「世界は幻想である」 とは?(3)2018年02月16日 11時52分04秒

マハラジのような賢者に、「なぜ賢者は世界の苦しんでいる多くの人たちに対して何もしないのでしょうか?」という主旨の質問が為されることがある。
 
それに対してマハラジが何と答えたかというと、

人々の苦しみは幻想だからだ

もちろんこの答えはほとんどの人には理解されない。
 
賢者が世界をどう見ているのか、一番わかりやすいたとえは、「部屋で映画やドラマを見ているようなもの」と言うことかもしれない(似たようなことをマハラジも言っている)。 賢者にとっては、「世界に対してどうしてあなたは何もしないのか?」  という質問は、みんなで映画やドラマのDVDを見ているときに、悲惨な事件や出来事や苦しんている人たちが映し出されているのを見て、一緒に見ている誰かから「どうして私たちはこの人たちの苦しみを救わないの?」  と尋ねられるようなものにちがいない。

その答えとは、「これは映画という幻想で現実じゃないから、何もできない。だからこれは現実じゃないと目覚めるしかない」となるはずだ。

あるいは、映画やドラマに出演している登場人物が、「私の人生はどうしてこんなに苦しいの?」と叫んでいたら、「ああ、それはあなたが演じている幻想の役割だから、それから目覚めれば、どこに苦しみがあるの?」とでも言うようなものだが、そんなことをしたら、物語をぶち壊してしまうことになり、DVD鑑賞も台無し(笑い)になるので、誰もそんなことは言ったりしないけど。

しかし、このたとえはわかりやすいが、欠陥もある。DVD鑑賞の場合は、DVDの映像世界と視聴者たちは完全に分離しているが、賢者の場合、自分と見ている世界に分離はないことを知っている。彼らは世界を幻想だと知り、自分の肉体・マインドもその幻想の一部であると知っているが、同時に自分が世界と一つであり、自分の中からその幻想が現れていることも知っている――よいことも悪いこともすべては「私」も表現、顕現である。

だから彼らは何もしないわけではなく、世界と一つであることによって、目の前に展開することで必要なことは何でもやるはずである。ただ、ほとんどの賢者は社会改善運動とか平和運動とか慈善事業とかには積極的ではないと思う。それは彼らがそういう運動に反対しているわけでも批判しているわけでもなく、ただ自分がやるべきことだと感じないだけの話であろう。

そういった運動に情熱がある人たちは世界中にたくさんいる。あらゆる人たちは、霊的な探求者もそうでない人も、みな生まれもっての自分の情熱というものがあり、人生は自分のその情熱に従って自然に展開するものだと私は今ではそう理解している。

ちなみにマハラジやラマナ・マハルシのような賢者が世界の平和に貢献していないというのは、理解のない人たちの見方で、彼らはただ部屋に座っているだけに見えても、奥深いところで本当の平和を実践し、それを大勢の人たちに教え、その影響力は現代にまで至っている。

ダグラス・ハーディングは「世界の平和は自分から」と常に教えてくれた。その意味とは、もし自分が平和であれば、自分から自分のまわりの人たちへ、そしてそれから社会全体へその平和の影響は広がるだろう、というものだ。そして平和であるために、自分とは本当に何かに目覚めることが必要ということになる。

結論的に言えば、自分の本質に目覚めれば、「世界は幻想とは?」の問いや議論はほとんど意味のないものとなり、誰の(幻想)人生も平等に喜びと苦痛があることを理解し、普通で平和な人生をただ生きることしかない――いつもながら、平凡でつまらない結論ですが。
 
[サボ様への回答]

ロバート・アダムスについては過去の下記のブログご参照ください。I AM 瞑想のやり方を紹介してあります。
 http://simple-dou.asablo.jp/blog/2012/12/26/

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[今後のイベントの予定]
2018年3月31日(土)「私とは本当に何かを見る会」(東京)
2018年4月15(日)「ダグラス・ハーディングの会」(岐阜市)

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「世界は幻想である」 とは?(2)2018年02月04日 08時45分39秒

 前回、非二元系の教えにおける「世界は幻想」の定義を説明した。インド系の賢者はこの観念を多用するが、しかし、私の経験によれば、「世界は幻想である」 という観念は非常に誤解と迷妄を与えやすく、生半可に受け取ると多くの場合役に立たないどころか、人生に悪影響を及ぼすことすらある。
 
ダグラス・ハーディングは「幻想」という言葉を嫌い、彼は自分の著作やワークショップでまずこの言葉を使ったことがない。ダグラス・ハーディングからすれば、世界は幻想どころか「神の顕現である」。それは驚嘆して丁重に扱うべきものであって、軽蔑したり、拒否したりすべきものではない。

私はこの点に関しては、インド系の賢者よりも、ダグラスの表現のほうが好きだし、自分の目の前の世界(神の顕現)に展開すること(よいことも悪いことも)に毎瞬明け渡すことが、いつでもどこでもできる霊的な練習(修行)だと思っている。

言葉で書けば、「幻想」と「現実」と二つの状態があるように思われるが、実際はそれは硬貨の両側のように二つで一つであり、そのことはマハラジもダグラスも強調している。有名な般若心経  の句、「色即是空」「空即是色」も、「涅槃と世俗は一つである」という意味だ。

私が思うに、「幻想」ということでいえば、「世界は幻想である」という観念より、むしろ、「私と世界は分離している」「私は1個の肉体・マインドである」という観念のほうがはるかに幻想であり、それを徹底的に調べるほうがはるかに霊的探求においては役立つ。

「自分とは本当に何か?」がわかれば、「世界は幻想かどうか」という議論はほとんど意味もないし、そして重要なことは、私たちが「世界は幻想だ」  と考えても、「世界は現実だ」  と考えても、その他世界をどう考えても、人生の苦しみがなくなるわけではないということだ。肉体が他の物にぶつかれば、それはどんな考えをもっている人にとっても「痛い」し、病気がふりかかれば、やはり「苦痛」だし、仕事、家庭生活、その他において、辛いこと(苦しみ)は誰にでも平等にある。

ただ「自分とは本当に何か?」がわかれば、すべてのことをそれほど深刻に受け取らないだけのことだ。

マハラジは、自分の癌の苦痛を個人的に受け取らず、「私という存在性の表現」みたいな言い方をし、さらに彼は、世界には一定量の苦しみがあり、一人ひとり(というより一つ一つの心身組織)にはその苦しみの配分が与えられていると言う。  つまり、マハラジが言っていることは、人生における一定量の苦しみを誰も避けることはできないという意味だ。

