人は記憶でできている2024年03月26日 08時58分53秒

[ハム様へ]
コメントをありがとうございます。

Sam Harrisの本は一冊読んだことがあります。今手元にないので、題名は忘れましたが、その中でダグラス・ハーディングのワークを好意的に紹介し、またインドの賢者への言及も確かあったように記憶しています。スピリチュアルに関して、素晴らしい理解をもった人だと思います。今のところ、私が翻訳する予定はないですが、将来のことはわからないです。 


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親の介護は大変なことも多いが、まじかで人の老いを観察できることがとても興味深い。特に認知機能、思考・感情機能の老化というか変化を、私は関心をもって眺めている。

母は92歳くらいまでは認知機能にほとんど問題がなかったが、93歳くらいから徐々に衰えた感じだ。その頃、何があったか記録を付けているわけでもないのでだいたいの推測であるが、まず料理・洋裁をやらなくなり、近所の親しい友人が亡くなって、話相手がいなくなった頃に、一気に認知機能が衰えたようだ。

物と人の名前、そして関係を忘れ続け、現在、人名で覚えている名前はついに3個になった。自分の名前と子供たちの中の一人の名前と、そしてなぜか岸田首相(笑)。岸田首相がテレビに映ると、「岸田さん、岸田さん」と言って、喜ぶ。

母が一番執着していた「母という自己像」も完全に消えて、それと同時に、子供たちも母の記憶から消えている。今は、自分のまわりで見る人は全員、自分の世話係か自分の相手をしてくれる人で、たぶん母の今の自己イメージ(がもしあれば)は2歳くらいの子供である。

そんな母の記憶と感情の変遷を眺めていると、人は記憶でできているが、記憶がなくなっても、生きることは続くので、生の本質は人(=記憶)ではないということがわかる。そして、母の場合、思考機能が衰えるにつれて、感情のほうはどんどん自由奔放になり、昔は自分の感情をめったに表に出さない人だったのに、今は喜怒哀楽を自由に発散させている。

長い間の、よき母、よき妻であらねばならないという、人(=記憶)としての重荷から解放されて自由になり、ある意味では母は幸福なのかもしれないし、その一方で、現実が一瞬かい間見え、いつも人の世話になっている重荷を感じるとき、「もう何もできないから、自分は死んだほうがいい」とか、「死にたい」と、落ち込んでつぶやくこともある。

そんなとき私は、母に意地悪くこう声をかける。「あのね、もうすぐ夕食だけど、死ぬなら、夕食、食べないよね?」すると、母は突然元気になって、大きな声で、「夕食、食べる!」と言う。

最近、一番可笑しいことは、父(母の夫)がいつの間にか「将軍様」になったことだ。それは、たぶん、母と一緒にテレビを見ている部屋に父の大きな遺影が壁にかけてあり、そして最近ずっと、時代劇「暴れん坊将軍」を見ているせいだ。母はテレビの映像と現実の区別がつかず、父の遺影とテレビの中の将軍が一つになっている。

「今晩は、将軍様のところへ泊めてもらう」と毎日のように言い、そのたびに私は、テレビを指差し、「ほら、将軍様は、今お仕事中だから、仕事が終わったら、二人で頼みに行こう」と言うと、うれしそうに、「私、この人、大好き!」と、ほとんど目がハートマークになり、うっとりと父の遺影を眺めている。

父が生きているときに言ってあげれば、どれだけ父も喜んだかと思うのだが(昔は散々、父についての不満を子供たちは聞かされたものだ)、それでも母にとって父(夫)の記憶がいつのまにか「よい」イメージだけになったことは驚きだ。それはひょっとしたら、母の場合、脳の老化のよい面なのかもしれない。

人=記憶、非常に重要ではあるけれど、本質ではない。そのことを心に留め、日々老いる(変化する)記憶機能を自分のことも含めてユーモアをもってこれからも眺めていきたいものだ。



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