ダグラス・ハーディングへの最後の質問――「父と子と聖霊」(1)2018年09月13日 16時16分39秒

長らく諸事情で作業が中断していた「ダグラス・ハーディングのグラフィック伝記」(正式なタイトルは未定)の編集作業が先日再開された。この本については、来月から書くことにして、 今回はダグラス・ハーディングに関連して以前いただいたご質問、「私が最後にダグラス・ハーディングに質問したこと」 について書いてみよう。

それはダグラスが亡くなる半年前の2006年の初夏のことで、ちょうど私が「ダグラス・ハーディングへのインタヴィユー」DVDの日本語版を作っていた頃だった。インタヴューの中の英語に関して不明箇所がたくさんあったので、これを制作したリチャード・ラングに質問するためにロンドンへ行く必要があり、そのついでにダグラスとキャサリンにも会いに行こうと思いついた。

この当時、ダグラスはすでに車椅子生活で、人間的記憶をかなり失っていたので、キャサリンとほんの数人の親しい友人以外は、誰のことももうわからなかったし、ほとんどしゃべらなかった。彼は寝ている時間以外は車椅子に座って、読書(キリスト教神学の本)をしているか、昼寝をしているか、食事をするか、居間から遠くの風景を眺めているかして、 一日を過ごしていた。

私はその質問をイギリスへ行く前から考えていたのだが、実際に彼に会って、ほとんどしゃべらない状態だったので、最初は「もう質問も無理だなあ」と感じた。でもキャサリンが、「人間的な会話はできないけれど、このワークに関することや形而上学的なことなら、話し合うことはできると思うわ」と言ったので、思い切って質問することにした。

その質問とはキリスト教の教義における神と聖霊の関係というか、そもそも「『聖霊』とは何か?」という質問だった。聖霊は英語ではHoly Spirit といい、神(God)とは違うもののようにキリスト教系の本の中では語られている。

私はキリスト教の教義のいわゆる「父と子と聖霊」という三位一体の概念がわかるようでわからないという感じで、いつも自分をすり抜けてしまうことが長い間、気にかかっていた。私の中では三つではなく、二つ(父と子)だけでは不十分(笑)なのだろうかという、奇妙な疑問があった。

話は少し横にそれるが、スピリチュアル系の英語の本の中で、spiritという単語は適切な日本語訳をつけるのが非常に困難で、たいていの場合、「スピリット」で逃げる(笑)のがほとんど定番の訳になっている。この春出版されたマハラジの「意識に先立って」の本にも、1箇所だけ唐突にspiritという単語が出てくるところがあり、あれこれ考えたけど、結局は「スピリット」という訳以上によい言葉を思いつかなかった。

spiritという単語が出てくるたびに、、この本の中のspirit  とまた別の本のspiritは同じことを言っているのだろうかということがいつも私を悩ませる。もし大文字でHoly Spiritとあれば、それは「聖霊」という訳にすればいいけど、では、Holy Spiritとspiritの違いとは何かという疑問が残る。

そんなわけで、私はいつかダグラスにspirit について質問しようと思っていた。彼は子供の頃から純粋で真正なキリスト教徒である。彼は世界の様々な宗教を幅広く学び、研究したけど、また最晩年は子供の頃に戻って、著作にもキリスト教徒という面がかなり出てきたように私は感じていた。だからこそ、彼にこの有名なキリスト教の教義について尋ねてみたいと思ったのだ。

彼に私の質問を理解してもらうために、私は非常に短い質問を二つだけした。「人間的記憶は飛んでいるのに、形而上学の話は理解できるってすごい !」と思いながら質問すると、彼は昔と同じようにすぐに私の質問の意味を理解して、答えてくれた。

私がした質問は正確には下記の二つだ。

1「神と聖霊は同じものですか?」
2「聖霊とは具体的に何ですか?」

1の質問に関しては、彼は短く、「同じではない」 と答え、2の質問に対しては、テーブルの上にあった紙にわざわざイラストを描いて答えてくれた。正直なところ、その説明を聞いても、結局まだわかったようなわからないようなという感じが残った。

でもそのあと、もしこの三位一体の教義が単なる人々が好む観念や道徳ではなく、真理にもとづくものなら、それは仏教にもアドヴァイタにも似たような概念があるはずだと思い、もう一度初めから考えてみることにした。

そして、ようやくやっとこのキリスト教の三位一体を自分なりに納得し、理解した。それについては次回に続きを書こうと思う。


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8月に想うこと2018年08月30日 15時10分29秒

 8月は季節柄、新聞やテレビでは戦争の話題が多い。この夏も、私の両親と同じ世代、あるいはそれより少し若い世代の人たちの戦争体験記を新聞でたくさん読んだ。

最近は、特に今まで語られなかった話、あるいは今までは語らなかった人たちの話が多く掲載されている--仲間を海に振り落として生き延びた男性の話や戦争孤児の体験記。その他、終戦直後、日本人の集団が生き延びるために、ロシア人に性を提供させられた女性たちの話など。

実は、私が戦争体験記をたくさん読み、母にも戦争時の話を積極的に尋ねるようになったのは、父が亡くなってからのことだ。父が生きていたときは、父のいる前では戦争体験の話は何となくタブ-というか、ある種の地雷だった。この話題を「地雷」にしてしまった遠因は私にあった。

8月のこの時期になると、今でも鮮明に思い出す心痛む思い出がある。私が大学の夏休み(だったと思う)で帰省したときのことだ。夕食のとき、何かのはずみで話題が戦争の話になり、私が「戦争はバカがするもの」と生意気に言ったとき、日本を守るために出兵し、戦ったことが自慢の父が激怒して、それから激しい口論となり、そのあと私と父はかなり長い期間口をきかなかった。もし父が乱暴な人で、私が男だったら、ひょっとしたら口ゲンカではすまなかったかもしれない激しいケンカだった。私は「あの戦争は正しい戦争だった」などという愚かな考えを自分の父親が信じていることが許せなかった。父は父で、自分の子供にプライドをずたずたに切り裂かれてしまい、しばらくかなり落ち込んでいたようだ。

それから私も少しずつ大人になって、父親との意見の違いを受け入れられるようになってからは激しい口論はしなくなったが、今度はなぜ父が「あの戦争は正しかった」という論にそこまで執着するのかを考えるようになった。父は「あの戦争は正しかった」という論を展開する本をかき集めては読んでいた。