話を「幻想」に戻すと、昔、私が「般若心経」の言葉の意味がどうしても理解できず、格闘していた頃、ある日やっと気づいたことがあった。  それは「幻想」と「現実」の定義が、人間の日常的感覚(二元的世界の感覚)と般若心経では真逆であるということである。
 
般若心経は「五感で感じられたり見られたりするものは実体がない=幻想である」と言うが、私たち人間の感覚からすれば、「現実とは五感で感じ、認識できるもの」で、幻想とは「五感で感じ・認識できないもの」ということになる。

般若心経の観点と論理から言えば、もし私が自分の手をテーブルにぶつけて、痛みを感じれば、「痛みを感じるゆえに、痛みは現実ではない」ということになる。

このことに気づいて、ようやく人間的マインドと論理の枠組みでは般若心経をどうしても理解できないことを理解したというわけだ。

 
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「世界は幻想である」 とは?(1)2018年01月22日 09時34分00秒

 皆様、明けましておめでとうございます。今年も気楽にお付き合いください。
 
今年はまず、非二元系の教えに関して、私のコンサルティングで皆さんによく聞かれる、 いくつかの質問について、(今まで書いたこととも重複するが)、書いてみよう。

最初は、「世界は幻想である」という、特にインド系の賢者が好んで使う観念についてである。
一般的非二元系の教えから、ここで「幻想」という言葉を定義すれば、

幻想とは:

1一時的である。
2それ自身で独立していない(何かの支えが必要である)
3実際には存在していない

1の定義は理解するのはそれほど困難ではない。私たちの世界を構成するどんな物も生き物(人間物体を含む)も状況も感情・思考も永遠ではなく、始まり(誕生)と終わり(死)がある。

2の定義「それ自身で独立していない」という話は、3つのレベルがある。最初のレベルは、世界の中の物と生き物(人間物体も含む) は、他者との関係において存在しているということだ。これも自分の周囲を眺めて見れば、明らかである。

あらゆる物は他の物に囲まれ、接触して、支えられて存在している。物体Aは物体Bや物体Cとの関係においてのみ存在している。私たちが自分だと思っている人間物体でさえ、それは床や空間との関係においてのみ存在し、空気や食物の助け(支援)があって、生存を維持することができる。この定義の理解も困難ではないと思う。

「それ自身で独立していない」という定義の2番目のレベルの、非二元系の教えがいつも強調する、「私があるとき、世界はある」   あるいは、マハラジ流に言えば、「『私はある』という概念の一刺しが起こるとき、夢のように原因も理由もなく、世界は現れる 」というものだ。

逆から言えば、「世界は、私が存在していなければ、存在していない」
 
「私はある」という概念のない熟睡中は、世界がないという事実を考えてみれば、これも明らかであろう。

そして三番目のレベルの話は、「私は在る」という意識さえ、一時的であり、独立したものではなく、それは肉体の支援が必要で、「私は在る」の土台である(マハラジの言葉による)「絶対」の上に一時的に現れているものにすぎない。「絶対」に関しては、それがどんなものかを言葉で語ることはほとんど不可能であるにもかかわらず、Prior to Consciouness(意識以前)の本の中で、マハラジは「絶対」についてぎりぎり奮闘して語っている。
 
3の定義「実際には存在していない」も、言葉での説明が難しい。一番わかりやすいたとえは、「世界はテレビや映画の映像のようなもの」と言うことである。テレビや映画を見ているとき、私たちはそれを非常に現実に感じるが、しかし、実際は、映像は単なるイメージにすぎず、物や人物はそこには存在していない。

本当は、「実際には存在していない」という定義は、「私が思うようには存在していない」  と言うほうが正確でわかりやすいかもしれない。

「存在していない」と言うと、マインドは 「どうして私が見ているものが存在していないなどと言えるのか?」 と反論するはずだ。私が今目の前に見ている、パソコンも、コタツの上のカップも、コタツの向こうに見える仏壇も非常に「存在している」ように見える。確かに「存在しているように」見えるが、しかし私が想定しているように物は存在していないことは、ダグラス・ハーディングが紹介した実験を少しやることで確かめることができる。

私が今コタツから立ち上がって、コタツから数メートル離れたところから見れば、パソコンも、カップも、仏壇も微妙に大きさ、形が変わっている。私たちはそれがずっと同じままだと想定しているが、物は観察者から距離によって、姿形を変えたり、消えたり現れたりするのだ。この話は、定義1と2とも関連している。

以上の定義により、「世界が幻想である」とは、  言葉で説明すれば、

世界は一時的である。
世界はそれ自身で独立していない。
世界は実際には(私たちが思うようには)存在していない。

ということである。

では、幻想の反対、現実(本質、絶対)とはどう定義されるのかと言えば、
・永遠である
・他の何の支援も必要なく単独である。
・実際に存在している。
 
そして、「私とは本当に何か?」という 非二元系の探求は、言葉を変えれば、「永遠で、単独で、実際に存在している」ものの探求ということでもある。
 
 
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ブログ10周年(祝―自己満足)2017年12月21日 09時03分24秒

 2007年に今のブログを開始したので、今年は10周年である。2007年は、ダグラス・ハーディングが亡くなり、そして世界経済がリーマンショックに揺れた年だったので、印象に残る年だった。

あの年にブログを始めたのは、超絶的な体調不良から少し回復し、何か新しいことを始めようという気力がようやく湧いたからだ。
 
あれから10年、適当に書き始めて、適当に書き続けて、今日に至っている。原稿料はどこからも出ないけど、締め切りもなく字数制限もないというこの気楽感と適当感が私は気に入っている。そして私が自分の仕事を宣伝する数少ない媒体でもある。

いつまで書き続けるのか、それは「神の意志」 なのでわからないが、そのときまで、これからも適当に書き続けていく予定なので、皆様にも気楽に読んでいただければと思う。

さて、最近私のキイワードは「自己満足」という言葉である。この安っぽいイメージの言葉がなぜか最近とても好きになっている――スピリチュアルなことにしても、世俗生活に関しても、小さい満足から大きな満足まで、すべては、他人がどう思おうと、自分が満足すればいいだけの話なのだということを改めて強く思うようになった。

