サル化する脳2007年11月17日 14時30分14秒

以前、チンパンジーがどれくらいお預けを我慢できるかを実験している映像を見たことがあった。

チンパンジーの前に、バナナなどの好物がずらり並んでいる。しかし、彼は、自分の主人(人間)が戻って来て、食べてもいいと言うまで、食べないように命令されている。その様子をカメラが写している。彼は食べたそうにじっと食べ物を眺めて、ときどき、誘惑にかられて、手を出しては食べ物に触ってみるのだが、またあたりを見回しては、我慢して手をひっこめる。主人が戻って来るまで、彼はこれを何回も繰り返していた。

私はこの映像を見ながら、このチンパンジーの脳は、かなり人間化しているなあと思ったものである。彼は、主人の命令という大儀のために、本能を抑制しているからだ。

もしこれが訓練を受けていない野性状態のサル、チンパンジーであれば、目の前にごちそうがあるとき、決して本能を抑制することがない。ただ飛びついて食べるだけ。

ところが、訓練を受けて脳が人間化するとき、チンパンジーの世界に主人の命令という大儀が入ってきて、彼はその大儀のために、本能を抑制することができるようになる。

同様に、盲導犬のように高度に訓練を受けた犬も、仕事中は、食べ物などの匂いに反応しないように、しつけられている。盲導犬もまた主人の命令という大儀のために、本能を抑制することで、仕事をすることができる。

話はとんで、防衛省前事務次官の守屋さんのゴルフ接待三昧の日々―――私は、「官僚サルにお預けは、無理なんだろうなあ」と思いながら、守屋さんの脳のサル度をニュースで読んでいた。彼は、目の前においしい好物(ゴルフや高級料亭での接待や天下りのお約束)が差し出されたら、「迷わず、躊躇なく」とびつく日々だったようです。

ほとんどの人たちが知っているように、国家官僚も含む公務員には、公務員規定というもの(大儀)があり、本当は彼らにはやってはいけないことがやまほどある―――特定の業者からの接待やプレゼントを受けてはいけない、倫理に反するような知人や親戚や業者の頼みを受けてはいけない、裏金を作ってはいけない等々。

ところが、公務員にはたくさんの権限(権力)があり、その権限(権力)は出世するほど大きくなる。そして、その権限(権力)ゆえに、彼らのところには、たくさんの人たちが、好物のお土産(ゴルフや高級料亭での接待、天下りのお約束等)をたずさえてやって来る。

公務員規定という大儀を守るために、本能を抑制して好物のお土産を断れるような人は、人間の脳が機能している立派な公務員と呼べるが、おそらく立派すぎて、まわりにはあまり好かれず、出世コースからもはずされてしまうだろうと、想像できる。

公務員・官僚業界で出世するために、多くの官僚たちの脳は歳をとるにつれてサル化し、トップに上りつめる頃には完全なサル状態―――守屋さんの状態―――自分のお金と他人のお金と、公のお金(税金)の区別がまったくできない状態。

では、民間のほうが、公務員・官僚業界よりましかと思えば、最近の様々な企業の不祥事は、民間のトップも脳がサル化している人が多いことを露呈している。

最近、食品の期日擬装が発覚したある有名会社―――トップが責任をとらずに、現場のパート社員に責任を押し付けている―――サル役員は、会社の信頼回復という大儀よりも、自分が傷つきたくないという本能を最優先している。さらに自分が、パート社員よりもはるかに高給をもらっているのは、その中に責任料が入っているからだということも理解できない。

大組織は、脳がサル化しやすい(?)―――組織に入ったばかりの若い頃は、すぐれた立派な人が、何十年もたつと、立派なサル―――進化論から考えると、興味深い問題です。


お勧めの本(サル化している組織で快適に過ごすヒントが、得られるかもしれません)

「ピーターの法則」L・J・ピーター著 ダイヤモンド社
大組織では、人は出世するほど無能化(サル化)するという法則を明らかにして、
世界的ベストセラーになった本。

「愚か者ほど出世する」ピーノ・アプリーレ著 中央公論新社
「ピーターの法則」をさらに1歩すすめて、大組織に有能な人は必要なく、大組織は無能な人たちで機能することを分析した本。

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