人でも読むことができるシステムは、著者と読者が出会う機会を増やし、出版の多様性が広がるという意味ではよいことだと、私は思っている。

それから、今はまだ多くの人に利用されてはいないが、これからの出版の形態としてプリント・オン・デマンド、つまり、注文を受けたときに、1冊ずつ印刷して、注文者に発送するという形態も、これからはもっと普及するだろうと思う。将来的には、個人用の安価な製本機能付きプリンターが出回ったら、ダウンロードした電子書籍に一人ひとりが自分の好きなカバーをつけて、自分オリジナルな紙の本を作ることも可能になるかもしれない。

現在、日本の町から本屋さんがどんどん減って不便で残念なことではあるけれど(私の散歩コースにあった書店が最近なくなったので、現在徒歩圏内に書店がついにゼロになってしまった)、新しい形態で人と本との関わりはこれからも続いていくことだろう。

で、「シンプル道の日々――2007-2018」(アマゾン・キンドル版)ですが、最初は、ブログの数があまりに多くなり、自分でもいつ何を書いたかがだんだん思い出せなくなったので、自分自身のために、探しやすいように目次をつけて、テーマ別に整理しようと思ったことから始まった。それから、せっかく目次もつけたので、誤字・脱字等を修正し、その他表現も一部直し、アマゾン・キンドル版にして公開しようと思い立った。

無料で提供しているものを有料にして売れるのかどうかとは思ったのだけれど、ひょっとしたら、シンプル堂にお小遣いをくださる奇特な方もいるかもしれないと希望し、有料版にすることにした。2007年から2018年までに書いたブログから約9割くらいを収録し、付録として2002年から2005年に書いた文章も10個ほど掲載してある。総文字数約42万字、普通の単行本の2冊分くらいの大作(笑)である。格安なので、よろしくお願いします。

大まかなテーマ(目次)は下記をご参照ください。




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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(2)2019年09月21日 08時13分22秒

ラメッシがどんないきさつで、Pointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の原稿を書き始めたのか――その詳しい経緯が本の「はじめに」で、ラメッシ自身の言葉で綴られている。

彼は元々は銀行家で、文書を書いて発表したいとか、作家になりたいという気持ちを人生で一度もいだいたことがなかった。

ところが、あるとき自分の内側から、マハラジの教えについて書きたいという抗えない情熱がやって来て、自分で考えて書くというより、書き取らされるという形で、ほとんど修正することもなく、彼はどんどん文章を書きためることになった――これはマハラジがまだ生きていた頃の話である。

ラメッシは、マハラジがスピリチュアル系の物書きをあまり好まなかったことをよく知っていて、またマハラジの教えについて公に書いたり、サットサンの外で話し合ったりしてはいけないというルールがマハラジのサットサンにはあったとも書いている。

だからラメッシはそれをマハラジにも誰にも言わずに、自分のための覚書として、将来発表することもまったく考えず、書き進めていた。

ところが、原稿が25ほどたまったとき、マハラジに黙ったままこのまま書いていていいのかどうか迷って、同じくマハラジの帰依者である友人に相談した。すると、ある日その友人がマハラジにラメッシの原稿の話題のことを持ち出すと、ラメッシはマハラジに叱られるかもしれないと恐れていたのに、マハラジはとても喜んで、祝福してくれたという話である。

そのあと、「アイ・アム・ザット私は在る」の編集者にその話が伝わり、彼は原稿を一読して、すぐに出版を決め、マハラジが亡くなった翌年1982年(ラメッシが65歳のとき)に初版が発行されている。

Pointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の構成を簡単に紹介すると:

まずラメッシが驚異的な記憶力で、マハラジの日々のセッションを再現した文章が57個あり、最後の57番目の文章は、マハラジが亡くなったときの様子と翌日の葬式の話で締めくくられている。

それからその他、付録として3つの文章が掲載されている:
*The Core of the Teaching(教えの核心)――ラメッシが改めて、彼自身の言葉でマハラジの教えの核心を要約している。
*A Note on Consciousness(意識についての覚書)――意識についてあらゆる角度から詳細に説明している。
*The Whole Truth(全真実)――詩的な形式で、最後の最後に「真理とは何か?」「私とは何か?」を綴っている。

