働けど働けど……2007年11月23日 13時57分11秒

原油、とうもろこし、大豆等、生活必需品の価格が高騰している。

経済関係のニュースによれば、その理由は、現在の需要と供給という実体経済上のものではない。

普通、物の需要に対して供給が足りないとき、物の価格が上がるというのが、経済の法則である。が、今回の急騰は、ギャンブル・マネー(私は金融市場を動き回るマネーをそう呼んでいる)が商品市場に大量に入って、ギャンブル遊びをし始めたから、というのがその理由らしい。

なぜギャンブル・マネーは、商品市場に入ってきたかといえば、
ギャンブル・マネーは、アメリカ経済の減速等の理由から、その通常の遊び場である株式市場や債券市場よりも、商品市場のほうが、今、ギャンブルをやる遊び場にふさわしいと決めたようなのである。

大量のギャンブル・マネーが商品市場に入ってきたとなると、その影響(普通の人たちにとっては、ほとんどの場合、悪影響)は計り知れないほど大きくなる。

当然、原料、燃料が上がると、商品価格も上がらざるをえない。が、普通、企業は、原料の値上げの全部を価格に上乗せするのは、ためらうものだ。なぜなら、商品価格が高くなると、人々は買い控えするようになり、売れなくなるからである。

そこで、仮に原料が20%上がったら、10%だけ価格に上乗せして、残りは、「コスト削減などの企業努力」で頑張りますと、たいていはそういう話をする。

企業がいう、「コスト削減などの企業努力」というのは、ほんとんどの場合、人件費の削減(=給料の据え置き、ボーナスのカット、正社員をリストラし、派遣、アルバイトを増やす)から始める企業が多い。

となると、給料生活者たちにとっては、生活物価は上がるにもかかわらず、給与は増えず、しかも職場は忙しい、しかも中小企業には常に倒産のリスクがあるという、3重苦、4重苦の苦しみとなる。

「働けど働けど わが暮らし楽にならざり じっと手を見る」――100年ほど前、石川啄木は、自らの貧困生活を歌の中で、こう嘆いたが、それと同じような閉塞感、失望感、貧困感が先進国の社会全体に急速に広がっている。

世界にはお金(というよりマネー)が腐るほどあり余っている。それにもかかわらず、多くの国が貧困にあえぎ、先進国の多数の国民の経済環境さえ、どんどん悪化する現状――私に言わせれば、それはとても奇妙な事態である。


参考図書
*「楽しいお金3」(高木悠鼓著 マホロバアート発行)
マネーあまりなのに、なぜ世界は貧困化するのか、この奇妙な事態を解明した本。

*「ニッケルアンドダイド」(バーバラ・エーレンライク著 東洋経済新報社)
ジャーナリストの著者が、アメリカの下流社会の労働環境を調べるために、みずからその世界に飛び込んで、書いた渾身のルポルタージュ。2つも3つも仕事をかけもちしながら、最低の生活を支えている人たちの現状を、ユーモアをもって記録している。アメリカのこの現状は、日本の未来(すでにそうなりつつある)でもある。

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