そしてあるとき、ようやく気がついたのだ。父の心の根底にはたぶん無意識の(人を殺したか、傷つけたことに対する)罪悪感があって、それを感じないようにするためには「あの戦争は正しかった」と信じるしかなかったのだと思い至るようになった。もしあの戦争が正しくない戦争だったとしたら、自分たちがやったことは犯罪と同じ暴力で、自分たちは英雄どころか、犯罪人と同じ罪人になってしまう。「正しい戦争」だったからこそ、自分たちのしたことに正当性がある、たぶん、父はこんなふうに無意識に考えていたにちがいない。

私の父もそうだったが、戦争へ送られた若い10代後半の若者はほとんどがみな心優しい青年たちだったと思う。元々暴力的でない人たちが無理やり暴力に参加させられたら、それはものすごい罪悪感やストレスを生むはずだ。(という話を、ベトナム帰還兵の人が書いた「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?(アレン・ネルソン著 講談社発行)」という本を読んだとき知った)

戦後しだいに世の中が「あの戦争は間違っていた」という論調に傾くにつれて、父は無意識にますますかたくなに「あの戦争は正しかった」に固執するようになったのだと思う。

父の死後、遺品を整理していたら、父が所属していた戦友会の人たちが戦後作製したらしい手書きの地図と日誌が出てきた。自分たちの部隊が戦いながら歩いた場所が中国大陸の地図上に記され、「○月○日、××君死亡」や「○月○日、××君発病」、「○○一等兵戦死」などの記載もとろどころにある。出兵時の凜々しい父の写真を眺め、「ああ、そうやってたくさんの仲間の死と敵の死を経験しながら、父はやっと日本に帰国したのだ」と思って胸が痛かった--帰国したとき父は23歳だった。

戦争--人類という種の愚かしさの極み--私は今も昔も、戦争に関してこの見解を変えていないが、今では、人類は自分の意志でこの愚行を止めることができないことも理解している。

このことを言ったのは、二十世紀前半に活躍したロシアの賢者グルジェフで、彼は「戦争は惑星と惑星の関係の影響で起こり、無意識である人類はこの影響を止めることができない。だから人類は自分の意志で戦争を始めることも、止めることもできない」という主旨のことを言っている。驚くべきことに、ニサルガダッタ・マハラジにも似たような発言がある。全然別の時代に別の国に生きた二人の偉大なスピリチュアルな賢者が言っているのだから、たぶんこの見解は正しいのだろうが、本当かどうかを証明するのは難しいことだろう。

よりわかりやすい範囲の理由で言えば、戦争とは「愚」と「欲得」と「恐怖心」が三位一体で結集して、頂点に達するときに起こる可能性が最大になるというのが私の印象だ。政治家と国民の「愚」と「欲得」と「恐怖心」--それが一つの国だけでなく、関連諸国の「愚」と「欲得」と「恐怖心」全部が結集したときに、止めようもなく「戦争」という「愚」という結実になる可能性が大きくなる。人類の歴史は「愚」をめぐって展開し、その「愚」の後始末に長い間人々が苦しまざるをえないことを教えている。

スピリチュアルな賢者たちはほとんど国家の話を語らないが、私が今まで読んだ人の中で、20世紀前半から中頃に活躍した偉大なキリスト教神秘主義者であったジョエル・ゴールド・スミスは、人と同じように国家にもカルマがあるという話を書いている。彼が書いたことによれば、国家は自分が犯した過ちを謝罪しないかぎり、そのカルマの影響を受け続けるということだ。またたとえ、国家が正式に謝罪しなくても、その国民は自国が他国民に与えた苦しみを心の中で一人ひとりが謝罪するべきだとも書いている。

彼がこれを書いたとき、たぶん自国アメリカが日本のヒロシマ、ナガサキへ原爆を投下したことを念頭に置いている。アメリカは原爆投下はおろか、それ以後、世界中で爆弾をばらまき続け多数の人を殺してきた愚行を国家としてはほとんど謝罪していない。

ジョエル・ゴールド・スミスは、(政治的な理由などで)表だっては謝罪を表明できないとしても、あるいは表面的には国家に賛成するふりをしてもかまわないが、少なくともスピリチュアルな道にいる人たちは、心の中で一人ひとりが国家の間違いを謝罪するべきだと言っている。

私はジョエル・ゴールド・スミスの国家のカルマの話に納得したので、日本国が犯した愚行に苦しんだすべての他国民に、特に父が戦った中国の人たちに、父に代わって、謝罪と赦しの祈りを捧げている。
 
新約聖書マタイ伝第6章

*(の国)は私が付け加えたものです。

12 わたしたち(の国)の負い目を赦してください。 わたしたちも自分に負い目のある人(国)を赦しましたように。(新約聖書1文春新書版より)



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「そうだ、トルコへ行こう!」(2)2018年08月14日 06時52分45秒

イスタンブールにはシナンの作品がかなりあるが、ツアーで行ったのは一番有名なスレイマニエ・ジャミイ(1557年頃完成。ジャミイとはモスクのこと)だけだった。行った日は、観光客も少なく、のんびりと見ることができた。天井の幾何学模様が素晴らしく、本当は寝転んで天井をしばらく眺めていたいくらいだった。

ガイドさんがシナンがどれほど天才だったかを説明してくれた。16世紀、まだ空調の科学などがない時代に、シナンはモスクの空調(夏は涼しく、冬は暖かく、ロウソクの煙などがモスク内部に充満しないようになど)を正しく考え、モスクを設計したそうである。また将来、修理が必要になるときのために、修理の指南書も壁に埋め込んであったそうだ。このモスクの中庭に立ったとき、昔タージ・マハルを見たときの感動が少し蘇った。そしてなぜ私がイスラム風の建築が好きなのかも少しわかったような気がした。

有名なほうのスルタンアフメト・ジャミイ、通称ブルー・モスク(こちらはシナンの弟子の作品)へ行った日は、日本で言えばお盆休暇の始まりのような日で、内外の観光客が押し寄せ、人とぶつからないで歩くのが困難なほどだった。たくさんの人に気が散って、のんびり内部を見るのはあきらめ、中庭と外の風景を楽しんだ。

