ウイルスはスパイ?(笑)2020年04月30日 08時13分30秒

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2020年5月17日(日曜日)(岐阜県岐阜市)
2020年5月23日(土曜日)(東京)

コロナ・ウイルス感染拡大の影響を受けている皆様、お見舞い申し上げます。


ウイルスは、やっかいで、かつ興味深い生命体である。

生物学者や生物進化論などの専門家が書かれた記事や本を参考にして、ウイルスについて興味深い点を書いてみると:

*ウイルスとは生物と無生物の間のような生命体である。
*ウイルスはエネルギーを作れず、寄生しなければ増殖できない。
*ウイルスは非常に多くの種類があるが、人類に害を為すのはわずかである。
*ウイルスは生物の進化に不可避の一部である。

最近目にした文章で特に興味深かったのは、生物学者の福岡伸一さんの、「福岡伸一の動的平衡 ウイルスという存在」(朝日新聞4月3日版)という文章だ。

福岡さんが書いたことの一部を抜粋してみると:

「ウイルスは宿主の細胞内に感染するわけであるが、それは宿主側がきわめて積極的に、ウイルスを招き入れるとさえいえる挙動をした結果である。(中略)

高等動物が登場したあと、はじめてウイルスは現れた。遺伝子の一部が、外部に飛び出したものとして。つまり、ウイルスはもともと私たちのものだった。それが家出して、また、どこかから流れてきた家出人を宿主は優しく迎え入れたのだ。なぜそんなことをするのか。それはおそらくウイルスこそ進化を加速してくれるからだ。親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか伝わらない。しかしウイルスのような存在があれば、情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達しうる」


私がこの文書を読んで、思い浮かんだイメージは、ウイルスとは情報をあちこちに伝える「スパイ」のようなものだということだ。

それは人類の祖先が、「お前、しばらく外の世界に出て、外の世界の情勢がどんなか、どんな変化が起きているのか、これからどんなことが起きそうなのか、探って来てくれ」と言って、遺伝子の一部をスパイとして外へ送り出したようなものだ。しかし、ウイルスは自分の力では生きていくことができないので、あちこちの生物に寄生するわけであるが、中には寝返って、敵(他の生物)のスパイになって戻って来て、人類への破壊工作(笑)をするようになるものがいる、というような感じである。

現在のコロナ大惨事は、自分から出ていったスパイ(遺伝子)が自分の敵になっているとも知らずに、昔の宿主(人類)が優しく迎え入れてしまった結末という解釈も成り立つ。

この「寝返ったスパイ」というたとえは、それほど荒唐無稽なイメージではないと思う。「破壊する創造者」(フランク・ブライアン著 早川書房)の中に、なぜある生物の中では無害に共生していたウイルスが、他の生物に対しては攻撃的になるのかの事例と理由が書かれている。

その理由をかいつまんで言えば、Aの生物とBの生物が、生態的にライバル関係にあるとき、Aの中では共生していたウイルスがBに対しては致死的なウイルスに豹変するという。まるでAが、「Bは俺たちの生存には邪魔だから、殺してこい」と言って、自分の中で共生していたウイルス(スパイ)を敵(B)に送り込むような感じだ。

「破壊する創造者」の中で書かれた事例は、AとBは同じ生物の別の種(2種類のウサギやサル)であるが、もし他の野生動物が人類を自分たちの生存のライバルと見なすなら、他の野生動物とは平和に共存していたウイルスが、人類を攻撃することもおおいにありうることだろうし、今回の致死的コロナウイルス出現と人類への攻撃は、地球の野生動物連合の意志かもしれない。「もう俺たち(野生動物)が生き延びるためには、人類には死んでもらわなければならない!」というような。

最近読んだ、著名な霊長類学者ジェーン・グドール(Asahi Weekly4月26日版)のインタヴューで、彼女は、人類が自分たちの経済活動を広げた結果、野生動物たちがより狭い領域に追いやられ、つまり、今流行の言葉で言えば、「密」の状態に追いやられた結果、種から種へ、そして家畜へウイルスが蔓延するようになったという主旨の発言をしている。そして、さらにその背後に、「自然を破壊しなければ生活できない、貧しい国の貧しい人たちの問題がある」とも指摘している。

人類というか人間は、当然自分の観点からしか自然や地球全体を見ることができない。しかし、人類は地球の唯一の生物ではないし、単なる自然の一部にすぎない。他の動植物やウイルスの観点、あるいは地球全体の観点もあるはずだ。人類は快適に生き延びたいと思っている。そしてその他すべての生物だって、生き延びたいと思っているにちがいない。それぞれの種が生き延びることができるかどうかは、それぞれの種がコントロールできることではなく、究極的にはすべての生物が寄生している地球全体の意志によるのだろうと私は思う(すべての生物は地球に寄生している)。

今回のコロナ大騒動では、あらゆる立場の人がそれぞれの立場で発言したり、提言したり、文章を書いている。政治家の発言には、「ウイルスを撲滅」「ウイルスとの戦い」「ウイルスに打ち勝つ」というような勇ましい言葉が並び、彼らは立場上、そういう表現を使わざるをえない。しかし、生物学者、生物進化論の専門家は「ウイルスとの共生」という言葉を使う。地球と生物の長い歴史を研究してきた彼らは、人類は決してウイルスとの戦いに勝てないこと、そしてウイルスは人類の進化にも寄与してきたことを知っているからだ。

福岡さんの文章は下記のまとめで終わっている。

「ときには、ウイルスが病気や死をもたらすことですら利他的な行為といえるかもしれない。病気は免疫システムの動的平衡を揺らし、新しい平衡状態を求めることである。(中略)

かくしてウイルスは私たち生命の不可避な一部であるがゆえに、それを根絶したり撲滅したりすることはできない。私たちはこれまでも、これからもウイルスを受け入れ、共に動的平衡を生きていくしかない」

進化論的に言えば、「ピンチのあとにチャンスあり」ということで、ウイルスの攻撃に耐えて生き残った種は、そのあと繁栄するというシナリオがだいたいはあるようである。だから、人類という種も、それぞれの国家も個人も、今回のピンチをチャンスに変えることができれば、より進化した形態を創造できる可能性もあるということだ。

しかし、コロナ惨事で精神的にも肉体的にも財政的にも疲弊したあとで、「やらないほうがいい大運動会(オリンピック)」をあくまでも強行しようという日本国に、そんな変革のエネルギーが出てくるのかどうか……


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コメント

_ ストーン瀬戸際 ― 2020年05月06日 17時50分46秒

他の方の文章もたまに読むけれど、
結局は高木さんの視点と文章を読みに戻る。
翻訳ではなく、高木さん視点を文字で読みたい。

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