お金は、貯めるよりも、使う時代 ― 2008年10月25日 09時18分48秒
ほんの数年前、現在は苦境に陥っているアメリカの金融関係の企業が、自国の低所得者向けサブプライム・ローン(住宅ローン)で儲けまくっていた絶頂にあった頃、そういった金融企業で働いている人たちのボーナスの額が、少ない人でも数千万円、という記事を読んだことがある。そのとき私は、それが、なにか「異常に膨らんだ金額」だと感じたものだ。
(限界まで膨らんだ風船がはじけるように)経済バブルは必ず崩壊するもの、そして、金融ギャンブルは、必ず、儲ける側と損する側に分かれ、儲けた分だけ、損するリスクがある、というのは、金融ギャンブルのルールである。
そして、金融マネー(ギャンブル・マネー)とは、実体がないという意味で、ある種の憑依霊のようなもので、生き延びていくために、必ず、実体経済の富(エネルギー)を奪っていくという運命をもっている。今回の金融危機で、世界の実体経済は膨大な富を失い、貧乏国は、ますます貧しくなり、先進国では格差がさらに拡大してしまったのである。
さて、こういうご時勢になると、日本のような国では、多くの人は生活防衛に走り、消費を押さえ、将来の不安・心配のために貯蓄しようと思う人が増える。あるいは、どうしたら、もっとお金がたくさん儲かるかばかりを考えるようになる。つまり、世の中全体のエネルギーが、どんどん内向きに収縮する状態に陥っていく。
しかし、あえていうと、こういう時代だからこそ、時流とは反対に動くほうが、楽しい。
つまり、余分なお金があれば、いつもより積極的に使ってみる。長年欲しかった物があれば、買ってみる。行きたかった場所があれば、旅にでる。出たかったセミナーがあれば、参加してみる。演劇やコンサートに行ってみる。楽器やスポーツを習ってみる。学校に行って、新しいことを学んでみる。家のリフォームをしてみる。お金を必要としている団体にドネーション(寄付)をしてみる等々、探せば、楽しいことにお金を使う機会は無限にあるものだ。
もし現在お金に余裕がなければ、タダか、あまりお金のかからない楽しい活動をやって、せめて気持ちだけは楽しく拡張しておくことは、おそらく、自分の将来の経済状況によい影響を与えると思う。
個人であれ、会社であれ、お金を使うことは、稼ぐことより、もっと多くの知恵と練習がいる。この世的社会常識は、「お金を使うことは簡単だが、お金を稼ぐのは大変だ」と教えているが、しかし、事実は、むしろ反対で、お金を稼ぐよりも、お金を使うことのほうがもっと難しいと、私はあるとき気がついた。
そして、お金に関する知恵は、お金を使うことに関する失敗と成功の経験を通じて、身につくものなので、だから私は、この日本の収縮倹約ムードの中で、楽しくお金を使うことをあえて推奨するわけである。
ホームレスの生活から這い上がり、年商100億円企業を作り上げたある企業家の方も、次のように書いている。
「世の中には、一見成功したかに見えて、お金で失敗する人が本当に多いのも、お金は『儲ける』よりも『使う』ほうがずっと難しいことの証拠だと思います。
成功者は、お金の『儲け方』を知っているだけでなく、その儲けたお金の『使い方』を知っている人です。『こうやれば億万長者になれます』とか『この方法で、資産十倍に』とか『お金持ちになる方法』など、書店に行けばその手の本がありあまるほどたくさん並び、いかにして儲けるかということについていろいろな言葉が躍っています。
しかし、これらは『お金を儲けるため』の本であって、『お金をいかに使うか』というものではありません。成功の秘訣は『お金の使い方』を知ることにあるのだということに、私はどん底に落ちて初めて知ることになりました」(「どん底からの成功法則」ページ76-77 堀之内九一郎著 サンマーク出版発行)
借金への圧力 ― 2008年02月03日 15時04分33秒
経済問題というのは、何か複雑で一般の人にはわかりにくい感じがするが、実は、よーく考えてみると、本質は、案外シンプルだったりする。
現在の経済問題の多くは、誰かの金融資産=誰かの借金という構図がわかれば、理解はそれほど難しくはない。別の言葉で言い換えるなら、誰かの金融資産分、誰かが「借金をしなければならない」ということである。
当然、金融資産がある側は、利息を要求し、借金した側は利息を払わねばならない。
世界の金融資産(特に日本と中国の金融資産)=アメリカの借金
日本国民の金融資産=日本国家と地方自治体の借金
金持ちの金融資産=貧乏人の借金
金融資産というのは、誰のものであっても、いい子にして金融機関で眠っているわけではなく、世界中のあらゆるところへ出かけていき、借金してくれる人を探している。誰か借金してくれる人が出ないかぎり、金融資産は利息を稼ぐことができない。つまり、全世界の金融資産分だけ、「借金してくれ(!)=利息をくれ(!)」という膨大な借金圧力が世界中に吹き荒れているのである。
