「時間が存在しないとは?」 (3)2018年04月05日 07時56分24秒

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「時間が存在しないとは?」の3回目は、現代物理学が時間について現在までどういう結論に達しているかを紹介してみよう。

驚くことに、時間に関して現代物理学が到達した結論は非常に過激で、ほとんど神秘主義に近い。

私が愛読する「宇宙を織りなすもの(上)」(ブライアン・グリーン著 草思社発行第5章「時間は流れない?」の章で、著者は現代物理学の研究から時間について明らかになったことを、丁寧にあらゆる角度から(それでも素人が理解することはかなり難しいが)説明している。

本からその要点だけを引用すると、

*「合理的判断をする物理学者にとって、過去、現在、未来という区別はそれがいかに執拗なものであれ、幻影にすぎない」のである。

*私たちは空間には広がりがあると思っているが、時間も広がりをもって実在している(過去も未来も実在している)と考えなければならない。

*出来事は、どの視点から見ていつ起こったものでも、ただそこに存在しているのである。それらは永遠に時空内の決まった場所を占め続け、流れるものは何もない。あなたが1999年の大晦日に、真夜中の鐘を聞きながら、楽しいひとときを過ごしたのなら、あなたは今もそのときを過ごしている。なぜならその出来事は、変化のしようのない時空内の場所だからである。

*時空の中のどの時刻も、一本のフィルムのなかの一コマのようなものである。光線に照らし出されようが、照らし出されまいが、そのコマが存在していることには変わりはない。

*詳しく吟味してみれば、時間は流れる川というよりむしろ永遠に凍りついたまま、今ある場所に存在し続ける、大きな塊に似ている。

このように著者は、物理学の研究から引き出される時間についての現在までの結論を、断定的に述べてはいるが、一方で「時間は難しいテーマであり、私たちは今も時間を完全に理解したと言うにはほど遠い状況だ」とも認めている。

現代物理学は、「時間は過去から未来へ流れる感じがするもの」という私たち人間の常識とは正反対の結論、「時間は永遠に動かない氷の塊」という概念を提供している。

ここで著者が言っていることは、あらゆる主体(地球上の人間だけでなく、動物も、そして宇宙人も含めて)が経験した(あるいはこれから経験するだろう)出来事はフィルムのコマのように、永遠に宇宙の時空内に「すでに」実在しているということである。

つまりは、たとえばシンプル堂と呼ばれている人間主体を通じて10年前に経験されたことも、50年前に経験されたことも、これから経験されることも「すでに」そして永遠に時空内にあるということである。

さあ、こういう科学の見解をどうとらえるかは、人それぞれ自由であるが、最近の私の感覚では、経験の連続は動画のフレーム(コマ)のように1個1個毎瞬飛び出して来るような感じである。

さらに、宇宙には無限に無数にDVDがあって、無料DVDレンタルショップのような感じがするときもある(たとえば、新約聖書を読んでいるとき、イエス・キリストのDVDを見ているような感じになるときがある)

現代物理学は「過去、現在、未来」の区別は幻想だという結論にまでは到達したが、(前にも書いたことではあるけど)科学の性質上、自分たちの研究対象である時間と空間は幻想であると言うことはできない。

一元的な観点からは時間と空間、そしてその中に存在しているすべての映像は幻想ということになる--
私たちが普段楽しんで見る映画やドラマがすべて幻想(物語)であるのと同様に。
 
ニサルガダッタ・マハラジは時間に関して次のような発言(「意識に先立って」の本の中のものではないが)をしている。

あなたは時間の継続の中に留まることを選択することで、自分に不必要に不幸を生み出している。私は常に永遠の中にいる。私が永遠だ。だから私は決して不幸ではない
 
もちろんここでマハラジが言及している「私」は人間マハラジのことではなく、本質としての「私」のことである。

「時間の継続の中に留まることを選択する」とは、もっと具体的に言えば「時間世界の産物である1個の肉体マインドとしての自分と完全に一体化し、その肉体マインドにわき起こる様々な観念に中毒する」くらいの意味だ。

私たちがその肉体マインドと必要以上に一体化しなければ(名前を呼ばれたら返事をするくらいの機能的一体化は必要ではあるが)、毎瞬、映像が映画のように展開するのをDVDを観照するように眺めるだけである。


「ストーン瀬戸物様のご質問への答え」

もし私が今までこのブログで書いたこと、あるいは私の著書や翻訳書を読んでも、「私とは何か?」に関する話が理解できないなら、単純に現時点では、「ストーン瀬戸物様にとってはわからない」ということであり、その事実を受け入れるしかないと思います。


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コメント

_ 青年 ― 2018年04月05日 19時32分17秒

高木さん翻訳お疲れ様です。ようやくニサルガダッタのジーンダンの3部作の1つ目が発売決定されたのですね。僕個人的には、高木さんは日本人版ジーンダンだと思っています笑。真理への愛ゆえ、待ちきれず、英語版も全て読んでしまいましたが、敬愛するニサルガダッタの書籍なので、じっくりと読ませていただきます。

_ ストーン瀬戸物 ― 2018年04月05日 20時46分18秒

高木 様
回答ありがとうございます。
回答にある、私にとって理解できない現実、時空のフィルムを受け入れます。
私は今まで本を読むことが好きではなかったのですが、高木様の書く文章は、私にとってはとってもわかりやすく、書く言葉選びが優しくて疲れない。そんな作家に出会ったことがなかったので、高木様が書いた書籍は、時間を見つけてはかなりしつこく読ませていただきました。作家によっては、書く文体にかなり疲れてしまうことがあったので、読書嫌いになった原因の一つかなと。
高木様の書く言葉を理解できなくて、アホな脳みそで申し訳ないです。というか、悔しい。理解不能なアホな私にかなり気を使って言葉を厳選し、回答してくれたのだと察します。ごめんなさい。
「私とは何か?」、いつかは理解できるまで、どうしたらいいのかわからないけれども、いつかは理解できる、となぜだかそう思えました。

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