私に言わせれば、こんなに「親切」で、至れり尽くせりの非二元の教えの本はないだろうと言ってもいい本である。まさに「パーフェクト非二元」――昔、大学受験業界にいた頃、参考書に「パーフェクト〇〇」というタイトルの本を時々見たことがあったけど、まさにそんな感じだ。

次回は、その「親切」の意味をもう少し詳しく説明してみよう。


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ラメッシ・バルセカールPointers From Nisargadatta Maharaj(1)2019年09月07日 10時38分30秒

ラメッシ・バルセカールのPointers From Nisargadatta Maharaj「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の本の作業が進行している。

ラメッシ・バルセカールには、すでに翻訳出版されている「誰がかまうもんか?!」、「意識は語る」(ナチュラルスピリット発行)のような、多くのいわゆる講話集(弟子たちが講話を集めて編集した本)と、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)のように彼自身が自ら書いた本がある。彼が自ら書いた本は講話集に比べると、より説明が詳細であるという長所と文章が難解で読みにくいという欠点がある。

私は、1980年代に発行された本書「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)と、Explorations into the Eternal( 永遠への探求)、Experience of Immortality(不死の経験)を「ラメッシの初期三部作」と呼び、長い間、バイブルのように読んだものだ。夜眠る前に読むと、あまりに英語が難解なので、長い時間読むことができず、数ページ読むと、すぐに眠りに落ちた。ラメッシのサットサンに行って、そこで出会った人たちとラメッシの本の話をしたとき、私が「ラメッシの本は睡眠薬ですね」と言ったら、彼らも皆笑って同意してくれた。英語が母国語の人たちにとってもラメッシ自身が書いた本は、読むのが簡単ではないのだ。

英語が難解という理由で、翻訳に関しては、この3冊を私が翻訳することはたぶん無理だろうと思っていた。ラメッシは話すときはそれほど難しい英語を使うわけではないのに(だから、講話集の英語は読みやすい)、書く英語はとんでもなく難しい。英語を母国語とする著作家の文章の中にだって、まず見ないような英単語まで出てくる。

ところが、(いつ頃のことかは忘れてしまったが)ラメッシの「意識は語る」の翻訳が終わったあとも、まだラメッシの本を翻訳し足りない気がして、でも別の講話集の翻訳はやる気が起こらなかった。それから、あるとき、「もしラメッシの本をまだやるなら、初期三部作の中のどれか1冊しかないだろう」と思い至った。それで、三部作の中で、一番読みやすく、説明もわかりやすく、しかもマハラジの一番リアルな姿が描かれている(と私が確信している)Pointers From Nisargadatta Maharaji「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)に決めて、翻訳に取り掛かることにした。

マハラジがラメッシにほとんど乗り移って書かせたとさえ言える本書を翻訳し始めたら、けっこう楽しくて、ラメッシの師への愛情と、ラメッシを通じて描かれるマハラジの魅力とパワーに、改めて心打たれた。

マハラジのように自ら本を書かない賢者の場合、本の中の賢者のイメージは、本を作ることに関わった人たちの編集の仕方によって、ずいぶん違うということを私はいつも感じてきた。私の勝手な印象では、「アイ・アム・ザット私は在る」の中のマハラジは力強いが高所から説いている感じがあり、一方「意識に先立って」の中のマハラジは少々弱々しく、厭世的ですらある。

しかし、「ニサルガダッタ・マハラジの教え」(仮称)の中でラメッシが描くマハラジは陽気で、軽快で、数学者に匹敵するほど論理が冴え、そして遊び心に満ちている。たぶん、実際のマハラジはこんな感じの人だったのだろうと思う。

(翻訳は難攻したが)ようやく本書の出版(予定)にまでたどり着いて、喜んでいるというかホッとしているこの頃である。いや、まだたくさんの作業が残っているので、本当はホッとしてはいけないのだけど。

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「グルジェフ伝」2019年06月30日 16時23分55秒

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皆様、梅雨&暑中お見舞い申し上げます。8月の終わりまで、ブログをお休みします。


20代、30代に非常に影響を受けた教えとして、以前一度、グルジェフの教えについてブログに書いたことがある。

「グルジェフの教え」2016年2月2日



最近また、今まで読んでいなかったグルジェフ関係の邦訳本を読んでいる。その中でも最大のものが「グルジェフ伝」(ジェームズ・ムア著 平河出版社)で、邦訳で600ページもある大作だ。