イスタンブールを出たあとは、トルコの主だった有名な観光地を巡った。(トロイの遺跡、パムッカレ、カッパドキア、アンカラなど)。その中で、コンヤという町はトルコへ来て初めて町の詳細を知った。日本でいえば、京都のような古都で、ここで何を見に行ったかというと、13世紀末、イスラム神秘主義のメヴラーナ教団を創設したメブラーナ導師の霊廟で、現在はメヴラーナ博物館になっている建物だ。その中にメブラーナ教の創始者のメブラーナ導師とその他名僧の棺が置かれている。

ガイドさんがしきりに「メブラーナ」という名前を連発するので、「ああ、トルコで有名な宗教家なんだ」と思って、よーくガイドブックを読んだら、メブラーナ教とは日本では「スーフィー教」の名前で知られている派のトルコでの名称で、メブラーナ師とはこれも日本のスピリチュアル系の人たちには名前が知られているジェラルッディン・ルーミーのことだとわかった。
 
コンヤは宗教的戒律を重んじる街らしく、街を歩いている女性たちはほとんどスカーフを着用し、レストランではお酒を飲めないし、お酒を買える場所も非常に少ないという。ところが……ガイドさん曰わく、人口あたりのお酒の消費量はトルコ一だとか。「これは隠れて飲んでいる人が多いという意味なんでしょうかね?」と、お酒大好きなガイドさんは笑って言っていた。

トルコをバスで巡って驚いたことは、中国人観光客の多さだ。どこの観光地やドライブインへ行っても、日本のツアー客の5倍くらいの中国人のご一行様たちがいる。まあ、人口が多いから当然なんだろうけど、世界のあらゆる国、あらゆる分野に中国人とメイド・イン・チャイナが進出している。

一度お土産屋さんで、値引きの交渉をしているとき、私が「あの、他のところでは、半額くらいの値段でこれと同じようなものを見たけど、もう少し安くしてもらえませんか?」と言ったら、店員さんが、「あのね、あなたが見たものはたぶん中国製だと思うわ。うちで売っているのは中国製じゃなくて、純粋なトルコ製なのよ」と言って、品物に記載されているメイド・イン・ターキッシュの文字を指し示した。店員さんがとても大きな声で「中国製ではない」と強調するので、思わずあたりを見まわしたが、幸いそのときそのお店には中国人のご一行様はいなかった。

お土産と言えば、こういう観光ツアーではお土産屋に寄るのもコースの中に組み込まれている。連れて行かれるところは、ほとんど高級な店ばかりだ――トルコ石、トルコ絨毯、トルコの革製品など。

私はこういうった高級品を買うことに関心がなかったが、でもショップの営業プレゼンテーションは興味深かった。こういった高級ショップの人たちは、ただツアー客を店に放り込んで、自由に見させておくだけでは、商品を買ってもらえないことをよく知っている。

だから、まず商品の文化的・歴史的説明から始め、それがなぜ値段が高いのか、安物とはどこが違うのか、どれほどの価値があるのかを、お店のトップの人がそれこそ立て板に水のごときペラペラな日本語で30分ほど説明する。最後は、「私たちもたくさんの日本製品を購入していますので、ぜひトルコの製品を買ってください」というお願いで締めくくる。それから商品に触らせ、それから大勢のスタッフをツアー客一人一人に張り付かせ、営業攻勢をかける。もちろんそのスタッフの人たちも全員日本語ペラペラである。

その営業攻勢をどうしのぐか――私の場合は、半分の時間はトイレに逃げて、残りの時間はしつこく営業されたら、こちらから質問と称賛攻勢(笑)――「日本語お上手ですね」「どこで日本語を勉強したのですか?」「ああ、そんなに短い時間で、ここまで話せるってすごいですね!」「日本に行ったことがありますか?」「トルコ絨毯素晴らしいですね。でも、残念ながら、トルコ絨毯にふさわしい住宅に住んでいなんですよ」などなど。

あまりの営業攻勢を見て、もしこのツアー客の中で誰も購入しなかったら、ショップを無事に出る(笑)ことができるのか心配したが、幸いどのショップでも最低数人から半数くらいの人が購入したので、ショップの人たちも喜んだことだと思う。
  
トルコへ行く前から、ガイドブックを読みながら、たぶんトルコは私の気質には合う国だろうと想像はしていたが、ほぼ想像通り、食・文化・雑貨が楽しかった。高級ショップでは買わなかったけど、少しでもトルコ経済に貢献しようと思い、今回の旅行では私としては珍しく安い雑貨、食品、アクセサリーなどをたくさん買った。(トルコにとっては大変な状況であるが、旅行者に幸いというか、かなりのリラ安だった)。そして、トルコの宣伝をするために、こんな文章まで書いている。

数日前に読んだニュースよれば、アメリカとの関係を悪くしているトルコはトランプ大統領にイジメられて、さらにいっそうのリラ安と経済不安が進行しているそうだ。新聞を読みながら、ツアーのガイドさんや運転手さんのことを思い出し、思わず私はつぶやいた。「トランプに負けるな、トルコ!」

そして、シナンの作品もまだたくさん見残しているので、もう一度くらいは行くかもトルコ!  と思っている(シナンの最晩年の最高傑作がヨーロッパに近いほうの街に残されている)。


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「そうだ、トルコへ行こう!」(1)2018年07月31日 15時38分34秒

皆様、暑中お見舞い申し上げます。 ブログを再開します。

この春のある日、「そうだ、トルコへ行こう!」と突然に思いついた。思いついたのは突然だったけど、トルコへ行きたいという想いはかなり昔からのものだ。

きっかけは、かなり前「シナン上下」(夢枕獏著 中央公論新社) という本を読んだことだった。シナン(1490年頃~1588年)とは、トルコが誇るオスマン帝国時代を代表する建築家のことである。天才シナンの生涯を描いたこの本を読んで、シナンの作品を猛烈に見たくなって、トルコへ行きたいという想いが募ったというわけである。

私は昔から、自分でもなぜかその理由がわからないままイスラム風の建築が好きだ。実際のモスクをほとんど見たことがないにもかかわらず、モスク風の建築を写真で見るだけでもある種の高揚感を感じる。イスラム教の教えをほとんど知らないし、学んだこともないので、自分でもいつも不思議に思ってきた。

もっと昔の話をすれば、私が20代のとき初めてインドのタージ・マハル(ムガール帝国の皇帝が愛妻のために作ったインド・イスラム文化を代表する墓廟)を見たときの感動にまで遡る。タージ・マハルまで辿り着く列車の旅が大変だったこともあって、タージ・マハルを見た瞬間、その美しさに圧倒され涙が流れた。建築を見て涙が出たのはあとにも先にもそのときだけである。そのとき、タージ・マハルがイスラム建築だと知り、以来私の中でイスラム建築の美しさがずっと印象に残ってきた。