「満足」とは、喜びの別名である。

私の場合、満足を感じれば、満たされる―満ち足りる――感謝が湧く

満足とは、私の場合はこんなものだ。

今日は料理がおいしくできた―自己満足
今日は体の痛みがゼロである―自己満足
今日も暖かいお風呂に入った―自己満足
難しい数学の問題が解けた―自己満足
母の好きな料理を作り、母が喜んだ―自己満足
コンサルティングでお会いした人と楽しく歓談した―自己満足
 今日はブログが完成した―自己満足
風の中で枯れ葉が舞い散っているのを見て、とても美しく感じた―自己満足


主催した会が無事終わり、皆さんと楽しい時間を過ごすことができた―自己満足

本が完成し、出版された――自己満足  (但し、著作にしても翻訳書にしても、中味に関して完全に満足したことは一度もない。出版後にいつも、「ああ、ここをもっとこうすればよかった」というところが必ず出てくるものだ。でも、精一杯やったという満足はあるので、それは仕方ないとあきらめている)

最大の満足とは、
スピリチュアルな探求において、よき先生たち、よき教え、よき本、そしてよき環境に恵まれ、真理を確信できた―自己満足

自己満足―しかし、ラメッシ流に言えば、満足を感じるべき「自己」とは本当は存在していないので、実際は「満足感がただ起こった」という現象である。

日常会話の中で、「それは自己満足にすぎない」という批判的な言い方がよく為されるが、よく考えてみれば、「自己」満足以外にどんな満足もないのだ。

しかし、あるとき以上のような主旨の話をある人にしたら、では「自分は満足しているのに、自分がしたことに他人が満足しない場合は、どうなんですか?」  という質問をされた。

これは色々な場合が想定される。

たとえば、それが仕事の場合、自分がした仕事にほとんどの人から不満を言われたら、それは仕事のやり方や質に関してたぶん考えるべきことがあるという意味だ。

では、家族の中で、たとえば、料理を作った人は自分の料理に満足しているのに、食べている側が満足しない場合は、それはお互いの味覚の違いを理解し、その溝を埋める努力をすべき問題であろう。

あるいは他人は本当は満足しているのに、ある種の意地悪から、あるいは教育的配慮から(先生対生徒、上司対部下のような関係で)「私はあなたのやったことに満足していない」という「ふり」をする(笑)人たちもいる。

というように、他人が関わることは、それがどんな種類の人間関係かで、場合場合で考えるべきことだと思う。

私の自己満足は、多くのことが他人とは無関係なので、安心して(笑)「自己満足」している。
 
[お礼]
今年も、私が関わっている活動に対して様々なご支援を多くの方々からいただき、ありがとうございました。お会いした皆様、ブログを読んでいただた皆様、コメントを寄せていただいた皆様にもお礼を申し上げます。それでは、楽しいクリスマス、お正月をおすごしください。来年のブログは1月下旬からの予定です。

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ニサルガダッタ・マハラジの教え(6)Prior to Consciousness2017年12月10日 07時13分33秒

今回は、ニサルガダッタ・マハラジの教えについてではなく、彼がどんなグルだったのかを書いてみよう。

もちろん私はマハラジにお会いしたことがないので、私がこれから書くことは、本による印象、ラメッシ・バルセカール、セイラ―・ボブなどの弟子たちの言葉、マハラジのサットサンを撮影したDVD, そしてインターネット上の情報などから得たことから、私なりに感じたことだ。

まず、マハラジはグルとしては非常に厳しい人で、いい加減な態度や気持ちで自分のサットサン(真理と交わる場くらいの意味)に来るのを許さないという雰囲気がある。セイラ―・ボブによれば、彼はそういった人たちを自分のサットサンから追い出したとある。

「厳しい」というのは、「何をするべきか、何をするべきでないか」という行為に関してではなく、真理を探究する態度とその動機に関してである。

人々は様々な動機で彼のサットサンにやって来る。すべての人々の動機が純粋な霊的探求のためというわけではなく、マハラジから単に霊的知識が欲しい人もいれば、恩寵を望むだけの人もいる。また自分の知識をマハラジに認めてもらいたいために来る人もいれば、グルになるための秘訣を学びに来る(笑)人もいる。もちろんマハラジが真面目に相手をするのは、ただ「私とは何か」の究極の真理を熱心に探究する人たちだけだ。

彼は鋭い眼力によって、人々がどういう動機で自分のところへ来ているのかを見抜き、時には皮肉を言ったり、からかったり、様々な対応している。

アイアムザット私は在る」(ナチュラルスピリット発行)の頃は、マハラジもまだ元気だったせいか、マハラジに議論をふっかける人もいて、彼もそれなりに応えていた印象があるが、Prior to Consciousness(意識以前――仮称)では、もうマハラジは議論をするだけの体力がなく、「自分の話がわからないなら、家へ帰ってバジャン(神に捧げる賛歌)をやりなさい」  とか、「もうここへ来るべきではない」とただ言うだけである。
 
マハラジは、「自分の話はすべての宿題をやり終えた人たち向けのもので、霊的初心者のためのものではない」と言う。では彼が言う「宿題」とは何か?

それは私が思うに、「宿題をやり終えている」とは、肉体・感情・思考との一体化の解除がある程度進み、エゴ的な執着がかなりなくなっていることだ。

マハラジのところへ、霊的パワーや悟りを求めて来るのさえ間違った動機である。なぜなら、彼はそういったものを提供しないからだ。彼が提供しているのは、「人がいつかそうなるべき状態」ではなく、「人が今そう在る状態」、究極の現実が何なのかという科学的分析である。

さて、今皆さんは、パソコンかスマートフォン(タブレット)でこの文章を読んでいる(見ている)はずである。マハラジの問いを使って、この状況に関して質問してみれば、「何があるゆえに、あなたは自分の世界を認識することが(見ることが)できるのか?」となる。

ここで「目」と答えた人は、「ブー(×)」(笑)です。

そして、マハラジが鋭いところは、マハラジは仮にその人が観念的に自分の質問に正しく答えても(本からの知識を知っていれば、マハラジの問いに知的には正しく答えることは可能である)、その人がその瞬間に本当に自分が答えていることを直観していない場合には、その正しい答えさえも否定するところである。

私が感じるに、マハラジのスタイルはトニー・パーソンズなどと同様に、方法論としては「否定」の道で、そこは弟子であるラメッシとはかなり違うところだと思う。

ラメッシ・バルセカール、ダグラス・ハーディングはどちらかというと「肯定」の方法論である。つまり、彼らは質問者の観点や考え、議論をほとんど否定しない。たぶん、それは観点や考えはたいして重要でなく、どう展開しても、議論や観点、考えが言葉なき認識へ導くわけではないと知っているからだ。それに彼らにはどんな観点や議論も強制終了させることができる伝家の宝刀がある。