私やあなたが個人的には利息に無関心であっても、自分のお金を金融機関に預けたら最後、そのお金は、借金してくれる人を求めて、言い換えれば、利息を求めて、世界中を旅することになっている。
で、冒頭に書いたアメリカの「サブプライムローン」(信用度の低い借り手向け住宅ローン)問題というのは、
世界の金融資産が、借金させるターゲットにアメリカの低所得者を選んで、高金利の利子で儲けまくった後の問題ということである。
儲かるので、もっともっとと欲を追いすぎたら、アメリカの住宅バブルが崩壊し、ローンを借りた人たちが返済不可能になって、借金が焦げ付いたという話なのである。
もちろん借金には、健全な借金というものもある――普通の金利の住宅ローン、企業が投資のために借りるお金等々――健全かどうかの見極めは、自分(会社)の能力の範囲内の借金ということだが、その能力の見極めは、簡単ではないし、借金圧力が吹き荒れている現代では、簡単に自分の能力以上を借金することができる。そして借金への圧力に負け、能力以上のお金を借りてしまうと、借金地獄→→借金貧乏への道が始まる。
このように、借金には一般に悪いイメージがあるが、でも、逆の見方をすれば、貧乏になるほど借金する人たちのおかげで、資産家の人たちは、潤っている面もあるわけで、本当は、「金持ち父さん」たちは、サブプライムローンで泣いている「貧乏父さん」たちに心から感謝すべきなのである――「たくさん借金してくれて、ありがとう。あなたたちのおかげで、私は資産を増やすことができました」って。
さて、日本では、1990年代以後、たいした経済成長している実感がないまま、なぜか、個人の金融資産は増え続けている。つまり、その反対側で、国家や地方自治体の借金も含めて、借金が増え続けているというわけでもある。GDP(国内総生産)の3倍もの資産と借金、それがどういう意味なのか、考えてみるのは、なかなか興味深いことである。
お勧めの本
「日本を滅ぼす経済学の錯覚」堂免信義著 光文社
投資、貯金、借金の関係を新たな観点で説明し、その視点から、今の日本の経済の状況を読み解いた本。
「マネーを生み出す怪物」G.エドワード・グリフィン著 草思社
アメリカの連邦準備制度が、いかに無からマネーを生み出し、世界経済を支配するようになったのかを、歴史的に検証し、明らかにした本。
タダ経済のゆくえ ― 2007年09月27日 11時55分47秒
今回、ブログを開設するにあたり、色々なブログを見てまわった。長い間、ブログと普通のホームページの違いもよくわからず、ニュースを読むときと、必要な情報を探すとき以外、私はインターネットそのものをそれほど利用しているわけでもない。
今回、まあ、色々なブログやサイトをランダムに見てまわって、書いている人たちのその圧倒的情熱に驚かされた。みんな、ありとあらゆることを書いている。自分の経験、知識、うんちく、日々の雑感、そして悪口等々。
そして、書いている人のほとんどが、それでお金を儲けていないはずで、つまり、タダで書いている。では一体何のためかといえば、それは娯楽、自分を楽しませるためである。言葉を書いて、自分を楽しませる。
そして、できれば、自分が書いたことを人にも楽しんでもらいたい。人にも認めてもらいたい、のだ。たぶん。
かつては、作家や評論家、新聞記者などのプロの物書きにしか許されていなかったこの贅沢が、今では、誰でも享受できる時代になったのだ。
情報に関していうと、世界中のインターネットに流れている情報や文章は、マスメディア(テレビ、出版等)が出してくるものより、質がよく、パワーフルなものがたくさんある。実際、プロの物書きが書くよりも、質がよいものが、タダでたくさんころがっている。もちろん同時に最悪のものもたくさんあるけれど。
ただし、何をもって質がよく、質が悪いというかは、読む人の判断による。私にとって「最悪」が、別の人にとっては「最良」の場合もある。そこは本や音楽と同じ。
今回、そのタダ活動への人々の情熱を観察して、利益を目的としない自由で気楽で、ある種無責任な活動こそ、人が本当は一番楽しめるのかもしれないと感じた。
そして、人々のタダ活動への情熱とエネルギーを上手に利用する会社(検索&広告で儲けている会社)が、今の時代では最大の利益をあげていることが、現在の経済の奇妙な矛盾だ。出版界でさえ、今は自分で企画を考えるよりも、ネット上で人気のブログや小説を編集して、売れる本を作っている会社がたくさんある。おそるべし、タダ経済!
最近、そんな、これからの地球の富のゆくえについて、多くの情報を盛り込んで解説している本、「富の未来(上/下)」(講談社発行)(未来学者アルビン・トフラーとその妻による共著)を読んだ。うまく編集されているので、読みやすい(でもうまく編集されている分だけ、パンチ不足かな。)お暇な方はどうぞ。
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