で、この春マハラジの本も終わったので、気分転換に、「そうだ、トルコへ行こう!」と思い立ったというわけである。

本当はイスタンブールにずっと滞在して、シナンの建築だけを見る旅でもよかったのだけれど、自分でアレンジするのも面倒だし、初めてのトルコ旅行なので、先月(6月)、トルコの有名な遺跡、世界遺産、観光地を1週間かけてバスで巡る一般向けのツアーに参加してきた。

旅行会社が主催するいわゆる観光パック海外ツアーに参加するのも、一週間もバスに乗る旅行も初体験だったので、出発前どんなものなんだろうと思っていたが、とても楽(らく)で快適だった。

荷物はもって歩かなくていい、ホテルは五つ星高級ホテル、全行程食事付き、どこでもガイドさんのあとについて行けばいい。海外旅行でこんなに緊張感をもたずにすんだのも初めてだった。最初の頃、ホテルの食事がとても豪華でおいしいので、普段の二倍くらい食べていたら、暑さもあって途中で具合が悪くなり一日ほどダウン。

それでもバスの旅は、風景を眺めたり、風景に飽きたら、ガイドブックを読んだり、スマホをやったり、疲れたら昼寝もできるのでとても快適だった。ほとんどの人がバスの中で爆睡していると、ガイドさんから突然「皆さん、ギュナイドン(トルコ語で、おはようございます)。起きてください。もうすぐドライブインです」とアナウンスがあり、ほどなくドラブインに着くと、少ない休憩時間でトイレに行ったり、チャイ(安くておいしいトルコの紅茶)を飲んだり、売店でおみやげを買ったりとかなり忙しい。

最初、イスタンブールに二日ほど滞在して、この街の世界遺産や有名な観光地を駆け足で見てまわった。イスタンブールという街、そしてトルコという国は過去数千年の間に様々な民族、宗教が支配し、その意味では日本や日本の都市とは全然異質の歴史をもっている。今日、観光客が見てまわっている有名な世界遺産、遺跡は多くの民族、宗教に支配されてきたトルコの歴史そのものなのだ。
 
イスタンブールの街はモスクなどが見えなければ、ほとんどヨーロッパの街に似ている。ツアーなので街歩きはほとんどできなかったが、ブラブラ歩いたら楽しそうな街である。盛りだくさんな世界遺産、いつくかのバザール(観光用なので地元の人はあまり利用しないとか)、そして洒落た町並みとボスフォラス海峡。

でもここが現在イスラム教の国だということを感じさせられたのは、イスタンブールに滞在中、一日に数回突然、街中に祈りの声が響いたことだ。早朝や夜ちょうど眠りかけた頃に、突然の大音響の祈りで目が覚め、しばらく祈りの声をベッドの中で聴いていた。祈りの声で目覚めさせられたにもかかわらず、不思議なことに祈りの声はなぜか耳に心地よかった。


[ イベント]

2018年9月23日(日曜)(大阪市)13:30~16:30
「人をめぐる冒険」ワークショップ

主催:未来から対話する会 協賛:シンプル堂、いのちアカデミー
詳細&予約は下記へ
http://www.simple-dou.com/CCP045.html
 
2018年9月24日(月曜祝日)(神戸市)11:00~17:00
特別版「私とは本当に何かを見る会」


主催:未来から対話する会 協賛:シンプル堂、いのちアカデミー
詳細&予約は下記へ
  http://www.ne.jp/asahi/headless/joy/99_blank014.html


2018年9月17日(月曜日祝日午後)(東京)
「私とは本当に何かを見る会」

*予約は8月中旬からです。


[お知らせ]

ラメッシ・バルセカール     『誰がかまうもんか?!』電子書籍版が発売されました。

アマゾンサイト
https://www.amazon.co.jp/dp/B075R6PH31


フランク・キンズロー『瞬間ヒーリングの秘密』 電子書籍版が発売されました。https://www.amazon.co.jp/dp/B075MXJYD3


トニー・パーソンズ  『何でもないものがあらゆるものである』電子書籍版が発売されました。
ダグラス・ハーディングの新刊「存在し、存在しない、それが答えだ」(ナチュラルスピリット発行 本体価格 2300円)好評発売中

目次は下記のサイトに掲載してあります。
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[シンプル堂電子書籍]

*「動物園から神の王国へ―サルの惑星、のような星で、平和に生きるために」(PDFファイル)ダウンロード版は、DLmarketのサイトで販売しています。お手持ちの機器(パソコン、タブレット、スマートフォン)に、PDFを読むソフト(AdobeReader等)が入っていれば、どなたでも読むことができます。

本書の詳しい目次は下記のサイトに出ています。

1部 ヒトにおけるセックスと闘争・暴力の問題について
2部 サルの壁 人の壁
3部 人生は、ド・アホでいこう!

DLmarketからファイルをダウンロードするためには、まず会員登録をする必要がありますが、Facebook、Twitter、楽天のアカウント、Yahoo!Japan のID、Amazonのアカウントもご利用でき、各種支払いにも対応しています。(銀行振り込み、コンビニ支払い、Amazonペイメント、クレジットカード、Paypal、その他)。

なお現在は、パソコン等では、横書きの文章のほうが読みやすいという人たちもいると思い、縦書き版と横
書き版の二種類の版を用意してあります。 編集の都合上、総ページ数(縦書き版が453ページ、横書き版が367ページ)は異なっていますが、内容はまったく同じです。

*購入についての詳細は、購入前に下記のDLmarketのサイトを見てください
 http://www.dlmarket.jp/

動物園から神の王国へPDFダウンロード縦書き版」(1500円+税)(453ページ)
   http://www.dlmarket.jp/products/detail/331107

動物園から神の王国へPDFダウンロード横書き版」(1500円+税) (367ページ)
  http://www.dlmarket.jp/products/detail/331108

試読版(無料)は上記のサイトから、会員登録等なしに、どなたでも自由にダウンロードできますので、本との相性を確かめて、購入の判断をしていただければと思います。 (画像の下の、「立ち読みできます」をクリックすると、試読版PDFを無料でダウンロードできます)