ダグラスの場合は、実験があり、ラメッシの場合は、「すべては神の意志」という観念がある。

実はマハラジにも宝刀があるのだが、本書Prior to Consciousnessの中ではほとんど使っていない。それはあらゆる質問に対して、「誰がそれを尋ねているのか?」  という質問で答えることだ。

ラメッシの説明によれば、ほとんどの人が自分の質問に対してマハラジが「誰がそれを尋ねているのか?」 という質問で切り返すとき、マハラジが自分の質問に答えることを避けているという誤解を与えたということである。

私の理解によれば、「誰がそれを尋ねているのか?」という質問の意図は、質問者を質問より以前にある自分の本質へと退却させることだが、ほとんどの場合は、「尋ねているのは私です」→「ではその私とはか?」→「わかりません。だからお尋ねしているのです」みたいな新たな議論に発展してしまいがちで、議論から直観へというマハラジの意図がほとんど伝わらない。
 
Prior to Consciousnessはマハラジの末期癌の影響のせいもあって、明るい雰囲気の本ではない。彼は死にたいと言う言葉は使わないが、自分は早くこのすべてを処分したいと何度か本書の中でももらしている。ただ、読者はそれを「厭世」の勧めのように読むべきではないと私は思う。彼は決して厭世的な人ではなかったと思うし、家庭生活と仕事と霊性を自分のできるかぎり精一杯やり尽くした人だ。

私のなんとなくの印象で言えば、彼は昭和の頑固オヤジのような感じで、厳しいけど、素朴でまっとうで、いざというときには、心優しく、頼りになる近所のタバコ屋のオヤジである。

ラメッシによれば、マハラジはサットサン以外の普段のときは平凡な話し方をする人だったそうで、マハラジ自身、なぜこんな奥深い言葉が自分から出て来るのかわからないと驚いている。彼の知識は本から得たものではなく、すべて直観と経験から出てきたものであり、それにもかかわらずどんな学者やインテリもかなわないくらいの奥深さであることは本当に驚くべきことだ。本の中では彼が、自分のところへやって来る学者系の人たちをからかって遊んでいるところがある。

そして私が彼を非常に敬愛するもう一つの理由は、インドにあって、霊的経験やパワー、名声を売り物にしてグル・ビジネス(弟子や信者、お金をたくさん集めるビジネス)をしなかった希有な人だったからだ。

マハラジは本書Prior to Consciousnessが将来大勢の人たちに読まれることを、1981年の時点ですでに予言している。本としても厳しい本だと思うが、熱心に読まれれば、熱心な探求者たちに役立つだろうと私もそう信じている。

以上、6回にわたって、ニサルガダッタ・マハラジのPrior to Consciousnessについて簡単に解説してきた。

諸事情で完成・発行が大変遅れてしまい、お待ちいただいている皆様には大変に申し訳なく思っています。本書の発売が正式に決まりましたら、改めてお知らせします。

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子供をもつ意味2017年11月30日 16時24分33秒

  (ニサルガダッタ・マハラジの話は、次回にあと一回書きます)
 
 先日のご質問について

先日高木さんの書籍を購入いたしました、ストーン瀬戸物(←これで本名わかりますかね?笑)です。
 高木さんにお聞きしたいことがありコメント欄に書かせていただきました。
 
以前のブログで池田晶子さんの名前をはじめて知り、まだ二冊しか読んでいませんが、どなたかのブログに池田晶子さんが子供を作ることについて、ある書物で書いていて引用され掲載しています。

>親とは自身の否定性を乗り越えるためにこそ、あえて子という否定性を産み出すのである。これが、子作りとは精神の自己克服であるという、荒唐無稽な説である。

http://yoshi-imajuku.m.blog.jp/article/1044544682?guid=ON

この方のブログが読めれば全文が読めるのですが、高木さんは子供を作ることについて、子供ができることについて、どのように考えていらっしゃるのか聞いてみたい、と衝動的に書き込みしてしまいました。
 
高木さんの紙の書物は全部読みましたが、電子書物ではもしかしたら書いている内容かもしれません。楽しいお金3での幸せ父さん・幸せ母さんはわかっていますが、私が自分の子供のことで色々あるもので、何かの機会があればブログに高木さんの考えを書いていただけると、池田晶子さん以外の言葉を聞きたい、と思い、学ばせていただきたく質問いたしました。」

人はなぜ子供を産むのか? 実はその問いには根本的な答えがない。そもそも、子供を産むことにかぎらず、人の人生にまつわる「なぜ」には本当は答えがないのだ。そして子供をもつかどうか、子供が生まれるかどうかは、個人の意志(のように見えるが)、個人の意志には関係ないと私は思っている(この話は今年の2月のブログに書いた)。だから、誰も自分の意志で子供を産んではいない。ノン・デュアル系の教えの伝家の宝刀を抜けば、「すべては神の意志」(笑)――ただそう起こった――である。

しかし、そう答えてしまえば、身も蓋もないし、相対的レベルでは様々な理解な仕方があるとは思う。なので、今日は私が人間関係、特に親しい人間関係について思っていることを書いてみよう。

親しい人間関係(親子関係や夫婦関係)、それは進化を促進するための学習機能だというのが私の理解である。

私たちはお互いを通じて学び合う――それが親しい人間関係の意味だと、私はそう理解している。

私には子供はいないが、20代の頃、自分の両親と折り合いが悪かったときに、親子関係とは何なのかということをイヤというほど考えたものだ。
 
私は子供の頃はいわゆる「いい子」だった。そして私の両親もいわゆる典型的な日本の「いい親」――子供のためなら、自分のことは何でも犠牲にできるタイプの親――だった。
 
 だから、私は考えたものだった。「どうしてよい親とよい子供がお互いにこんなにケンカをしなければいけないのか?」
 
最初は私は、それは考え方・価値観の違いが問題なのだと思ったものだ。

私の両親は非常に保守的な考え・価値観の持ち主で、「子供は親の言うことを聞くべきで、何をするにも親の許可がいる」と強固に信じていた。  子供の頃はそういう親の考え・価値観をよく知らなかったが、大人になって、私(と私の姉妹たち)が自分のしたいことを勝手にやり始めたときに、双方の価値観・考えの違いが非常に鮮明になって、私は驚愕した。

