心の中のカルト(2)2021年03月24日 09時20分09秒

この間、読んでいた外国のミステリーに、カルト的宗教教団が登場する話があった。その小説の中で、その教団のリーダーが教団への寄付を募るときに、信者に向かって叫ぶ場面がある。

いまこそ信仰を示す時です。みんな、奇跡を買いたいですか?
「アーメン」
「ならば、その財布を空にしなさい明日を思いわずらってはいけない
互いに助け合うとき、われわれは流れに加わり、その流れはまっすぐにわれわれのもとへ還ってくる。これこそ聖なる循環。それを止めてはならない。信じるならば、流れが還ってくるのを妨げてはならない。信仰を証明するのです。信仰以外に何も持たずに、夜の闇に出て行くことです。アーメンと唱えなさい」(キャロル・オコンネル著『天使の帰郷』創元文庫より)

こういうカルト的宗教教団の集会では、「お金で奇跡が買えたり、信仰を証明できたりするわけがない」という常識や理性が働かないように、集団催眠にみんながかかっている。ところどころ聖書の引用を入れて自分の言葉に権威をもたせ、集金作業を加速させようとするあざといリーダーの話術によって、信者たちは持っているお金を全部吸い上げられてしまう。真理と大嘘を混ぜるとき、完全なる嘘よりもたいていひどい結末になる――暴力、抑圧、犯罪、貧困。(上記の赤でマークした部分は、カルト的宗教に特有の言葉、青のマークの部分は、聖書やジョエル・ゴールドスミスの中にも出て来るような言葉)。

ジョエル・ゴールドスミスの the art of spiritual healing(今のところ、5月下旬発行予定) の本の中にも、お金を循環させる話、寄付・寄進の話があり、言葉だけ読むと、小説の中のカルトのグルと似た話になる。しかしもちろん、ジョエル・ゴールドスミスは「信仰を証明する」話を語っているわけではないので、まったく異なる本質の話なのだが、注意深く読まないと誤解を招く。

実際、the art  of spiritual healingの本の作業をしていて、ジョエル・ゴールドスミスの教えのようなヒーリングや奇跡を語る教えは、注意しないとカルトができやすい(笑)と思ったものだ。

カルト教団が出来上がるとき、たいてい次の三つの要素がある。

1カリスマ的話術や人格のグルやリーダーの存在
2そのグルやリーダーが奇跡やヒーリングの能力をもっている(あるいは、その能力が偽物の場合は、手品の能力)
3グルやリーダーの強大なエゴ的野心

ジョエル・ゴールドスミスは上記の1と2をもっていたと思われるが、ただ、幸いというか、彼には3の要素がまったくなく、彼は自己をかぎりなく神に明け渡して、人々への奉仕の日々を生きていた。また彼はエゴの誘惑というか罠についてもよく知り、それを自分自身にも生徒たちにも非常に注意していた。

スピリチュアル系ではないが、最近の著名人でカルト的リーダーの雰囲気が一番あった人がトランプ前アメリカ大統領だ。彼はカルスマ的話術で、多くの人々を魅了し、「私の言うことを信じれば、あなたたちの生活はよくなる」という幻想(言葉の手品)を信じさせ、最後には、国会占拠という暴力を引導した。大統領を引退後も、彼自身は相変わらず優雅な金持ち生活を送っているらしいが、彼の言葉を信じた人たちは少しでも生活がよくなったのだろうか? たぶん、ほとんどの人たちはそうではないだろう。

そして、宗教カルトを作るもっとも強力な要素は、スピリチュアル志向の人たちのマインドの中にある下記のようなものである。

1超越的なものへのあこがれ
2外側のグルやリーダーのアイドル化
3感情的な熱狂による孤独のなぐさめ

1の超越的なものへのあこがれは、人生には普通の人間には知られていない何かもっと壮大なものがあるに違いないとか、ちっぽけな人間で終わりたくないというような感情・思考のことで、多くの場合、それが私たちをスピリチュアルや宗教の道に押し入れるはずである。そういった感情・思考はある意味では正しい――すべての宗教やスピリチュアルな道は、「私たちの本質はちっぽけな人間ではない」という超越を教えている。

2のアイドル化については前にも何度か触れたが、外側の誰かや何かを台座に乗せて、自分とはまったく違う存在として拝んだり、崇拝したりすることである。先ほども書いたように、政治的な人たちは、政治的リーダーをアイドル化し、それ以外の多くのスピリチュアルにも政治にも関心がない人たちは、タレントとか歌手とかスポーツ選手などを、台座に乗せてアイドル化する。

3スピリチュアル系の人たちが集団で感情的に熱狂したら、それはかなりあやしく、あぶない(笑)。少なくとも非二元系の教えでは、熱狂はありえず、人が集まって何をするかと言えば、ただ静かに今ここにある平和を楽しむだけだ。

そして、いつの世にも、スピリチュアル志向の人たちのその超越へのあこがれを利用して、自分のエゴ的欲望(金銭欲、支配欲、出世欲など)を満たそうとする野心的な人たちが現れて、人々をカルトの迷宮に連れ込み、カルト的宗教ができあがるというわけである。だから、私たち一人ひとりがスピリチュアルに関わるときは、超越へのあこがれをスピリチュアル的に「搾取」されないように、またそれを伝えている立場の人は、他人をスピリチュアル的に「搾取」しないように、そしてアイドル化と集団熱狂という罠に墜ちないように、常識と理性の回路もしっかりと開けておくことを強くお勧めする。

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コメント

_ ルル ― 2021年04月02日 21時13分45秒

最近知ったのですが、地球平面説を唱える人たちがいて、日本でも「フラットアース」という本が売られていて驚きました。
根底にはキリスト教原理主義があるようです。
こういうのもカルトになるのだろうか?
世の中にはいろんな陰謀論があるけど、それらを信じる人たちは特にリーダーがいなくても、その主義主張を信じることでネット上で団結してしまう。
インターネット、SNSの普及した現代では、異常な考えと常識的な考えとが対等に肩を並べる時代になってしまいました。
そこにちょっとした煽動をすれば、議会襲撃みたいな過激な行動もありうると思います。

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