*DLmarketで下記も販売中です。(無料試読版は会員登録不要で、自由にダウンロードできます――画像の下の「立ち読みできます」をクリックしてください)  
 
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ブログ休止します2018年05月12日 15時15分07秒

都合により、しばらくブログを休止します。


[イベント]
 
「非二元の教えを生きる会」2018年6月3日(日)東京 予約受付終了しました。

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 ニサルガダッタ・マハラジ講話集「意識に先立って」((ナチュラルススピリット社発行 本体価格2500円プラス税)発売されました。

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 私がダグラス・ハーディングに尋ねた最後の質問については、機会を改めて書きたいと思います。


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動物園のセクハラ2018年05月01日 10時57分00秒

昔、知人が、「ありがとうを唱える」教えで有名な小林正観さん(何年か前に亡くなられたそうである)の本の一部をコピーして送ってくれたことがある。

私は「ありがとうを唱える」教えのほうは実践したことはないが、そのコピーの内容には啓発されるところがかなりあった。テーマは「男はとても弱い生き物なので、女性の皆さん、そのことを理解し、くれぐれも男性をいじめないでください」というほとんど嘆願とも読める内容である。
 
その内容を下記に一部引用すると、

「人間の体には、約4000ccの血液があります。男性はそのうち1000cc を失った段階で出血多量で死にます。男性はいくら偉そうにしていても、もともと生命力が弱い。女性は、4000cc のうちなんと3000ccを失ってもまだ生きています。
 
1000cc失うと死んでしまう男は、弱いということを悟られたくないがために、2000cc失っても死なない風に見せようと威張ってみせてきました。弱いものほど威張りたがるということ。(中略)
 
どれだけ男が弱い存在であるかということを、女性のみなさんにぜひわかっていただきたい。そのことを知ったら、くれぐれも弱いものいじめをやめてあげてください。女と同等かそれ以上の強さが男にあると錯覚しているから、どんなことにも男がちゃんと耐えていけると誤解するのでしょうが、男はものすごくかわいそうでいたいけな存在なのです。まともにわたりあうのはやめましょう。(中略)

ちゃんとしている女性からみると、全部正しいことを言っていればそれが男性にも伝わるはず、と思っているのではないでしょうか。理解しているのにやらないのだと思って頭にきていたのでしょうが、完全に誤解です。『理解できない』のですから。理解した上でやらないのではなく、理解する力が無いのです。(中略)

男は、理屈や理論や正論で動く動物ではないのです。男は理性的で女性は感情的だと思われていますが、まったく逆です。男は好きか嫌いかでしか動かない。女は正義や正論を信じることができて、そっちのほうが感情より優先します。正しいと思ったら、やり方を変える。正しくないと思ったら即座にやめることができる」(得する男女関係  「究極の損得勘定」小林正観著


このコピーを読んで、それまでの人生経験や生物学から学んだことからぼんやりと感じていたことを再確認し、「これからは男性にもっとやさしくしよう」(笑)と思ったものだ。特にその当時まだ生きていた父親にそれまでかなり冷たかったことを反省し、これからは父親にできるかぎりやさしくしようと心に誓った。

さらにこのコピーの他の箇所では、男性が何よりも必要としているものとして、「女性からの称賛」ということも非常に強調されている。男性は弱いゆえに、女性からの称賛、支援、つまり愛情を非常に必要としているという内容である。

そこで、「生物学的弱者としての男」という観点から、お偉い男性方の最近のセクハラ騒動や援助交際騒動を考えてみると、彼らが地位や名誉、家庭を失う危険性をかえりみず、それでも女性たちからの称賛や支援を求めざるをえない切ない習性を理解できる(その習性は生物学的用語では、「交尾のための求愛行動」と呼ばれている)。

女性記者にセクハラをしたとされる高級官僚はセクハラを否定しているそうであるが、人間的理性の働かない動物脳状態では、彼の言っていることはもっともなことである。彼はセクハラしているつもりはまったくなく、高級官僚というブランドを精一杯バタバタさせて、「どうだ、おれはこんなにすごいオスなんだぞ。交尾させろ!」と必死に女性に求愛しているのである。頭のいい知的な記者をくどくにしては、求愛の言葉にまったくセンスがないのが笑えるところだけど。

セクハラしたと女性から訴えられる多くの男性は、今述べたように彼らの動物脳の中では、セクハラという認識ではなく、むしろ自分は女性によいことをしていると勘違いしている人が非常に多い--自分は女性の魅力や能力をほめている、あるいは女性を励ましていると思い込んでいる。

ここで動物脳状態と人間脳状態の違いを述べておくことは役立つと思う。

人間脳状態とは、理性が働いている状態で、自分の言動がもたらす結果を予測し、状況に言動を合わせることができる状態である。職場の女性に言ったりやったりすれば、セクハラになる言動も、妻や恋人に対してやれば、それは愛情表現になりうる場合もある。状況に合わせて相手の立場に立って言動を使うことができたら、理性の働く人間脳まで進化したということである。

それから動物脳に特有なことは、対等や平等という観念を理解できず、目の前にいる人は、自分の言うことを聞くべき目下の者から、自分が言うことを聞くべき目上の者かのどちらかである。だから、平気で女性を自分のヒーリング・グッズのような物として扱うことができるのだ。

以上のことをまとめれば、(男性による)セクハラの悲劇とは、私の考えでは下記の理由が複雑にからまって起こるのだろうと思う。

1男性が非常に弱い生き物で、女性の愛情(支援)を非常に必要としている。

2脳が動物状態なので、自分の目の前の人を尊重して対応することができない。


3人間関係の距離や状況を読み解くコミュニケーション能力の不足。

では、セクハラの悲劇を防止するにはどうすればいいかといえば、一人ひとりが人間関係について学び、特に男と女の一般的違いについて、本や日々の経験から学び、そして特に他人の立場に立つ練習をすることだと思う--少なくとも私たちが動物園の住民ではないならば。あらゆる組織の中にゴリラやチンパンジーのような人たちがたくさんいる「サルの惑星」状態の地球上で、セクハラやパワハラから逃れるためには、人は本当に賢く(時にはずる賢く)なる必要がある。

私にとっては生物学や進化論の本が非常に役立ったので、生物学や進化論の知見を広め、男女間のコミュニケーション・ギャップをうめるためにも、普通の人向けに「動物園から神の王国へ」(PDF版販売中です)を書いたのだ。    