私は子供の頃から「すべての人間は平等で、少なくとも大人になったら、自分のしたいことを自由にする権
利がある」とぼんやりと信じていた。

戦前の男尊女卑、家父長制度を強烈に信じていた私の父は、私の考えを聞くと、いつもこう言ったものだ。

「だから、戦後の教育が間違っていたのだ」

父に言わせれば、親の言うことを聞かなくなった私や私の姉妹は、全員が戦後教育の間違いの結果(笑)ということで、私は戦争や教育に関して激しく父親と口論したものだ。

この頃は、両親と私はお互いに相手の価値観や生き方を激しく否定し合い、そのせいで、関係は悪化するばかりで、私は本当に親子の縁を切りたいと思ったくらいだった。

それから私がスピリチュアルなことを学び始めたとき、ようやく私は人間の価値観・考え方には絶対に正しい価値観・考えはなく、だから自分の価値観・考えの絶対的正しさを主張することが愚かしいのだとしだいに理解するようになった。

そして、30代になって自分の人生に余裕ができたときようやく、両親のことを両親の立場に立って考えることができるようになり、彼らの保守的な考えや生き方も受け入れられるようになり、お互いの溝が少しずつ埋まっていたというわけだ。

だからといって、両親も私も自分の価値観・考えを変えたわけではなかったが、お互いが非常に違った価値観と考えをもっていることをしだいに許容しただけだった。

親子関係にかぎらないが、人間関係を悪化させる要因は、突き詰めていけば、一つである。それは人間関係についての自分の想定や思い込みや執着、つまり、「親はこうであるべきだ」、「子供はこうであるべきだ」、「何で私の親(子供)はこうなのか?」といった自分の側の想定や期待だ。
 
人間関係においては「想定・期待」はほとんどその反対に働く。

私自身が両親に非常に期待されていた。「期待」というのは非常に重く感じられ、そうするとますますその「期待」とは反対のほうへ行こうとする力学が働くようだ。

20代の頃、私は激しく思ったものだ。「親が期待するような人間には絶対にならない」(笑)

もし皆さんが自分の親しい人間関係で悩んでいるとしたら、自分がその人間関係にもっている期待・想定・執着を見ることをお勧めする。そして、「どうしてこんな親(子供・夫・妻)なんだ?」という「なぜ」の疑問がわくとしたら、それは自分の期待・執着を表している。

そこから出発し、想定・期待・執着を手放し、相手をあるがままに受容し、最終的には「まさにこれが私に必要なピッタリの親(子供・夫・妻)なんだ」という納得・理解へ至れば、自分の人生に子供や親、妻や夫がいることをありがたく思うことだろう。

今では私は自分の両親を非常に敬愛している。彼らは親不幸だった私にたくさんの援助をしてくれただけでなく、私には欠けているたくさんの美点をもち、たくさんのことを教えてくれた。そして両親にしても、おそらく変わった子供をもってしまったことで、色々と考える羽目になり、それは彼らにもよかったことだと思っている。

今、私はたいていのときは母親にやさしいが、でも時々耳が悪い母が何度も同じことを言ったり、老人特有のわがままや頑固さを示すと、思わず声を荒げることがある。そして思うのだ。「ああ、子育て中の母親も、自分の子供が言うことを聞かないときは、きっとこんなイライラした気持になるんだ」と。だから、今でも私は学んでいる。

以上、ご質問者の方の参考になったかどうかわからないが、親子関係に関する私の経験を述べてみた。
 
要約すれば、「人間にとって子供が生まれること、そして育てることの意味とは、進化するための学習のため」というのが私の結論である。  


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パリの空の下で2017年11月25日 11時16分54秒

 先日パリで、ダグラス・ハーディング死去10周年の記念イベントがあり、参加してきた。

日本で言えば、十回忌の法要のような感じで、ダグラス・ハーディングと「頭のないヴィジョン」を愛する人たちが世界中から集まり、彼を偲び、思い出を語り合い、そして実験を楽しんだ。
 
キャサリン(ダグラス・ハーディングのフランス人の奥さん――現在85歳)は、このイベントの少し前に心臓の病気で入院していたそうであるが、当日は看護師の娘さんに付き添われて元気に姿を現した。

「あなたをはじめ、遠い所から来る人たちのために、元気になってどうしても来たいと思ったの」 と彼女に言われて、涙が出た。

キャサリンは 「頭のないヴィジョン」のコミュ二ティの母親のような人で、彼女がいるだけで場がなごやかになり、温かい空気になる、そんな人だ。今回は、私も含めて彼女に会いに来た人は多かったと思う。

二日間の間、キャサリン、リチャード・ラングをはじめイギリス、フランス、オランダなどから来た約10人くらいの人たちがそれぞれ思い思いにダグラス・ハーディングと「頭のないヴィジョン」についてスピーチや実験をおこなった。

キャサリンから「あなたも何かしゃべって」 と頼まれて、私のそのスピーカーの一人になってしまい、簡単なスピーチをし、一人用紙袋の実験をやり、余興に歌を歌った。

一人用紙袋の実験道具は日本オリジナルなもので、これを「頭のないヴィジョン」を愛している外国人にプレゼントすると、とても喜ばれる。

当日は、私の下手な英語のスピーチを長々やるより、短い実験をやるほうがいいだろうと思い、「日本の技術でこの道具を作りました」と冗談を言って、この道具を使ったほんの5分程度の実験を全員でやった。

そして最後に調子にのって英語の歌まで歌ったのは、一日の夕方の時間帯で、みんなが少し疲れている頃なので、何か変わったことをやると疲労が吹き飛ぶのではと思いついたからだ。

それにちょっとキャサリンを驚かせ、喜ばせたいとも思ったからだ。
 
一般的には静かで内向的だと思われている日本人が、突然Let it be とAmazing Grace を「頭がないヴィジョン」ヴァージョンで歌ったので、会場の皆さんはたぶんちょっと驚いたようだが、それでも終わったあと皆さんからとても温かい言葉をいただき、キャサリンもとても喜んでくれた。

たぶん、こんな大勢の外国人の前で英語の歌を歌うなどということは、人生でこれが最初で最後だろうし、ここは「顔のない世界」なので、恥もどこかへふっとんだ――でも夜、ホテルへ戻ったあと、思い出したら少し恥ずかしくなったけど。