1866年から1949年までのグルジェフの生涯が時代背景とともに非常に詳細に描かれている。彼は中央アジアで生まれ、フランスのパリで亡くなっているが、その間に旅した(移動した)距離と場所を見ると、ものすごい距離を移動している。時代は、ロシア革命、第一次世界大戦、第二次世界大戦の頃で、彼の人生はまさに「戦争時代をずる賢く生き延びた」人生だった。しかも、自分だけでなく、彼は弟子たちや家族を引き連れ、戦争という過酷な状況を貧相にではなく、王者のように生き延びた人生だった。

今回、伝記を読んで、グルジェフという人に関してはっきりとわかったことがある。彼は今の時代でいうある種のメンタリスト(他人の精神を自由に操る人)(笑)だ。彼はありとあらゆる能力をもち、カリスマ的人格で人々をひきつけては、(ワークという目的のために)翻弄し、突き放す。

グルジェフと出会った誰もがグルジェフを「とんでもない人」と言うが、彼の霊的知識、達人的生活能力、強靭な体力、政治・経済状況を見通す能力、そして何よりも人心掌握術とビジネス的才覚は並みはずれている。そして、彼はほとんど詐欺師並みにずる賢い。どこの町に行っても、その町の有力者とコネをすぐに作り、食料と部屋を確保し、金持ち相手にビジネスをする。どれだけ戦争中の物資欠乏時代でも、彼のいるところには食料が豊富にあり、最晩年、彼はパリのマンションで毎晩大勢の人たちと晩餐会をやっていたという。

そういった特異な性格の一方で、彼が自分の家族(妻、両親、兄弟姉妹)に寄せる愛情は非常に人間的なものだ。敬愛する父親はトルコ軍によって殺されてしまうが、晩年はその他の家族(母と、弟と妹の家族)をパリに呼び寄せ、生活の面倒を見る。

彼と多くの弟子たちとの確執、特に彼のモスクワ時代の弟子、ウスペンスキーとの愛憎は興味深い。二人は何度か和解を試みたが結局は成功せず、ウスペンスキーは晩年は酒におぼれて、グルジェフよりも早く死ぬ。死後、ウスペンスキー夫人が「奇跡を求めて」の原稿をグルジェフに見せ、グルジェフはそれを読み、「自分の言ったことが正確に書かれている」と夫人に出版の許可を与えたという。

本当に「とんでもない人」――こんなハチャメチャな人の弟子に誰がなれる?(笑)と思いながら、「グルジェフ伝」600ページを何とか読み終えたところだ。


その他参考図書
「奇跡を求めて」(PDウスペンスキー著 平河出版社)
「ベルゼバブの孫への話」(GIグルジェフ著 平河出版社)
「生は〈私が存在し〉て初めて真実となる」(GIグルジェフ著平河出版社)
「グルジェフ・ワーク」(KRスピース著 平河出版社)
「グルジェフ・弟子たちに語る」(GIグルジェフ著 めるくまーる社)


〔新刊発売〕

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今さらですが、手塚治虫2019年05月05日 10時27分21秒

ここ二か月ほど、手塚治虫の漫画を読みふけっている。

なぜ今になって、手塚治虫(1928年-1989年)かというと…

たまたま2月に読んだあるインタビュー記事の中に、手塚治虫の漫画に言及があり、ちょっと興味を惹かれたからだ。幸い、図書館に手塚治虫全集が入っている。

実は、子供の頃読んだ「リボンの騎士」、テレビで見た「鉄腕アトム」、大人になって読んだ「ブラックジャック」以外、ほとんど手塚治虫の作品を読んだことがなかった。「ブッダ」、「火の鳥」など手塚治虫の主要作品を読みたいと思いながら、私はお金を出して買ってまで読むほどの漫画の愛好家ではない。

それでこの機会に、主要作品をかたっぱしから読み漁り、「陽だまりの樹」、「ブッダ」、「火の鳥」、その他全部で40冊くらいを読んだ。こんなに漫画を集中して読んだのは、たぶん子供の時以来である。マインドの集中力がいらないので、気軽に読めるのが漫画のいいところである。

改めて驚いたことは、手塚治虫って、こんなに多作で、幅広いジャンルを描いているんだ、ということだ。SF、歴史、子供向け、恋愛、その他。しかも早死である。短い期間に膨大な作品。たぶん、仕事中毒の人だったのだろう。