さて、以上のような「男は生物学的にも精神的にも弱い生き物」  という論に、「男(私)はそんなに弱くない」という反論(特に男性の皆さんからの)もあるかと思う。もし本当にそう言い切れる男性がいるなら、それは大変素晴らしいことだと思う。

強さの一つの証拠は、「自分には○○が必要」という観念がないことであり、もし男性が女性の称賛や愛情をまったく必要としないならば(=依存しないならば)、その男性は強い存在であるということである。

話は飛ぶが、ニサルガダッタ・マハラジのような賢者がなぜ「強い人」なのかといえば、「私はこの世の中の何も必要としていない」と彼が本当に言い切れるからだ。マハラジは何も必要としていないが(彼は信者や弟子、帰依者さえ必要とはしていなかった)、必要なものは自然に集まるそういう神の王国に住んでいたのだ。

彼が「私は勇気と自信を皆さんに与えている」と言うとき、それは「強い人」になるためのレシピを彼は与えているという意味でもある。それは小林正観さんが書いたような、女性たちへの嘆願を(あるいは誰への嘆願も)必要としない境地である。

最終的には非二元の教えの探求者たちが目指す(「目指す」という言葉は本当は適切ではないが)境地は、マハラジのように「強く」なることだが、その強さとは、自分の弱さや動物的欲望、肉体感覚を抑圧したり、強いふりをしたりすることによって達成できるわけではない。自分はスピリチュアルな探求をしているから、動物的欲望から解放されていると思い込むのは危険なことである。むしろ、自分の弱さや動物性をどこまでも正直に誠実に見て、それを受容していくしかないのだと思う。
 
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1部 ヒトにおけるセックスと闘争・暴力の問題について
2部 サルの壁 人の壁
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わからない・わかる2018年04月22日 16時22分02秒

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ニサルガダッタ・マハラジ「意識に先立って」 が発売されました。(ナチュラルススピリット社発行 本文352ページ 本体価格2500円プラス税 本書には目次はありません)

ナチュラルスピリットサイト
http://www.naturalspirit.co.jp

先日の「私は何か」がわからないというご質問に関連して、物事が「わかる・わからない」とはどういうことかについて、私の考えを述べてみよう。

ここでさしあたって物事を5つのカテゴリーに分類しておくことは役立つと思う。

1料理とか語学とか、実用的な知識に関する「わかる・わからない」

2その他この世界の諸々(社会、政治、経済、学問、スポーツ、芸術など)に関する「わかる・わからない」

3人生の哲学的道徳的問いに関する「わかる・わからない」

4人間のマインド・感情に関する「わかる・わからない」

5私の本質に関する「わかる・わからない」

 1に関しては 「わかる・わからない」はそれほど複雑ではない。それは単純に「知識の量」の問題である。
私は昔、中学生、高校生、予備校生に英語を教えた経験がある。生徒の質問は、たとえば、勉強法がわからない、特定の問題をどう解いたらいいかがわからない、どうしてこの英文がこういう訳になるのかわかない等々様々だった。

しかし、生徒の質問の真意を理解し、英語に関する彼らのレベルとどの段階でわからなくなったのかを私が理解しさえすれば、生徒にとりあえず質問の答えを理解させ、納得させることはそれほど難しいことではなかった。このようにテクニカルな問題についての「わかる・わからない」は、本人が勉強するか、先生のような人が正しい説明を提供すれば、たいてい「わかる」ことが可能であろう。

2のカテゴリーの「わかる・わからない」も1と似ていて、「わからない」のは「知識の量」の問題で、ある分野に興味があれば、その分野の本を読んだり、新聞を読んだり、学校へ行ったりして学べば、たいていわかるようになるはずである。このカテゴリーで、「わからない」ということは単純に知識の量が不足しているということだ。

ところが、3、4、5に関する「わかる・わからない」は、1と2ほど単純ではない。どれほど考えても、心理学、哲学、道徳の本を山ほど読んでも、たとえば、「私の生きる目的とは何か?」  とか、「なぜ人は人を殺してはいけないのか?」などの哲学的道徳的問いの答えがわかるとは限らない。

そしてこのブログを読まれている皆さんは、人間の思考・感情面、そしてさらに非二元系の教えに興味をもっている方がほとんどで、人間の思考・感情面を扱った本や、非二元系の教えの本をたくさん読んだことがあると思う。

人間の思考・感情面に関して「わかる」ためには、単に人間一般の感情や思考を知識として(本などで)知るより、自分の内面の感情と思考と外側の人生経験をリンクさせて見る習慣が必要である。

おそらく皆さんにも経験があるかもしれないが、誰かが問題やストレスを抱えてやって来て、自分の人生の問題やストレスをくどくどとあなたに話すとしよう。もしその人が自分の内面をまったく見ない人で、問題やストレスの原因は常に外側や他人にあると確固と信じているなら、人間の感情・思考状態がどれほどストレスや問題を生み出す可能性があるかを「わからせる」ことはほとんど不可能だ。どれほどあなたが善意から説明しても、その人は理解しないどころか、自分に共感しないあなたを憎み、人間関係さえ終わってしまうかもしれない。

さらに非二元系の教えが「わからない」、本を読んでも「わからない」という問題は、もっと高度なレベルの「わからない」の話となり、それは前にも書いたことがあるが、言語そのものの限界から来ている。私たちの理性は常に物事を二元的枠組みの中で解釈しようとし、言語と思考とは二元世界を理解するための道具である。だから、本を読んでも、人の話を聞いても、マインドは常に当然ながら自分が理解できる範囲でそれを解釈しようとする。

しかし、非二元系の教えの理解とは、マインドと言語を超えたいわゆる直観から来るもので、だからこそ、マハラジが自分の話を理解するためにはすでに「浄化」が終わっている必要があると強調する。ここでいう「浄化」とは、私の解釈では、肉体・感情・思考レベルでエゴ的執着からある程度解放され、マインドが静かになることを意味している。

ただし、瞑想やバジャン(神に捧げる賛歌)、その他各種ワークを通じて浄化作業をやったあとでも、必ず「わかる」保証もないわけで、だから「わからない」ときは、ただその事実を認め、いつか直観が起こるのを待つしかないのだ。

ついでに言えば、マハラジの教えの最終局面は「わからない」地点に行くことである。誰かが「私は自分が何かがわかりません」と言うと、「それが正しい」とマハラジは答える。
 