さて、パリ――ダグラスのおかげで、何度もこの街を訪れる機会を得た。前回訪れたすぐあとで大きなテロがあり、一時は観光客の減少も伝えられたが、今はまた普通にどこも混んでいる。この寒空なのにパリのカフェでは、店の外で食事をしている人たちも多く、その根性(笑)に驚いた。

今回は、ワークショップの前後の日に、パリの動物園へ行ったり、少しだけ街歩きをしたりした。セーヌ川のあたりを散歩するたびに、パリに絵を描きにやって来る人たちの気持ちがなんとなく理解できる。何か絵心が刺激される風景なのだ。
 
帰りの飛行機の中では、ワークショップの会場で買い求めたキャサリンの伝記を読み始めた。その本はオランダ人の女性がキャサリンにインタヴューしてまとめ、昨年出版されたもので、その著者の方も今回のワークショップに来ていたので、色々とお話をすることもできた。

今ちょうど、ダグラスと出会うあたりを読んでいて、なかなか興味深い。彼女が59歳のとき、81歳のダグラスと出会って恋に落ち、イギリスへ行く決心をしたとき、彼女の5人の子供たちは反対したそうだ。そのとき彼女が自分の子供たちに何と言ったかというと――「私はこの恋を生きる権利があるの」――さすが恋愛の国フランスの女性の言葉だと思った。


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ニサルガダッタ・マハラジの教え(5)Prior to Consciousness2017年11月05日 08時49分37秒

今回は、もう一度マハラジの教えの概念を、説明してみよう。

Prior to Consciousness(意識以前―仮称)の中では、knowledge(知識)、knowingness(知ること)という単語が非常によく出てくる。  マハラジの言う knowledge (知識)の意味は、現象界のあれこれについて色々と知っているという意味での「知識」ではなく、「私は在る」ことを「知る・気づく」という意味だ。

同じように、マハラジの用語で「無知」とは、現象界の物事についての知識がないという意味ではなく、「私は在る」ことに気づかず、自分を1個の肉体・マインドとして一体化している状態を指す。  

1「私は1個の肉体・マインド である」 →無知

2「私は存在である」(I Am=私は在る=意識の状態)→知識

3「私は非存在(非現象)である」(絶対の状態)→無知と知識の両方の超越
 
私たちは普通、鏡の中に映る人間ヴァージョンの自分が、自分の中心にもいると思い、自分は1個の人間だと思い込みそれとだけ一体化する。それがマハラジの教えでは「無知」と呼ばれている。

それから、「私は在る」に気づく(知る)ようになると、それがマハラジの用語では『知識』の状態、意識の状態(上記2の状態)である――それはただ「在る」という感覚であり、単純に存在しているという感覚だ。「ああ、私は在る」と知る瞬間に世界(現象)も同時にある。

私たちがどんな現象世界を体験(五感の体験)しても、それは非現象である絶対が全現象として顕現しているということである――それがマハラジの言う「意識の状態」である。

皆さんが今の瞬間、何を見て、何を感じて、何を聞いていても、それすべてが顕現した意識であり、自分が1個の肉体ではなく、顕現している意識全体であると気づく―知っている、それが意識の状態、「私は在る」の状態である。

実はこれは特に理解は難しくはない。目を閉じて、静かにしているとき、(熟睡でもしていないかぎり)私たちは感覚を感じる――音や何かと接触している感覚、肉体のような感覚――それが「私は在る」感覚、「私が在る」ことに気づいている・知っている状態、マハラジが言うところの「知識」である。

ここで皆さんがよく言うことは、「その話は、知的には理解できます。でも私は自分が1個の肉体であるという感覚を強く感じます」  とことだ。

もちろん、肉体感覚を感じるはずである。しかし、ここでの誤解は、その感覚に記憶から個人的所有代名詞をつけることだ――たとえば、「これは『シンプル堂』と呼ばれている人間物体の感覚だ」みたいな。もし記憶が作動しなければ、それはただ湧き起こっている感覚にすぎない。それを自分の所有物として「にぎりしめる」のが、誤解である。

感情や思考についても同様である。一日中様々な思考・感情がわいては消える。それを捕まえて握りしめなければ、それらはただ来ては行き過ぎるだけである。

私たちが五感で感じる世界は非現象である絶対が顕現した意識の運動で、「私はこれでもなく、あれでもなく、顕現した意識全体である」、というのが上記の2の理解である。
 
そして、「私は在る」と知ること、その経験以前に何があったのか、その経験以前「私とは何であるのか?」、その経験が起こる土台は何か? それがPrior to Consciousness(意識以前―仮称)のテーマであり、言葉で語り得ない世界を、それでもマハラジは末期癌の苦痛の中で最後の力を振り絞って語っている。

言葉で語れば、難解だが、もしダグラス・ハーディングの実験の意味がわかれば、シンプルなことだ。

指さし実験で自分が見ている世界の様々な対象物を指さす。何を指さしても、一つ一つの物は見かけ分離して見えるが、実際は顕現した意識の運動を私たちは指さしている。自分の思考・感情・感覚に気づくときは、それもまた顕現した意識の運動である。

では主体を指さしたら、何が見えるのか? ダグラス・ハーディングの問いとは、物体を認識している主体は、物体(現象)だろうか? というものだ。もし主体が色を認識するなら、主体には色がない、音を認識するなら、主体には音がない、感覚を認識するなら、主体には感覚がない、つまり、主体が物体ではなく、色・形・音・感覚・思考・感情などという属性がないからこそ、色・形・音・感覚・思考・感情などを認識できるのではないか?というのが彼の問いで、実験はそれを自分で実証するためのものである。

そして、ここが肝心なところだが、上記の2の意識の状態と3の非現象である絶対は分離してはいないということだ。

マハラジはその絶対への理解を導く修行として、退却して、「ただ静かに在る」ことだけを勧めている。ここで「退却」とはどういう意味かと言えば、

物質・思考・感情世界から退却して→「私は在る」という状態へ→さらに退却して→絶対へ。

すると、たぶんこういう質問が出てくるはずである。

「そんなふうに退却したら、私の仕事や生活はどうなりますか?」

「ただ在ること」や実験を長時間やる必要はなく、歩いているときでも、電車の中でも、朝起きたときや夜寝る前の5分間でもやることができる。

マハラジは「戦争の最中でも『自分とは何か』を発見することはでき、場所は無関係だ」と言っている。慣れれば、仕事中でも、人と話しているときでも、家事をしていても、「退却」することはできる。

前日の会で「退却する瞑想」(と私がそう名付けた瞑想)をご紹介して、ほんの短い時間参加者の皆さんとやってみた。簡単で誰にでもできる瞑想なので、お勧めします――眼精疲労にも効きます(笑)
 