それからもう一つ驚いたことは、彼は今日のAI(人工知能)時代、そしてこれからやって来るかもしれないAIによる人類支配の時代をはるか昔に予見していたことだ。

彼の作品の中に、人間のように話し、考え、行動し、しかも人間を超える能力をもつ存在――いわゆる人造人間――を創造したいという科学者たちがよく登場する。そして、そういった科学者たちが創造したものが、逆に人類を混乱させる、あるいはどちらがどちらを支配するかをめぐって、人類と対立するというテーマがある。

1949年の作品、「メトロポリス」の最後は、次の文章で締めくくられている。

科学の最高芸術である生命の創造はただむだに人間社会を騒がせただけであった。おそらくいつか人間も発達しすぎた科学のためにかえって、自分を滅ぼしてしまうのではないだろうか?

もう一つ彼の作品に色濃く流れるものは、仏教的因果応報、輪廻転生の思想である。彼は「ブッダ」を描くくらいだから、仏教思想をよく知っていたと思われるが、でも同時に、宗教が結局のところ政治の権力闘争の道具に使われるあやうさもよく描いている。

「火の鳥」の中で印象的だったのは、奈良時代を描いた「鳳凰編」:

(あの有名な奈良の)大仏建造のための資金集めに奔走したあげく、結局仏教が政治の道具として使われたことを嘆いて自ら死ぬ僧がこうつぶやく。「宗教など、くだらない。私はただ政治に使われた道具だったのだ」

それから、今から数千年(?)先未来のシャドー(影)対光一族の教団対決、そして奈良時代の狗族対仏教の対立を描いた「太陽編」:

それまで虐げられていたシャド―が権力を握ったとき、その指導者はこう言い放つのだ。
我々は新しい宗教を作り、全人類をわれわれに従わせる。信じないものはかたっぱしから処罰

このくだりを読んで、「数千年先の未来は、全世界が北朝鮮か!」と、私はツッコミを入れたが、たぶん、そうなるのかもしれない(他の作家のSF小説でも、巨大宗教教団とAI一族が入り乱れて、権力闘争を繰り広げる世界が描かれているのを読んだことがある)。

「ブッダ」も大変面白く読めた。ブッダの生涯、そしてブッダが生きた時代のインドの状況も詳しく描かれ、インド史の勉強にもなってよかった。

すべての人の平等を説くブッダの教えは、その時代の宗教的権力者からは嫌われ、迫害の対象となる。手塚治虫が描くブッダは、高見から説教する人ではなく、苦しんでいる人と一緒に苦しむとても人間的なブッダの姿だ。

そして、長年、苦楽をともにした愛弟子が、昔自分の親を殺した敵への復讐心に駆り立てられて、戦争へ出かけ、結局死んでしまい、ブッダが、「自分が長年教えたことは無駄だったのか?」と号泣する場面は、私にとってはブッダ全編の中でも一番印象的な場面だ。

今も昔も、「平和と平等」は人間のマインドには本当には届かず、むしろ「復讐するは我にあり」のほうが、はるかに人間のマインドにはアピールすることが、「ブッダ」「火の鳥」の中でも繰り返し描かれている。

ブッダがもし、自分が生きた千年後(奈良時代)の日本での仏教振興を見たら、喜ぶのか、それとも悲しむのだろうか…大勢の庶民を犠牲にして建てられた大仏を見て、「こんなものは、くだらない」と言うかも、だ。たぶん、仏教や政治の権力者たちより、この時代の仏教支配に対抗して狗族のために戦った犬上宿禰とむしろ気が合ったかもと、私の中で勝手に「ブッダ」と「火の鳥」をつないだ物語を想像してみた。犬上宿禰は「火の鳥」の全登場人物の中で、私が一番気に入ったヒーローである。

あともうしばらく、手塚治虫漫画タイムが続きそうだ。


〔イベント〕

2019年5月26日(日)「私とは本当に何かを見る会」(東京都新宿) 予約受付終了 
2019年6月15日(土)「ダグラス・ハーディングー自分とは何かを見る会」(岐阜県岐阜市)
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〔今後の会の予定〕
2019年6月29日(土)「非二元の教えを生きる会」(東京都新宿)  


〔新刊発売〕

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