 そして、知識をたくさんもって「わかった」気になっている人たちにマハラジは、「ここにいるとあなたは自分がもっている知識をすべてを失うだろう」と警告する。

「わかりました」  と言う人にマハラジはほとんど同意しない。マハラジの講話集を読んでいると、マハラジの前で「わかりました」は禁句のようだ(笑)。

わかった気にならないように、私自身もいつも自分に警告する意味もこめて、ハーディングの実験と退行瞑想をやる。そこは理解も知識も無知も、わかった者もわからない者も存在しない、ただの「あるがまま」……

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「時間が存在しないとは?」 (3)2018年04月05日 07時56分24秒

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大変長い間、お待たせしましたが、サルガダッタ・マハラジ意識に先立って」(正式にはこのタイトルになりました) が4月下旬に発売予定となりました。(ナチュラルスピリット社発行 本文352ページ 本体価格2500円プラス税 本書には目次はありません)

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「時間が存在しないとは?」の3回目は、現代物理学が時間について現在までどういう結論に達しているかを紹介してみよう。

驚くことに、時間に関して現代物理学が到達した結論は非常に過激で、ほとんど神秘主義に近い。

私が愛読する「宇宙を織りなすもの(上)」(ブライアン・グリーン著 草思社発行第5章「時間は流れない?」の章で、著者は現代物理学の研究から時間について明らかになったことを、丁寧にあらゆる角度から(それでも素人が理解することはかなり難しいが)説明している。

本からその要点だけを引用すると、

*「合理的判断をする物理学者にとって、過去、現在、未来という区別はそれがいかに執拗なものであれ、幻影にすぎない」のである。

*私たちは空間には広がりがあると思っているが、時間も広がりをもって実在している(過去も未来も実在している)と考えなければならない。

*出来事は、どの視点から見ていつ起こったものでも、ただそこに存在しているのである。それらは永遠に時空内の決まった場所を占め続け、流れるものは何もない。あなたが1999年の大晦日に、真夜中の鐘を聞きながら、楽しいひとときを過ごしたのなら、あなたは今もそのときを過ごしている。なぜならその出来事は、変化のしようのない時空内の場所だからである。

*時空の中のどの時刻も、一本のフィルムのなかの一コマのようなものである。光線に照らし出されようが、照らし出されまいが、そのコマが存在していることには変わりはない。

*詳しく吟味してみれば、時間は流れる川というよりむしろ永遠に凍りついたまま、今ある場所に存在し続ける、大きな塊に似ている。

このように著者は、物理学の研究から引き出される時間についての現在までの結論を、断定的に述べてはいるが、一方で「時間は難しいテーマであり、私たちは今も時間を完全に理解したと言うにはほど遠い状況だ」とも認めている。

現代物理学は、「時間は過去から未来へ流れる感じがするもの」という私たち人間の常識とは正反対の結論、「時間は永遠に動かない氷の塊」という概念を提供している。

ここで著者が言っていることは、あらゆる主体(地球上の人間だけでなく、動物も、そして宇宙人も含めて)が経験した(あるいはこれから経験するだろう)出来事はフィルムのコマのように、永遠に宇宙の時空内に「すでに」実在しているということである。

つまりは、たとえばシンプル堂と呼ばれている人間主体を通じて10年前に経験されたことも、50年前に経験されたことも、これから経験されることも「すでに」そして永遠に時空内にあるということである。

さあ、こういう科学の見解をどうとらえるかは、人それぞれ自由であるが、最近の私の感覚では、経験の連続は動画のフレーム(コマ)のように1個1個毎瞬飛び出して来るような感じである。

さらに、宇宙には無限に無数にDVDがあって、無料DVDレンタルショップのような感じがするときもある(たとえば、新約聖書を読んでいるとき、イエス・キリストのDVDを見ているような感じになるときがある)

現代物理学は「過去、現在、未来」の区別は幻想だという結論にまでは到達したが、(前にも書いたことではあるけど)科学の性質上、自分たちの研究対象である時間と空間は幻想であると言うことはできない。

一元的な観点からは時間と空間、そしてその中に存在しているすべての映像は幻想ということになる--
私たちが普段楽しんで見る映画やドラマがすべて幻想(物語)であるのと同様に。
 
ニサルガダッタ・マハラジは時間に関して次のような発言(「意識に先立って」の本の中のものではないが)をしている。

あなたは時間の継続の中に留まることを選択することで、自分に不必要に不幸を生み出している。私は常に永遠の中にいる。私が永遠だ。だから私は決して不幸ではない
 
もちろんここでマハラジが言及している「私」は人間マハラジのことではなく、本質としての「私」のことである。

「時間の継続の中に留まることを選択する」とは、もっと具体的に言えば「時間世界の産物である1個の肉体マインドとしての自分と完全に一体化し、その肉体マインドにわき起こる様々な観念に中毒する」くらいの意味だ。

私たちがその肉体マインドと必要以上に一体化しなければ(名前を呼ばれたら返事をするくらいの機能的一体化は必要ではあるが)、毎瞬、映像が映画のように展開するのをDVDを観照するように眺めるだけである。


「ストーン瀬戸物様のご質問への答え」

もし私が今までこのブログで書いたこと、あるいは私の著書や翻訳書を読んでも、「私とは何か?」に関する話が理解できないなら、単純に現時点では、「ストーン瀬戸物様にとってはわからない」ということであり、その事実を受け入れるしかないと思います。


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「時間が存在しないとは?」 (2)2018年03月15日 08時34分53秒

 前回、時間に関するダグラス・ハーディングが「開発」(というにはあまりにもシンプルではあるけど)した実験を紹介した。

この実験の意味を言葉でもう少し説明すれば、非二元系の教えにおいては:

1時間とは主体(私)が認識したときに、認識したところにだけある。

2時間を認識する主体(私)には、時間が存在しない。

つまり、主体(私)が時間を認識できるという事実そのものが、主体(私)は時間世界に所属していないという意味である。
 
2のポイントは、ダグラス・ハーディングだけでなく、私が今まで愛読してきた賢者の方々の本にも表現は違うが、同じことが書かれている。

たとえば、
「今、時の経過を認識します。しかし、そう認識するために時間(時の経過)を必要とはしません。時間は存在していません」(タデウス・ゴラス著「なまけ者のさとり方」74p)

そしてもし時間を認識する主体(私) が時間世界に所属していないなら、主体(私)は人間物体ではないし、いかなる物体でもないことが明らかである。前回も書いたように人間物体は時を刻んでいる物質的な時計だからだ。