 (緊張しないで、リラックスしてやることが肝心です)


*自分の頭や顔があると思われている場所を指さす。

*向こうに物質的対象物である、指を見る。

*指が指さしている主体(それは物体だろうか?)、一番自分側を見る。

*そのまま目を閉じ、指はおろし、目を閉じた状態で自分側を見続ける。 

 
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無邪気な子供たちの遊び2017年10月26日 14時19分21秒

 マハラジがPrior to Consciousness の中で 「こういう対話は娯楽だ」と言っているところがある。

インドの非二元系の教えでは、世界は神(「私」)の壮大なリーラ(遊び)であり、究極的には善悪がない。神というものが堅苦しいキリスト教の世界観よりも、どちらかというとインド的な考え方のほうが私は気楽で好きである。

その観点から見れば、私たちのする(というより、私たちがさせられている)あらゆることが娯楽である。世界にはあらゆる娯楽があり、あらゆる人にはその人なりの娯楽があり、仕事や政治という堅苦しいものさえ娯楽だ。

マハラジの教えの話も少し書き飽きた(次回にまた継続します)ので、先日、衆院選があったおりなので、本日は、政治という娯楽に話をふってみようと思う。
 
私は時間があると、語学の勉強のために子供(小学生以前)向けの海外アニメをよく見ている。最近、よく見ているいくつかのアニメを見ていて、気づいたことがある。子供たち(多くのアニメでは、なぜか動物が人間のようになっている)は非常に競争好きだということだ。

何人かの子供たちがいると、すぐに走り出し、「あそこまで誰が一番早く行けるか競争しよう」と言う。そして一番になった子供は、無邪気に「僕(私)が勝った、勝った!」大大喜びする。負けた子供たちはちょっとはがっかりするが、でも負けた子供たちが勝った子供を恨んだりすることもなく、子供たちはそのあとみんなで仲良くまた一緒に遊ぶという具合だ。

それから子供たちの大好きなことがごっこ遊びだ――戦争ごっこ、有能な大人ごっこ、自分が何でも一番よくできるという思い込みごっこ。

また欲しいものがあると、「僕、これが欲しいよ!欲しいよ!」  と大声で泣き叫けぶ。そして気に入らなかったり、飽きたりすると、すぐにポイ捨する。

子供だと思えば、その天真爛漫さをほほえましく感じるものだ。

こんな話が、政治とどう関係があるかというと、政治家の人たちを見て、政治家の人たちも子供向けアニメの中の無邪気な子供たちのようなものかもしれないと、最近ふとそういう考えが思い浮かんだのだ。

彼らは親(彼らの娯楽費用は国民の税金なので、この場合の「親」とは国民のことだ)の苦労も知らずに、自分たちの娯楽に無邪気に熱中する子供のように見える。

彼らはイヤになるとすぐにオモチャ(党))をポイ捨てしたり、壊したり、作ったり、国会議員であることが飽きれば、任期途中でその職をポイ捨てし、知事に立候補したり、市長の職をポイ捨し、他の選挙に出たりと、
自分や自分の党が選挙で多くの人たちに選ばれたという自覚や、政党維持費、選挙費用、自分の給料が親(国民)のお金(税金)から出ているという自覚が非常に希薄に見える――彼らのやることは子供のごっこ遊びと同じくらい軽い。

政治家は競争(選挙)が大好きで、当選したときの万歳は子供アニメの、「僕が勝った、僕が勝った」の叫びと同じである。

もし親の資産を全部使い果たして、遊ぶお金がなくなったら、子供たちは無邪気にこう言えばいい。「消費税を20%にすればいいさ!」  しかし、そのとき親(国民)がもう老いて働けなくなり、税金も払えない状況になれば、「ああ、こんな老いた親なんて、いらない!」と呑気に叫ぶかもしれない。

子供向けアニメの中では、親の苦労はまったく描かれず、親たちは非常に子供に寛容で、物わかりがよく、滅多に叱らず、ほとんど子供のしたいことをさせてやり、ときには自分も一緒になって遊んでいる。

さて、現実の親(国民)は子供(政治家)たちをどう思っているかといえば、こっそり悪さをしては隠したり、親のお金を使って、オモチャ(政党)を作ったり、壊したりと、勉強もしないで、どうしようもない遊びを繰り返してばかりいるので、呆れ果ててはいるが、自分の老化が進んで、もう自分のことで精一杯で、子供を叱ったり、指導したりする元気さえないし、子供があんまり色々なオモチャを作っては壊すので、親にはオモチャの名前さえもうなかなか覚えることができない。

「ああ、今度あの子が作ったオモチャの名前は、『立憲希望党』だったかね、それとも『希望民主党』だったかね。あんまり色々なオモチャがゴチャゴチャあって、もうわけがわかんないよ。昔からある、ほら、『自民党』ってオモチャ、なんかあれが一番壊れないで長持ちしていいかもしれないね」てな感じだ。

親(国民)は自分の老化や長時間労働、それに不随する問題に日々振りまわされて、疲れ果てている。しかし、子供たち(政治家)は忙しい公務の合間に不倫をしたり、秘書に暴力を振るったり、都知事と全国政党の代表を兼ねたり、信じられないくらい超元気一杯だ――彼らは走り回る体力だけはあるのだ―子供なので。

政治を無邪気な子供たちの娯楽だと思えば、たまに政治を眺めるのは楽しい。今回の遊び(衆院選)では、北朝鮮を利用して危機をあおり(本当に危機感があるなら、選挙なんてやっている余裕がないはずだ)、自分の不祥事隠しのために国税6百億円を浪費して、選挙をしかけたずる賢い(安倍)晋三ちゃん(彼の中に立派に政治遺伝子がある証拠だ)、自らの策と野心に溺れた(小池)百合子ちゃん、百合子ちゃんのミスで思わぬ支援と共感を拾って復活した(枝野) 幸男ちゃん、代表になりながら、あっさり仕事を放棄した情けない(前原)誠司ちゃんなど、それぞれのプレイヤーの運命が興味深かった。前原誠司氏を皮肉った10月1日付け朝日新聞の天声人語は笑えた。

「心ある経営者ならば、倒産のふちで真っ先に思い浮かぶのは従業員の今後であろう。それぞれに家族があり、暮らしがある。失業の憂き目にはあわせたくない。民進党代表の前原誠司氏の心象風景もそんな感じだったのか―残念だが、この会社には未来はない。おれが話をするから上り調子の新興企業のあの社長にみんな拾ってもらえ。いいか、わが社の理念はいったん忘れて、あの方の言うことをよく聞くんだぞ―いい話である。これが政党でなければ。後略」(10月1日朝日新聞「天声人語」より)

あの方(小池東京都知事)のオモチャ(政党)は、あの方の戦略ミスで、このコラムが掲載されてすぐに急激に下がり調子になり、選挙にも勝てず、彼女の究極の野心(日本で初めての女性首相という地位)もあやうい状況である。あの方に希望はあるのか……あの方がこれから数年間忍耐して、東京都民のために印象に残るような親孝行ができれば、希望も残ろうというものだ。

子供たちの世界ではケンカも失敗も不祥事も失言もたいして深刻ではない。ケンカしてもすぐに仲直りする。今日ケンカした子とも、次の瞬間にはまた一緒になって遊ぶ。それが子供たちのいいところだ。政治家もたぶん似たようなものだ。今日敵だった人とも、明日は友人になって同じ党にいたりする。前にも書いたけど、彼らの世界では、「昨日の友は今日の敵、今日の敵は明日の友」が基本ルールで、このルールに耐えられる人たちだけが政治家を続けられる。百合子ちゃんも、希望を捨てずに頑張って!


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下記のイベントは予約受付終了しました。                         

*2017年10月28日(土曜日)「私とは本当に何かを見る会」(大阪府茨木市)
*2017年10月29日(日曜日)「ラメッシ/マハラジの教えと『気づき』について学ぶ会」(大阪府茨木市)


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ニサルガダッタ・マハラジの教え(4)Prior to Consciousness2017年10月14日 08時25分44秒

今回は、マハラジの教えから少し離れて、私がいつも感じている非二元系の教えにおける言語の問題について言及してみよう。

あるとき、ハーディングの実験の会に来た人から下記のような質問されたことがある。

「たとえば、『自分を見てください』と言うとき、その言葉自体が他者とは違う『自分』がいることを想定しているのではありませんか?」

つまり、この質問の意図は、ハーディングの実験の目的が、私の本質という自他の区別のない一元的世界の認識であるのに、その認識を導くために使われる言葉が、そもそも二元的であるのは矛盾ではないか? という意味だと、私は理解した。

矛盾している――まったくその通りである。同様に、「『自分の』足を見てください」とか「『自分の』手を見てください」というときも、私たちは明らかに「自分の」手足と「他人」を手足を区別して、「他人の」手や足ではなく、「自分の」足や手を見る。

この根本的矛盾の原因は、「自分」「私」という言葉、  英語でいう、me, I の言葉の問題である。

前回と前々回のマハラジの教えのところで、マハラジの教えるにおける「私」の定義について次のように説明した。
 
1「私は1個の肉体・マインド である」
2「私は存在である」(I Am=私は在る=意識の状態)
3「私は非存在(非現象)である」(絶対の状態)

普通、二元世界で「私」と言えば、それは明らかに肉体の私(鏡の中で見たり、他人から見られた人間物体)のことである。二元世界では、「私」は明らかに一貫して肉体の「私」のことで、お互いにその暗黙の了解の元で会話するので、少なくとも「自分、私」に関しては、矛盾がない。

しかし、賢者の方々が、「私」と言うとき、あるときは、個人的肉体的「私」のことであり、あるときは、意識の「私」であり、あるときは絶対の「私」であり、という具合に、話している途中でも自由に「私」の定義が変わるのである。
 
彼らは話す前にこれから言及する「私」がどの「私」なのかいちいち言ったりしないが、言ってくれたら、翻訳する側としては助かる(笑)と思うことがよくある。
 
たとえば、賢者の方々のよくある発言を例にとって、分類してみれば、

*「私」が子供だった頃  →肉体の「私」と一体化
*「私」は意識全体であり、世界である。→顕現した意識としての「私」と一体化
*「私」は生も死も超越している→意識が顕現する前の絶対としての「私」と一体化

私が知る限り、マハラジもダグラスもラメッシも、話の途中で、個人的思い出――「私が子供だった頃」というような――を語ることがあり、そのときは明らかに彼らは肉体の「私」と一体化している。

ラメッシは、「賢者であっても、『マハラジ、ラマナ』などと、自分の名前を呼びかけられれば、普通に返事をするもので、それはつまり、そのときは彼らが個人的自己と一体化しているという意味だ」と、言っている。
 
最初の実験を指示する言葉についての質問に戻ろう。

「自分を見てください」という実験の指示は、それは明らかに一人ひとりの肉体が違うことを想定している発言である。つまり、一元的世界の認識へと導く実験も、二元世界から出発せざるをえない。ダグラス・ハーディングの実験を小難しく言えば、対象世界(二元世界)から主体世界(一元的本質)への移動であり、言語や自分の肉体という二元世界の道具を使って移動する(ダグラスが好きな言葉で言えば)「」なのだ。

マハラジの教えにおける「私」の定義で、1の世界は当然、非常に個人的なものだ。そして、あえて、「個人的」という言葉を使えば、上の2、顕現した意識の「私」も超絶的に個人的である。「非個人的」という言葉が強調されるせいか、意識の「私」は自分が対象物として見る人たちとは、全然違う世界に住んでいるという事実はあまりよく理解されていなように感じる。

私がよく出す例で言えば、たとえすぐ隣に人が座って、似たような風景を眺めているとしても、それぞれの人間物体を通じて展開する意識の世界はまったく個人的な風景(思考や感情世界も含めて)であり、非常にユニークでオリジナルである。それは一元的本質(本質だけがあらゆる人間物体に共通している)上に、繰り広げられる多様な個人的個性的世界である。(ダグラス・ハーディング「存在し、存在しない、それが答えだ」の第6章「平凡な人を抜け出す」を読むことをお勧めしたい)

だから、「個人的」とか「非個人的」という言葉も最終的にはどうでもいいことなのである。言語とは二元的時空間の世界、過去・現在・未来の区別のある世界を描写するための道具であって、本当は一元的世界を描写することにはまったく向いていない。向いていない道具を使って、説明せざるをえないので、言葉上では様々な矛盾が生じ、そういうことを気にする人たちに多大な混乱を与えてしまう。

しかし、実験、瞑想、直観などによって、自分とは何かについて考えるのではなく、見る・認識することができれば、言葉上の混乱も次第に収まるものだと思う。



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