さて、ここで論理的な方はこう反論するかもしれない。

「どうして、物体が他の物体を認識できないと言えるのですか? 現在では、自動ビデオなどがあって、それらは他の物体を自動的に認識しているはずですから、物体が他の物体を認識できないとは言えないでしょう」

確かに現代、世界中の町中で無人の監視ビデオなどがあふれ、自動で町中の風景を撮り続けている。しかし、無人で「撮る」ことは「認識」することではない。そして主体(私)が「認識」しないかぎり、非二元的に言えば、それは「存在してない」――主体(私)にとっては。

そういった無人監視ビデオの中にあるとされる映像は、主体(私)がその映像を確認(認識)――その映像が「存在している」ことを確認したときに、初めて存在すると言えるのだ

この話は古くは、「人が見ていないときに、月は存在しているのか?」 という量子力学上の論争、あるいは同じく、有名な「シュレーディンガーの猫」 の話とも関係している。

 これらの量子力学の論争や概念をわかりやすく説明するのは私の能力を超えているが、非常にざっくり言ってしまえば、物事の状態は観察者が観察したとき初めて確定するという考え方だ。

量子力学 と非二元系の教えは共通していることが多く、かなり相性がいい。ただ、大きな違いは、私が思うに、物理学では観察する主体はあくまでも人間物体を想定しているのに対して、非二元系の教えでは観察する主体は人間物体でないとしているところである。当然のことながら、科学者は、観察しているのは「人間の私」であると想定し、「観察している私とは何か?」を問わない。これは外側の物質(対象)世界に関心をもつ科学と内側の主体に関心をもつ宗教(スピリチュアル)のほとんど超えられない溝かもしれないと思う。

非二元系の教えの探求者である私たちは科学の知見は参照にはするけど、まあ最終的にはどうでもいいことで、あくまでも関心は主体である「私」とは何か?に戻るわけである。

 ダグラス・ハーディングはワークショップのときに、対象と主体の信じがたいほど対照的違いを見るように参加者に質問という形でしつこいくらい促した。

*色(対象)を認識しているあなた(主体)に、色があるだろうか?

*形 (対象)を認識しているあなた (主体)に、形があるだろうか?

*感触(対象)を認識してるあなた(主体)に、感触があるだろうか?

*音(対象)を認識しているあなた(主体)に、音があるだろうか?
そして、

*時間(対象)を認識しているあなた(主体)に、時間があるだろうか?



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「時間が存在しない」とは? (1)2018年03月02日 16時43分53秒

 非二元系の教えの中でよく語られる「時間が存在しない」という観念について、たまに「時間が存在しないとはどういうことですか?」と質問されることがある。

私たちは「時間が存在しない」と言われると、「それはどういうことか?」と質問が湧き起こるわけであるが、では私たちが当たり前に取り扱っている概念「時間」について、「時間が存在するとはどういうことか?」「そもそも時間とは何か?」 と改めて自分に問いかけてみれば、ほとんどの人はよく答えられないことだろう。

歴史上、多くの偉大な哲学者、科学者が「時間とは何か?」 に真剣に取り組んできたが、科学や哲学にとっては、「時間とは何か」に対する誰もが同意する決定的答えはまだないようである。科学者による時間研究がどこまで進んでいるかはあとで紹介するとして、まずダグラス・ハーディングがいつも言うように、他人の言葉ではなく、自分自身で「時間とは何か?」「時間が存在しないとはどういうことか?」を探求してみよう。

ダグラス・ハーディングが提唱した時間に関するシンプルな実験を紹介します。

実験の手順は下記のとおりです。

1まず、実験道具として時計かタイマーをご用意ください。

2今、向こうにある時計か、動作しているタイマーをしばらく眺め、それらが時を刻んでいることを確認してください。

3私たちの日常感覚で言えば、時間とは「変化と計測」です。私たちは今「変化」(時計、ないしタイマー上の変化)を計測(確認)しました。

4では、「時間はどこにあるか?」の質問の答えは、時間とは「計測されるところに」あります。時計やタイマーやその他、ありとあらゆる「変化と計測」の要素があるところに時間はあります。医者が脈拍を測るとき、そこにも時間があり、心臓の鼓動を聞いているとき、そこにも時間はあります。私たちが観察する世界は時間であふれています。人間の肉体は最大で約100年の時を刻む「時計」だというふうに考えることもできます。

5では、反対に「時間が存在しないところはどこなのか?」 これを示す実験をやってみます。目の前にある時計(あるいは数字が動いているタイマー)を手にとって、それを自分の目(だと思われている物)のほうへ少しずつ近づけ、しだいに時計の針やタイマーのデジタル表示がぼやけることを確認してください。つまり、しだいに私たちは変化を計測できない状態になり、時計やダイマーを自分の目(だと思われている物)にピッタリとくっつけると、まったく時間が見えなくなりました(ね?)  はい、今、私たちは時間のない世界へ到着しました(笑)。

私はダグラス・ハーディングがワークショップでこの実験をやるのを何回か見たことがあり、ダグラスの言葉を具体的に再現すればこんな感じだ。

これからやる非常に簡単な実験によって、どこに時間が存在し、どこに時間が存在しないかを皆さんに示すことができます。今、パリの時間は何時でしょうか?私の腕時計では今はパリは午後4時です。皆さん自身の腕時計を見て、時間を確認してください。では、これから、皆さんと一緒にこの時間を消して、時間のない世界へ行くことにします。注意深く腕時計を眺めなら、ゆっくりとそれを自分の目のほうへ近づけてください。今、文字盤がぼやけて、時間がほとんど読めなくなりました。完全に限界までピッタリと腕時計を自分にくっつけてください。皆さんは今、時間だけでなく、時計まで消してしまいました。皆さんは今時間のない世界にいます

この実験の最後に「皆さんは今、時間のない世界にいます」とダグラスが大真面目で言うとき、ほとんど必ず参加者の一部から失笑がもれる。他の実験よりももっと滑稽で、意味不明の実験に思えるからだ。

私にしてもこの実験の意味を理解するのに長い時間がかかった。

そして、あとになって、老子の言葉「人に笑われなければ(滑稽に思われなければ)、それは本当の道ではない」とともに、この実験をいつも本気で大真面目にやったダグラス・ハーディングを懐かしく思い出す。


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